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昼射場(ちゅうしゃじょう)
届くはずだったんだ
こんなにも高い空でも
手を伸ばせば届く範囲だと
腕を伸ばせば掴める所だと
願い祈れば必ず届くと
思っていたんだ
何をやっても届かない彼女を見て
何をしても届けない僕がいた
それはわずかな差のはずなのに
決定的に違う現実が現れる
二人で並んだ日はなくて
二人で歩いた日はある
二人が観た場所は同じでも
二人が着いた場所は違う
無人の駐車場
灯りが落ちて
出入り口に誰かいる
暗い影の
光の中
自動販売機の駆動音が響いて
僕は彼女に出会った
宵闇に溶けて
宵闇に生まれた
何も変わらぬ彼女に
僕は出会えたのだった




