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詩集擬き  作者: 針山
176/355

四面想歌(しめんそか)


たった一人の

紅く染まる教室

うずくまる影の

伸びる先に視線はない

誰にも聞こえない嗚咽を噛み殺して

立てた爪に傷つけられながら

君は言ったんだ

右を見て左を見て

回りには敵しかいない

ボクだけが敵の

味方の真っ只中

叫んで

喚いて

声を張り裂けて

呼ぶ声なんかしないよ

ただそこに君がいたんだ

おはよう眠いね

なんて話しかける君は

敵だらけの味方の中にいることを

忘れさせてくれたんだ

放課後座り込むボクの回りには

いつも通りの誰もいない

日常の光景

声を潜めて

話す彼らを見ず

寝たふりの鉄壁を築いて

ボクは耐え忍ぶしかない

けれども君は来て

拒んだ空気を飲み込んでしまう

さあ帰ろうなんて

笑って言うんだ

誰でもいいから罵倒して

蔑んで軽蔑して

敵の中に囲まれた

ボクを証明して

味方だらけの

敵の中で

君が笑うんだ

いつの間にか笑うんだ

耳を塞いで顔を俯けたあの頃と

違った笑顔に見えたから

味方だらけの敵の中

ボクは一人で戦うんだ

誰が敵かも解らない

誰が味方かも解らない

敵だらけの味方の中

君がいて叫ぶ

もう止めて逃げないで

止まってと

ボクの味方だった

君が敵になる

喚いて

叫んで

泣いて逃げ出して

誰もいない場所へ

一人になれるところへ

俯いて

座り込んで

伸びた影の先

紅い教室の中

立てた爪から流れる

赤い糸を掬った

ごめんね逃げないで

君が抱き締めたボクの手は

抱えた膝を手放して

味方だらけの世界の中

ボクは掴んだ

濃い蒼に染まる空の端っこに

薄く塗られた紅色の

今日の色が残ってる

別れの言葉を

ボクは口に出さず

掴んだものを話さずに

今度こそ笑うんだ

流れた赤い爪痕に

君のつけた絆創膏を貼り付けて


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