第五章 修行
ゴールデンウィークになった。オカ研のメンバーは部費を使い、住んでいた県の二つ隣の県にある、海に面した、旅館に泊まった。3泊4日の強化合宿である。なぜここの県にしたかというと、ここは魔物が多く潜んでおり、しかも地区担当の魔法使いがよく、サボっているという情報を緑葉が入手したから。ここにしたのであった。
午前11時
「やっとついたな」
俺達は旅館の前に立っていた。
「ここからの行動だが。念のため、昼間に動くことはやめよう、夜に動いて、あくまで此処に住みついている魔物が動いたと、見せかけるのだ、なので昼間はとくにすることはない、久しぶりにのんびりするのもありだ、だが夜には本格的に行動するから昼間は睡眠をしっかり取っておくことをおすすめする、特に遥、砂浜だからと言って、大きなお城を作ったりするなよ」
「そんな子供みたいなことしないよー ねえ、しおりん」
「え、ええ、そうね、子供っぽいよね……」
少し悲しそうな栞であった。
「ちなみに、目標は合宿3日目の夜にある、ここから、北にちょっと言ったところにあるお祭りで一人残らず人間を吸い尽くす。そういえば、魔法使いもこういうことはできるのか?」
「もちろんできますよ、ただ禁忌に当たる行為だからやったことないんですが……相馬さんについていくためなら何でもやりますよ!」
緑葉は戸惑っていた。
「確かに無関係な人の夢や希望を奪うのは気が引けるがこれも世界征服のためだ、やるぞ」
「わかりました、相馬さん」
俺は緑葉に少し嘘を吐いていた。
魂を集めるのは妹を助けたい、その理由もあったのだ。
「怖気づいたなら帰っていいんですよ」
栞は適当な感じで言った
「黙れ、愚民、どのような術式を使えばいいのか悩んでいるだけだ、貴様こそ、祭りのときに失敗して泣かないようにするんだな」
栞と緑葉の間に火花が散っていた。それを遥がなんとか宥めた。
「はいはい、二人とも喧嘩しない、それなら、祭りの日にどれだけ魂を集めれるか勝負すればいいんじゃない?」
「いいですね、もちろん緑葉君もやりますよね?」
「もちろんですわ、魔族になりたてのペーペーに僕が負けるわけない!」
ふん! と声をだし、お互い顔を背けた。緑葉が相馬に向かってこっそり話しかけてきた。
「相馬さん、僕、魂をうまく吸い取れるかな……」
小声で聞いてくる緑葉の、返答に悩んでいる相馬の代わりにゾフィーが答えた。
【目的に近づいて、中にある、丸い塊を取り去る感じにすれば出来るのじゃ】
「なるほど、じゃあ魔力吸収の呪文を応用みたいな感じですね、それなら……」
緑葉は、なにかぶつぶつ声に出し、考えをまとめて始めた。
「荷物も部屋に置いてきたし、夜6時にここに集合で、それでは解散!」
各々、いろんな方向に散って行った。さて……俺は部屋で休むかな。
【相馬は町を見に行かんのか?】
【俺はこの一か月いろいろありすぎて疲れたから寝る】
【いろいろ、この世界を見て回りたかったのう】
【……しょうがないな、明日は見て回るか】
【うむ! さすがわらわが見込んだ男じゃ】
満足したのか、相馬を褒めたゾフィー はひっこんでいった。
部屋に着いた俺は、布団を引いて、さっそく寝た。眠りはすぐに訪れた。よほど疲れていたのか、鍵を閉め忘れていた。
しばらくすると、こそりとドアが開き、美鈴さんがはいってきた。
「うん、相馬君、熟睡してる。よし、お姉さんが添い寝をしてあげましょう」
そういうと、布団の中に潜り込んでいった。
しばらくすると今度は、栞が部屋に入り込んできた。
そう、栞も相馬と添い寝しようと考えていたのだ。
「起こさないようにそろりと、あれ?」
ひらりとめくってみると、そこにはぐっすりと寝た相馬と美鈴先輩が居た。
「ぐっすり眠って居ますね、これは、もう片方に寝るしか」
相馬を起こすと絶対に怒られるので、美鈴先輩とは逆側にすっとはいった
最後に、遥が入ってきた。
「そうま、あそぼ、ってありゃりゃ、寝てる」
遥はすこし残念そうだった。
「そうだ、久しぶりに布団で一緒に寝よう!」
楽しそうに、相馬に近づいて行った。そして隣に入ろうと、布団をめくったら、もう、二人も居たことに驚いた。
「あれ? 二人居るね……しかし、みんなぐっすり寝てるね……起こすのも悪いし、どうしよう、足元が空いてるね」
遥はすっと、入り、気持ち良さそうに寝たのであった。
夕方の5時、相馬はふと目が覚めた。そしたら身動きが取れなかった。
