94/355
迦車(かしゃ)
最終電車に乗って行こう
しとしと落ちる雨音が
遠くで鳴る踏み切り音をかき消す
不安定な電灯に纏わりつく
小さな命が羽をぶつけて飛び回る
かつんかつん
二回三回叩いてみる
黄色の線が境界で
私をこちらに引き戻す
滴り落ちる傘の先
何度も繰り返し突いてみる
生まれた地図を踏みつけて
誰もいないホームを振り返る
真っ暗な中
不規則な電灯がわずかに光って
揺れる音が響きだし
遠くから近くにやってくる
鉄の脚を踏み鳴らし
鉄の道を歩んでる
誰もいない真っ暗なホームに
誰もいない真っ暗な電車がやってきた
光は消えて羽は落ちる
落ちた羽を踏んづけて
開いたドアへと踏み出して
ホームには誰もいない
誰もいない朝方のホーム
電灯が一斉に点いた




