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追瀬(おうせ)
流れる速度は止まらずに
駆ける残像は振り返らず
待ち続ける貴方は
ただ画面を見つめるだけ
反対側に立つ
私を見やしない
声を出すには憚れて
声をかけるには遠すぎて
声を伝えるには騒がしい
そんな人混みが集う場所で
貴方はただただ手元を見る
私を見て
こっちを向いて
そう言えれば
簡単なはずなのに
軽快な警戒音が振動する
速さと多さを追及した
小さく大きな障害が
そんな時
ふと貴方が
顔を上げる
刹那の邂逅
瞬間の出会い
遮る風が連れてくる
障害の前に繋がった視線
感情が爆発する私を見た
見知らぬ私を見た貴方には
何が伝わっただろう
揺れる座席の上で
いつもの再開に心を踊らせながら
私は明日の彼を探しにいく