【くっ……金縛りか? いや、もう気付かれて魔法をかけられたのか?】
【周りをよく見てみるのじゃ、相馬】
その言葉を聞いてすぐに気がついた。腕に美鈴先輩と栞、足に遥がしがみついていた。これでは、動けないのも当然であった。
「お前ら起き……」
相馬は途中で言いかけてやめた、それはみんな幸せそうな寝顔をしてたからであった。
【ま、こういう時間も悪くないかな】
相馬はそう思い、6時前まで寝たふりをしていた。
そしたら、目が覚めたのか、まず美鈴先輩から、遥、栞、の順番で部屋を出て行った。
「よし、俺も集合場所に行くかな」
やれやれといった調子で、相馬は部屋を出て行ったのであった。
丁度6時、日が半分沈みかけていた。
「遅いよ、そうま」
「悪い、悪い、じゃあ始めるとするか、今日は俺と栞は魔法の基礎知識を学びたい、俺じゃ話にならないからゾフィー にかわる」
相馬とゾフィーが入れ替わり雰囲気が変わる
「うむ、まず魔法にはたくさんの種類があり、基本的な、例えば、魔力の塊を飛ばすなどのは、誰でも練習したら出来る。問題は炎や水のいわゆる属性魔法じゃ、これには人それぞれ適正があるのじゃ、例えば緑葉が大地の魔法を得意としているようにな」
「そうだな、僕はそういう魔法が得意だ」
「その適正を謀る方法じゃが、生憎、わらわは今その道具を調達する手段がない、そもそもこの世界にある物質かもわからん」
「それなら大丈夫だ。僕が持っている」
そういうと、懐から前に栞と戦った時とは別の真っ白い本を出した。
「これに向けて自分の魔力の塊をぶつけてください」
「なるほど、じゃあ私から行きますね」
緑葉は砂浜に本を置いた。栞は魔力の塊を作り、魔弾として、その本にぶつけた。
するとその本はびしょびしょにぬれてしまった。
「この反応は水の呪文が向いてるということだね」
「水ですか、いろいろ応用が利きそうでおもしろそうです」
「そうだな、愚民にしてはなかなかいい線を言ってる。水の魔法は応用がものすごく広い」
珍しく、緑葉は栞を褒めた。
「ささ、次は相馬さん、どうぞ!」
正直魔法なんて初めて使うから、魔弾なんてわからかった。そのときゾフィー がささやいてきた。
【自分の体の中心から掌にエネルギーを集めてそれを解き放つ感じじゃ】
【ありがとう、やってみるよ】
そういうと、相馬は手を前にだし集中すると、黒に赤いギザギザの入った球体が集まりやがて本に向かって解き放たれた。すると、今度は本がぼろぼろとくずれた。
「これは……とても珍しい、闇属性だね、これも1〇〇〇〇人に1人くらいだわ、さすが相馬さん」
「具体的にどんな魔法ができるんだ」
すいません。僕も詳しくは知らないのですよ、幻術とかがこれに入ってたはずです。これは私よりゾフィーさん のほうが詳しいじゃないかな」
【うむ、わらわも闇属性じゃ、この属性は奥が深いから覚悟しとくのじゃ】
はいはい、で、その属性をどう生かすんだ?」
「それはですね、その属性にあった。攻撃を想像するのよ、例えば、私の場合は木から蔓が延びてくるイメージを持って、それを相手にまきつける感じですね」
「ふむ、そういう風に練習すればいいのか……」
俺と栞の適性検査が終わり、修行に入ろうとしたとき
「緑葉ちゃん、質問があります」
栞が堂々と手を挙げた。
「前、緑葉ちゃんが持ってた。本は何の意味があるんですか?」
「今日はいい点を突くのだな、あれはグリモワールと言って、偉人達が作った強力な呪文がインプットされたものだ。あれを使って呪文を詠唱すれば、強力な呪文が引き出せるんだ」
緑葉が説明をする。
「そうだったんですか……道理であんな強い力を使えたわけですね」
「グリモワールは持ってたほうが便利で有利だ」
「ほかにも、自分で作った、強い呪文を書き留めて作るメモリアというのもある、要するに、グリモワールの簡易版、あと、グリモワールなどで覚えた呪文や魔法陣などは覚えておくと、グリモワールを持ってなくても使える、その分、威力がさがるけどね」
「へえ……そんなのもあるんですね」
「とりあえず、今日のところは、基礎の魔法をマスターするべきだな! 貴様には僕の使い魔ジュエを付ける」
そういうと、緑葉の肩にいた翼の生えた猫が地上に降り、ポンと軽い音がしたと思ったら、18歳くらいの猫耳で黒いワンピースの女性が現れた。
「はじめまして、マスター緑葉の使い魔ジョエといいます。よろしくおねがいします」
うやうやしく栞に挨拶した。
