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了手(りょうて)
ちょっとだけで良かったんだ
君と一緒に居られる
朝までの時間が増えるなら
刻まれていく未来の砂浜を
波で流してしまいたい
繋いだ右手を掴んで
真っ黒に広がる海の中へ
僕等は一歩一歩進んでく
冷たさを感じて震える
君の声
ちょっとだけで良かったから
君と一緒に居られる
この世界があるのなら
手を伸ばせば
掴めていたはずのその欠片
眩しい位に光ったそれを
明日も一緒に眺められればいい
忘れられない昨日を置いて
忘れてしまった明日を見よう
君を隣に
時さえ置き忘れ
繋いだ左手には
誰もいない




