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『瓶便(へいびん)』
久しぶりに帰った家は
以外と手狭に感じて
あれだけ駆けた庭も
猫の額くらい
埃が積もっていそうな
私の部屋を開けると
予想外に綺麗に片付いていて
あの日過ごした記憶が
薄れてると思ったら
引き出しに仕舞われたラブレター
好きな先輩の写真
部活に使った道具や
今はもう着れない服が
時間を止められたように
ひっそり佇んでいた
なぞる机の横に
鏡が置いて
映る私の長い髪が
異質ささえ感じられた
ここは私の部屋であって
私の部屋じゃない
刻むのを止めた
ベッドの上の目覚まし時計と一緒に
取り残されている
夢中だったあの時
生きる事に不安さえ感じなかった
懐かしい時代
棚に収まる本の中に
私が私に宛てた手紙
笑いながら書いた手紙は
怖くて開けられなかった
ここは私の部屋だった
ここは私の場所だった
今の私が
立ち入ってはいけない
上げた右手は
さ迷いながら
静かにそっと
ドアを閉めた