「さて、相馬さんはゾフィーさんから聞けばいいから大丈夫ですよね」
「せっかく検査したのに、今日は基礎なのか?」
「魔法障壁がないと、あとで痛い目を見るんですよ」
「なるほど、わかったありがとう!」
緑葉にお礼を言いみんなに練習はじめの合図を出した。遥は山の方へ、栞は少し離れた海岸へ、美鈴さんと緑葉は旅館へ向かって行った。
「まず、魔法障壁じゃが、魔法の基礎中の基礎じゃ、これが硬くないと、魔法での戦いでは、絶対勝てぬ」
「でも、今、俺らはあまり魔力ないだろ、どうするんだ?」
相馬が当然の疑問を投げかけた。
「大丈夫じゃ、薄いのでいいから、長時間貼り続ける練習をするのじゃ、慣れたら、少しづつ密度を濃くすればおkじゃ」
「なるほど、やってるか」
相馬が魔法障壁を張ってみた。そうすると、ゾフィーがすぐさま指摘した。
「相馬、魔法陣の箇所によって、魔力の集まり具合が違うのじゃ、全ての場所に同じくらいの濃さのものを張るのじゃ」
「おう!」
そのとき、遠くの浜辺で栞の練習の声が聞こえた。
「いいですか? 敵が見えたと思ったら魔法障壁を張る練習です。私が旗を操るのでそれが地面から出てきたと思ったら障壁を張ってください」
「わかりました」
あっちもこっちと同じような感じで進んでて、順調そうだった。
そして、一通りの基礎の魔法の練習が終わった、時刻は午前5時を指していた。栞も俺も、緑葉が力を抑えた魔弾程度なら余裕で弾き返せるようになっていた。
「二人とも、本当に恐ろしいくらい魔法の才能があるね……僕の魔弾が跳ね返せるなんて、僕なんて教官の弾くのに一年かかったというのに……そうだね、今日で基礎の魔法は終わりにする。でも、これからも毎日継続して練習すること、基礎は大切だからね、明日は適正魔法の練習でいいかな、適正魔法は個人の発想により、力の発現が変わってくるから、明日からは各自、好きな場所で適正魔法の練習をしてもらおうかな」
「「了解!」」
そんなことを言っていると、山から遥が、旅館からよくわからない機会を持った美鈴さんが現れた。
「さて、今日は終わりにしよう……と言っても、もう朝だが、みんなお疲れ様、早朝風呂があるからそこで汗を流そう」
「賛成、あー疲れた」
「疲れましたね」
遥と栞はやりきった人の声を出す
「ふふふ、久々に新たな武器を発明して疲れたわね」
「僕だって、魂を吸い取る術式の構成にすごいかかったんだからな」
「マスター! 私もこの3日間は練習の後、休憩してもよろしいでしょうか?」
美鈴先輩、緑葉、ジュエ、も仲良くやっているようだ
結構みんな疲れてる。かく言う俺も疲れているのだが、風呂に入って、さっさと寝よう、一人で寝たいし、昨日みたいな鍵の閉め忘れはなしにしよう。
そして、みんなで旅館に戻って行った。
相馬はいったん部屋に戻って着替えを取りに行って、すぐ風呂に向かった。そのとき片方封鎖されていたことや、よく立札をみてなかったのは言うまでもない。
ポチャン、と水が垂れる音がした。
「ふぅ、休まるなぁ おっ、壁に効能が書いてある。肩こり、腰痛、リウマチ、へー温泉だったんだな、ここ」
【確かに心地よいのう、温泉というのかの? 魔王城ができた暁には作りたい部屋じゃ】
【早く、この世界を支配したいな】
【うむ、そうじゃな】
そんな事を話していたら、脱衣場から人の声が聞こえた。誰だろう? こんな朝早くだから、ここに泊っている、散歩帰りのおじいちゃんかな?
がらり、と音が、なり入ってきた人に俺は吹き出してしまった。なんとさっきの5人が入ってきたのだった。
「おい、お前ら! ここ男湯だぞ、緑葉以外は帰れ!」
「あれ?そうま立札見ていなかったの? ここの温泉、朝の5時から11時までは掃除があるから混浴だよ」
遥から衝撃の言葉が発せられた。コンヨク? えーと、男と女が一緒に風呂に入れるあれか、そうと知っていれば、みんなが入ってから入ればよかった。面倒くさいことになりそう予感がした。
「ほらほら、そうまー 私、胸大きいでしょう?」
タオルで隠されているが、リンゴくらいのふくらみだった。
「む、胸なんて飾りですよ、マスター、この足の曲線美を見てください」
ジュエは奇麗な脚を見せつけていた。別に俺は脚フェチでもねぇよ。
「あらあら、私はどこもほこるところがないですね、残念です」
先輩、その体型は需要がある人には需要がありますよ。
栞はなぜか変身した。強気になるためだろうか?
