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否岸端拿(ひがんばな)
忘れないで
君の本当の理解者は
僕だけなんだ
君が何を思い
君が何を想い
何を望んで
何を拒むのか
僕だけが知っている
絹のような美しい髪を
引きちぎって台無しにしたい
雪のような澄んだ皮膚を
毒々しく染め上げたい
乱暴に掴んだ腕を
丁寧に縛りあげ
乱雑にくるんだ体を
丁重に整えて
引き絞られた喉から発する
君の声を聞きたい
君の本当の理解者は僕だけだ
忘れずにお眠り
次に目を覚ます時
僕は世界から消えている
忘れておくれ
本当の君を知る僕を
忘れておくれ
本当の君を見た僕を
思い出すことさえなく
彼岸の彼方に置いてきて
僕は君の心になる
どうかお願いだ
心を忘れて生きてくれ
いつか命絶える時
後悔しないために




