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快声(かいせい)
俺を見ろ
叫んだ彼を
私は忘れない
好いてはいなかった
むしろ
嫌っていたような気がする
何度拒んでも
快活に笑いながらやってきて
何度離れても
お構いなしに進んでくる
ズカズカと
ふかぶかと
俯き溜める
私を前にして
ただ笑って
叫ぶのだ
俺を見ろ
俺がいる
ならば踏み出せ
恐れることはない
と
笑いながら
腹立たしく
気軽に叫ぶ彼の背を蹴飛ばして
私は見ない
どんなに苦しくても
どんなに困難でも
私は彼を見ない
見ないまま
進んでみせる
それが笑いながら側にいた
彼に見せつける
彼が見る
私の姿だから