「どうです、相馬、遥ちゃんより大きいです。私の勝ちです」
確かに、大きさが全然違っていた。
「変身するなんて、ずるいよ!」
「胸の大きさは関係ないです」
俺はだんだん疲れてきた。早々に立ち去ろうとした。だが、そう簡単にはいかなかった。
「相馬、誰が一番か決めるです」
「それもそうだねー ねぇそうま、だれ?」
「マスターのマスターは私のマスターも同然、さあ、決めてください」
「私かもしれませんよ」
4人が迫り寄ってきた。俺はとっさに、
「世界征服がうまくいったら、その時に一番を決める! 以上だ!」
そういうと、急いで脱衣場に逃げて行った。
「むう、逃げられたです」
「まあー 相馬にも考える時間がいるんじゃないかなー」
「そうですか」
「世界征服してる間に、私の体も成長するかも知れませんね……ふふふ」
4人はそれぞれのことを言いながら、湯船に浸かって行った。
「貴様ら僕のことは無視か……」
あとで、ジュエだけが怒られたのは言うまでもない。
そして、部屋に戻った相馬はいらいらしていた。
「まったく、風呂ぐらいゆっくり入らせろよ、ったく、なんで混浴なんだよ」
【相馬が立札を見てないからわるいのじゃ】
「……ゾフィー まさか知ってたのか?」
【混浴が何か知らなかったから教えようがなかったのじゃ、まあ、若いおなごの肌が見れて良かったのう、なんならわらわが前みたいに人形に乗り移って肌をみせちゃろうか?】
ゾフィーまでからかってくる始末であった。それを俺は無視した。
そうして、合宿一日目が終了したのであった。
合宿二日、その日の夕方にゾフィー と街を回る約束をしていたので。午後4時に目を覚ました。
【さあ、町へ行くのじゃ相馬よ】
【はいはい、行きましょうかね】
相馬は旅館を出て商店街のあるほうへ赴いた。
ゾフィー はとてもはしゃいでいた。
【あの人だかりはなんじゃ相馬?】
【あれは大道芸だよ、道端で魔法を使わずにいろんな技を披露する人が真ん中にいるんだよ、見てみるかい】
【うむ、百聞は一見にしかずじゃ!】
そして、俺は人込みをかき分け、中に入って行った。そこには。ファントムマスクを被った人が球の上にのり、火のついた棒3本をお手玉のように回していた。
【どうだ、ゾフィー?】
【すごいのう、本当に魔法使ってないのか? あんなことわらわには無理じゃよ】
【俺も無理だよ、あんなことは】
【あんなことできるなんて人間はやはり強敵じゃのう】
【いろんな人がいるからね】
ゾフィー は興味深げにファントムマスクの男を見ていた。一通りその男の大道芸を見たら俺は人込みの中から脱出した。
【おもしろかったのじゃ、また見てみたいのう】
【まあな、今度は遊園地ってところに連れてってやるよ】
【なんじゃそれは?】
【まあ、言ってからのお楽しみだな】
と、ゾフィー と話していると前から一人の学生がやってきた。その顔を見た瞬間、俺の中で黒い感情が渦巻いた。
「あれ? 君は倉木君じゃないか久し振り」
「あ、ああ」
【どうした相馬、それになんじゃこの男は?】
【……昔の知り合いだよ】
「どうだい、両親は元気かい、あ、居なかったんだったね、ごめん、ごめん」
その言葉に俺は、目の前の男を思わず殴りかかろうとした。だがゾフィー が険しい声で言ってきた。
【待つのじゃ! 相馬! 今は動く時ではない、時期を待つのじゃ】
【くそっ……俺は我慢するしかないのか?】
【そうじゃ、いまはまだ、動く時じゃない、今はまだじゃ! 作戦は明日じゃろ? それまで待つんじゃ、どうせこやつも来る。その時に相手してやればよい】
「なんだ、無視か、まあお前みたいな野郎はどうせ高校に入ってもいじめられ続けられてるんだろ? 悲しい人生だな、じゃあな、倉木君」
そいつは去っていった。
【ありがとう、ゾフィー のおかげで自分を抑えられたよ】
【なあに、わらわとお主は運命共同体じゃ困った時はお互いさまじゃよ】
【ゾフィー……】
初めて見せた魔王の器の大きさに俺は感動していた。
【しかし、あやつはお前のなんなんじゃ?】
ゾフィー は率直に聞いてきた。
【……俺は小学生の頃いじめられてたんだ、きっかけは参観日……親が学校に見に来る日、みたいなのが小学校の時はあったんだ、それで後ろで親たちがひそひそ話で、俺の身の上話をしていて、それをあいつに聞かれてしまったってわけだ。それから、小学校の6年間ずっとあいつに虐げられてきたんだ。靴が無くなったり、机に落書きされたりとか数えるのが面倒なくらい、いろいろされたな】
【止める者はおらんかったのか?】
