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捲廻(めぐりまわる)
一声泣いて親のため
二声鳴いて友のため
三度嘆けば己のため
かるらくるりや
かるらくるりや
片足立つ三日月乙女は
不敵に不敵に月を裂く
にんまりまんまり口元分かち
白と青のはためくエプロンドレス
おとぎの国の少女のように
小首傾げて可愛らしく
真っ暗に染まった舞台に立ち
照明に開けられた穴の上で
華麗なセリフを零しだす
逸る馬をけしかけて
首を折れば大歓声
相対正面立ち向かえば
足元掬われ背後の中
出された手は彼岸の先に
朽ちて咲く街路樹のよう
断崖絶壁茶色の風景
陰影深く陽が刺し貫く
岩の乾いた空気が喉を焼く
明滅明朗
瞬く記憶
あなたはどれを
覗き見た




