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詩集擬き  作者: 針山
48/355

人凝劇(にんぎょうげき)

大気汚染に塗れた空を見上げ

ビスクドールは烏に奪われる

水晶を仕込んだ麗しき瞳に

輝きのない虹彩を映して

屈託のない顔を浮かびあげる

灰色の石畳を歩けば

黒鉛を撒き散らし揺れる棺桶

伸びたのっぺらぼうが

影を長く待ち受ける

巨大な時計が時間を捨てて

世界はゆっくり停滞していった

からりこちとずれていく感覚

滲んだ奇妙が希薄となり

少女が買ったアンティークドールは質屋に消える

小銭の落ちる音で顔を浮かせた浮浪者が

風に舞う新聞で顔を隠す

今日も笑ってしまう思想と思想をぶつける黒紳士

キリンのハットを掲げ口ひげを撫ぜる

欠伸を噛み殺す少年が

気まぐれに珈琲を転がした

濡れた世界は霧に包まれ

スモッグは変わらず陽を影す

知らずに干したご婦人が

文句を垂らしパンを投げた

売れない作家が嘆いて訴える

応える腹の虫が跳ねたパンを咥え

品のない笑い声がこだまする

腹を抱えて嗤う老婆を

卑しい杖で殴り飛ばす

思い出した少女が男に声をかけ

質屋は奥方に素敵なプレゼント

轟き泣く声を背中に

野良犬がアンティークドールを持ち去った

わずかな陽射しに欠伸を

野良猫がぺろりと舌をだす

黒い羽が散った傍には

ビスクドールが寄り添うように空を見上げ

狂った時計塔が動きだす

朗らかな街の声を刻みながら


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