【いなかった、みんなあいつの味方になってよってたかって俺をいじめてた。人間は仲間内で誰か一人貶めることで安心感を得ることができるんだ。俺はその犠牲者だな】
【やはり、人間は最低じゃな……相馬みたいな良い奴をたかがそんな理由で、ますます滅ぼしたくなったのじゃ】
【そうだな、早く滅ぼそう……実はみんなには言ってなかったが、ここを合宿に選んだわけの一つで、俺の小学生時代のやつらや、俺らを見捨てた叔父たちが住んでいる町なんだ。俺自身のけじめをつけたいってのもあるんだ】
【……みんなにはどうして言わないのじゃ?】
【ああ、それは、他にもいろんな候補があって、もっと安全な場所もあったけど、俺のわがままでここを選んだって知ったらみんな幻滅するだろ?】
【……】
それっきりゾフィー は黙ってしまった。
そして、旅館に帰ってきた。もうすでに時間は、5時半をこえていた。急いで準備して集合場所へ向かった。みんなやるきなのか、もう全員集合していた。
「おそいよ、そうま」
「すまんな、ちょっと早く起きてしまって、街をぶらぶらしていたからね」
「黙れ、相馬さんにもいろいろあるんだ」
遥の文句に緑葉が一喝する
「緑葉ちゃん、より遅れるなんて、不覚でした」
「貴様ごときに送れる僕ではない」
「相馬より早く来たし、いいかな」
栞は華麗にスルーした。
「まだ、6時、20分前なんだが、みんな手厳しいな」
「リーダーは早く来ないといけないですからね」
「私なんて3時間も余裕をもってきました」
自慢げにジュエが言った。お前はどれだけ早く来ているんだとつっこみたかった。
「美鈴さんにまでそう言われるなんて、まあ、いい! 今日も修行に励むぞ! 何かわからないことがあったらゾフィー か緑葉に聞くこと、万が一、敵に遭遇した場合、戦わず逃げること、絶対自分の力を試すようなまねはなしだ! 相手の手の内がわからないのに戦うのはあまりにも危険だからな、以上だ、昨日と同じく、朝5時にここに集合、各自練習開始!」
「「「「はい!」」」」
今日はみんな四方八方に散らばって行った。みんな空を飛んで移動していた。基礎の魔法を学び終えたのでみんな空を飛べるようになっていた。しかし、魔力の消費を抑えるため栞にはなるべく飛ぶなと言っていたのだが、みんな飛んでいるので、試したくてしょうがなかったに違いない。俺は一人、溜息をついて、歩いて近くの浜辺の陰になっているところに行った。そこで、俺はゾフィーに闇属性の魔術について聞いていた。
【闇属性っていまいちイメージがわかないんだが、最初にどんな魔法を覚えるのが有効だろうか?】
【ふむ、そうじゃのぉ、まずは幻術じゃろ、いろいろ便利だしの】
【わかった、でも幻術か……どうやって練習しよう】
【幻術にもレベルがあるが、まずは自分が見せたいものをイメージしてこれを相手の五官のどれかに訴えかける幻術の、幻覚、をみせてみるのじゃ、しかし、これは一人じゃできないからの、被験者が必要じゃな……旅館の人間にかけて練習してみるのがええんじゃないのか?】
【そうだな、そうするよ】
相馬は旅館に引き返した、そうして中に入ると、最初に受付の人に出会った。
【こんな感じか?】
相馬はイメージしやすそうな、お札が床に落ちてるのを見せてみた。そうすると、うまく行ったのか受付の人が歩いて床に手をつけてお札をつかもうとしている。
【解くには、どうすればいいんだ?】
【始めたばかりじゃからすぐに解けてしまうはずじゃ、慣れてくると、ずっと見せることができる。そのときに解きたくなったら、その時の為に呪文を作っとくのじゃ】
【なるほど、そういえば……呪文ってどうやって作るんだ? これ教えてもらってないから、多分、栞は困ってるぞ】
【失念していたわい、呪文は頭でイメージしたものを口に出してまとめるだけじゃ、例えば、解除の呪文なら、汝の意識にある偽物よ、我の命によりと留まることを禁じる みたいな感じじゃな】
【ふむ、慣れないうちはその言葉を使わせてもらおう】
【レベルの高い幻術はこんな短い呪文じゃ払えないし、逆に簡単な幻術なら高位の魔法使いには破られるから注意するのじゃ】
【理解したよ】
そうして、相馬は旅館を回っていろんなひとに幻術をかけて行った。五官すべてには試せなかったが、視覚、聴覚、触覚は試してみた。そしてだんだんうまくなっていくごとに、かかっていく時間は長くなりより複雑な幻覚を見せることができた。最後のほうにはずっと幻覚にかかっている人が出てきたので、解除の呪文を使った。
そうしていると、いつのまにか、朝の5時になっていた。俺は急いで集合場所に戻ると、ちょうどみんな帰ってくるところだった。みんな、へろへろだった。
「みんな、修行お疲れ様。明日は本番だ、作戦内容は祭りに来ている人、全員の魂を吸い取る。そして、駆けつけてきた、魔法使いの撃退だ、作戦開始の時間は祭りが始まって一時間たった7時、集合は6時半に俺の部屋だ。質問はあるか?」
みんな作戦を理解したのか、何も質問はなかった。
「じゃあ、疲れてるみたいなので、ゆっくり休んでくれ、以上だ、解散!」
旅館の帰り道、みんなで今日の修業について話していた。
「いやー うちは久しぶりにもう一回基礎練をしてたよー 最近、戦闘なくて大分なまっていたからね」
「私はそこで水を操る練習していましたね、水が操れるなら氷も作れるんじゃないの? と思ってやってみたら簡単にできましたね」
「氷を簡単にって、氷は水のかなり応用のところなんだがな、やはり正式に貴様をライバルと認めないといけないな」
「ありがと、それで緑葉ちゃんはなにしてたの?」
「僕はひたすらメモリアを作ってたよ。使えそうなのが、何個か出来たのがよかった!」
「メモリアをたくさん作れるってことは、やっぱり緑葉はすごいよ」
ゾフィーから、メモリア作りは難しいことを聞いたので、おもわず、相馬は緑葉をほめた。
「ま、まあ、メモリアぐらい簡単ですよ! 相馬さんもすぐ作れるようになりますよ」
緑葉はうれしそうに否定していた。
「私はですね。ふふふ、明日の秘密にしておきます」
美鈴さんは、不敵に笑っていた。
そうこうしているうちに、旅館につき俺は女子連中が風呂からあがるのを待って、緑葉と一緒に風呂に入った。そして風呂からあがって、身支度を整えると、すぐに寝てしまった。
合宿三日目、作戦当日である、目が早く冷めたので、もう一度お風呂に入ってさっぱりして集合場所の俺の部屋に戻った。
大規模な作戦なのでさすがに栞は緊張してるかなと思いきや、栞ではなく遥の顔が青かった。ほかのみんなはリラックスしていた。美鈴先輩はむしろうれしそうだった。
俺は遥に声をかけた。
「大丈夫か? 顔色悪いぞ? なんなら降りるか?」
「いや、ちょっと温泉入ったらのぼせちゃったのー」
「お前はというやつは……じゃあ、大丈夫なんだな?」
「むしろ、待ち遠しいくらいだよー」
それを聞いて、俺は安心した。そろそろ作戦開始の時間になった。
「さて、作戦の時間なんだが、みんな準備はいいか?」
「「「「はい!」」」」
「では、作戦のかく……」
そのとき、ゾフィー が俺の体を乗っ取った。
「みんな、作戦を決行する前に聞いてほしいことがあるのじゃ」
【ゾフィー いきなりなにをするんだ】
「いいから、引っ込んどくんじゃ、みんな! 相馬はこの町で中学生まで育ったのじゃ、じゃが、無慈悲にもいじめられていたらしい、叔父も助けてくれなかったし友達もいなかったのじゃ、それにけじめをつけるためにこの作戦を立てたらしいのじゃ、もちろんこの町が安全だからっていうのも考慮はしておった。みんな、今まで、相馬にすくわれてきておるじゃろ? 違うかの?」
「そうですね、私に生きる意味を与えてくれました」
栞は、はっきりとした声で言った。
「うちは肩の荷が下りた感じがしたかな」
遥がやれやれといった感じで言った。
「僕は相馬さんに認めてもらい、命こうして命がある」
緑葉が真摯な瞳をゾフィーに向けて言った。
「私は、私自身を本当の友達として認めてくれました」
美鈴先輩は親しい友達に送る眼で見ていた。
「そうじゃろう、それなら、ちょっとぐらい、相馬に恩返しをしたいと思わないか?」
「そうですね!」「はいよ!」「もちろんですよ!」「当然ですね」
「じゃあ、今日の作戦本気で頑張るのじゃ、それが多分一番、相馬にとってうれしいはずじゃ」
ここで、ゾフィーは引っ込んだ。
「ったく、ゾフィーの奴め、余計なことを言いやがって……まあ……そういうことだ、秘密にしていたのは俺のわがままをお前らに知られたくなかったからだ。そういうことだ、すまん、俺のけじめに付き合ってくれ!」
「はじめから、付いて行くつもりですよ」
「そうまを馬鹿にしたやつをぶっ飛ばしてやる!」
「僕を仲間にしたのにそんな遠慮は要らないですよ」
「友達がいじめられていた過去の復讐、いいじゃないですか、付き合いますよ」
一人も降りるなんてことはなかった。
「……みんなありがとう! よし、作戦の確認だがまず、屋上に栞に空間の道を作ってそこから会場に向かう、最初に逃げられないように緑葉に、祭りの周り全体に結界を張ってもらいたいんだができるか?」
「もちろん、ただの人間を逃げられない程度のなら簡単だよ」
緑葉は余裕といった表情で答えた。
「そして、魔法使いが来る前にできるだけ多くの魂を吸っておく。特に栞は魂を吸わない、美鈴さんの分も一緒に魂をうばってくれ、そして魔法使いが来たら5人全員で挑んで、瞬刹するか、倒せないとしても、通信機器だけは破壊するかだ、以上だ。みんな……作戦開始!」
相馬が作戦開始を合図するとみんな変身して、祭りの会場に向かって行った。
祭りの会場、みんなお祭り騒ぎではしゃいでいた。そこに突然、空から5人の人影が降ってきた。その5人は片っ端から、人を襲って行った。襲われた人はみんな倒れていった。祭りは一瞬でパニックになった。そのなかには昨日、相馬を馬鹿にした奴も友達といた。
「なんだこれ? とにかく逃げなきゃ……」
そう友達に言うとみんな出口に向かって駆け出した。しかし、その途中、相馬が立っていた。
「相馬? どけよ! おい! お前はあいつらの囮になれ!」
相馬はとても冷たい目でそいつらを見ていた。
「お前らはほんとに屑だな、久しぶりに会って、変わったかもしれないと、希望を抱いていたが、人間ってものは、成長しても性格はかわらないんだな」
「なにを言ってやがる、どけよ!」
「まあ、お前の顔を見るのもこれで最後だ」
そういうと、相馬はそいつらにむかって魔弾を放ち、吹っ飛ばした。そして、そいつに近づいて行った。
「ひっ……助けて……」
「俺がお前らに助けを求めて、助けたことがあるか?」
「助けて……」
「怖いか? 怖いだろうな、俺も昔はお前らに散々怖いことをされた。しかし助けたことがあるか? ないね、だから俺はお前を助けない」
「助けてよ……」
「しつこいな! お前の口はそんな事を言う為にあるんじゃないだろ? 謝れよ、命乞いをしろよ」
「ごめんなさい……だから許して……」
そいつの口から震えながら謝罪の言葉が出た。その瞬間、相馬はこの世のものとは思えないほどの壮絶な笑みを浮かべた。
「…………やだね」
そして、そいつから魂を奪った。
【復讐完了じゃな、満足か? 相馬】
【……】
俺は少ししこりのようなものが残っていた。
【どうしたのじゃ相馬?】
【いや、いくら殺していないとはいえ夢と希望を奪うのはちょっとまだ抵抗があってね】
【時期になれるじゃろう】
ゾフィーは優しく声を掛けてくれた 。
【まあ、少し気は晴れたかな、これであとは叔父の魂を吸い取りたいのだがどうやら祭りに来てないみたいだ、単体で取りに行くと足がつく可能性があるからやめとくよ、まあ、一応、最低限の教育はしてくれたからな】
【うむ、じゃあ、さっさと、魂を集めるかの】
そういうと、相馬は魂集めを再開したのだった。
30分くらい経っただろうか、4分の3程度の人が地面に倒れてるなか、5人は走り回っていた。
「きゃはは、人間ども、覚悟するです」
栞は赤い髪を振り乱しながら、空を飛び、空間の矢で祭りに来ていた人を突き刺し、動けなくなったところに近づき、魂を吸っていた。
「あなたに罪はないですが、私は人間が嫌いなので、魂、貰いますね」
遥はとても人間の目には負えない速度で人に近づき、手の羽扇子で急所を突いて、動けなくしたところに、すかさず魂を吸い取っていった。
「魂頂戴いたしますっ」
時代劇のようなセリフを言った美鈴先輩は、背中に背負ったリュックから出ているたくさんの刃を振り回して人を傷つけ、それを栞のほうへ投げて行った。
「相馬さんに付いていくとはいえ禁忌に触れてしまった、でも、魂を吸う感覚……悪くないな」
緑葉は、先日のグリモワールとメモリアを両手に持ち、呪文を唱えた。そうすると、緑葉の眼の前あたりに魔法陣が浮かび上がり、その中から、ほぼ黒色に近い緑の蔓が、たくさんの人々に向かって飛んで行った。先端が鋭くなっており、人々に突き刺さった、その次の瞬間にはもう、人は倒れていた。そのとき、ふとした拍子に帽子が落ちてしまった。それを栞が拾った。
「ありがとう、ちなみに魂はどれくらいあつまってる?」
「172個なはずです。緑葉ちゃんはどうです?」
「やるな、僕は178個ですわ、ふふふ、いい勝負だな」
「負けてるのです、でも勝つのは私です」
「負けないね!」
お互い、楽しそうに笑っていた。
「さて、俺も力を貯えないといけないからな」
そういい、俺は地味に低空を飛びながら手刀で致命傷を与え、そのあと、魂を吸い取っていった。みんな絶好調だった。
そのとき、遠くのほうから魔力の気配がやってきた。おそらく異変に気づいた魔法使いだろう、最初に気づいたのはやはり、緑葉だった。すぐさま、みんなに通信呪文をとばした。
『相馬さん、魔法使いが来ました、予定と違って二人です。警戒してください』
その言葉に緊張が走った。その通信のおよそ5分後、まず一人、空から、女の魔法使いがやってきた。
「あなたたちですか? ここを荒らしているのは、あら? お前は緑葉真」
「ん? 俺を知ってるのか?」
「知ってるも何も、中央にこの異状事態を伝えたとき応答した魔法使いが緑葉稔ですから、しかし、魔物側に付いて……なんて、かわいそうな魔法使いさん」
「貴様ああああああああああ!」
緑葉はその言葉に切れて、でたらめに魔弾を飛ばした。しかし、魔法使いの障壁に少し穴が空いた程度で、結局受け流されてしまった。
「くぅ、やはり一発が重いですね」
相手の魔法使いはそれでもつらそうにしていた。
緑葉はもう一度、魔弾を撃とうとした。
俺がなだめようとすると、栞が叫んだ。
「緑葉ちゃん、落ち着くです! 頭に血が上ってると、勝てる敵も勝てないです! 私が認めたあなたは、その程度の魔法使いに負けるわけないです!」
「だが……そうだな、もう、俺は魔王軍の一人、そして藍の協会のスパイだ!」
緑葉は栞の言葉で落ち着きを取り戻した
「そうだ、俺らと世界征服するんだろ?」
「そうですね、あんな名もないような雑魚に負けてる暇はない」
俺と緑葉の会話に敵の魔法使いは
「雑魚ですって? 私だっていまや地区を任せられるほどの魔法使いなんですからね」
「地区で満足って……貴様はやっぱり雑魚だ」
「キィー! とっておきの呪文をお見舞いするわ」
そういうと、呪文を唱えだした。
「空の雲よ、我に従い、汝のけ……ぎゃああああ!」
魔法使いは詠唱中に、氷の刃で腹を突きぬかれていた
「よし、成功です。練習はしていたのですが、やっぱり、遠くの方の空中に氷を出現させるのはまだ難しいです」
そう、栞は緑葉の時間を稼ぎに気付き、その間に真後ろにゆっくり気付かれないように氷の刃を作っていたのだ。普通に警戒を怠っていたら、通らない攻撃だった。
「その程度の気配に気づかないなんてやはり雑魚ですね」
「くそ、でも、まだだ」
腰についている札に触れようとした瞬間、風の刃が貫いた。
「ふう、しおりんは詰めが甘い」
「そうですね、すいません。通信機器を破壊するのを失念してましたです」
「ちくしょう、私の負けだ……」
「倒した栞にはすまんが、俺が魂をもらうぞ、いいか?」
「まあ、それも何か作戦があってのことです。構いませんです」
そして、魔法使いからも魂を吸い取ったのであった。やはり魔法使いの魂、落ちこぼれでも人間の100倍近い魔力が手に入った。
そのあとは、簡単に事が進んだ。残り4分の1はすぐに片付いた。そして、一応確認のため緑葉に意識がある人物を探知呪文で探してもらったところ、誰も居なかった。そして行きと同じく空間の道を使い俺の部屋までたどり着いた。みんな変身解いた。そして、みんなに向かって言った!
「今日の作戦は成功だ、みんなかなりの魔力が集まったと思うぞ」
「私は268個だったよー みんなはー?」
遥が集めた魂の数をみんなに問いかけた。
「私は自分で集めたのは293個です。」
「僕はは294個ですわ」
「……負けました。僅差ですが緑葉ちゃんの勝ちです」
「ありがとう、でも、魔法使いとの戦いのとき、暴走しかけていた僕を、栞がなだめてくれなかったらあの魔法使いのペースに巻き込まれていた、一応礼は言っておく」
「いえいえ、あのとき、緑葉ちゃんもあの時、会話で時間をかせぐなんて思いつくなんてやっぱりすごいよ、魔法使いのエリートだったのは伊達じゃないですね」
栞と遥の二人はお互いを讃えあっていた。仲が良くなったと思い、俺はすっかり安心した。
「みんなお疲れさま!」
そこで、遥が突っ込んだ。
「待ってー そうまは何個だったの?」
「……言わないとだめか?」
「みんな言ってるしー そうまだけってのはねー」
相馬は誤魔化せる雰囲気ではないと悟った。
「俺は220個丁度だよ!」
「リーダーのそうまが一番少ないなんてねー」
「まったく、相馬は何をしていたんですか?」
「貴様ら黙れ、相馬さんは何か深い考えがあったんだよ」
みんなから一斉に非難を浴びた。緑葉のフォローも逆につらかった。
「いいんだよ、俺は、みんなに譲ったんだよ、それに魔法使いの魂が人間の100倍くらいの魔力持ってたから、実質320個だよ、どうだ、俺の勝ちだろ!」
相馬は開き直った。しかし、みんなから非難の目が痛かった。
「そ、そうだ、美鈴先輩の数まだ聞いてないじゃないか」
いい話題そらしを見つけたと思った。
「ふふふ、私ですか? 栞ちゃんに358個渡したはずですわ」
「「「「え?」」」」
みんな唖然するのか、ふふふ、と笑いながら悠々と歩いていくのだった。