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宿休雨(しゅくう)
濡れた空気を舐めて
絡まる髪を撫でれば
鬱陶しいくらい枝垂れかかってくる
ほんのわずかな隙間さえ
垂れた雫は痕を残し
緩やかに去るのに
優しく温もりが
脚を辿って唇へ
立てる寝息の音だけが
雨の音と合わさって
乱れた景色を彩る
片口で切り揃えられた
小麦色の髪を撫でながら
カラスなんて呼ばれる
自分の髪をなぞりながら
窓の外で飽きもせず降り続く
雨の模様を見つめて
私はそっと
服を着る
傘を持たずに外に出よう
雨に濡れて歩いてみよう
天からの雫を全身で浴びて
鼻歌でも唄いながら
少しだけ散歩をしてみよう
真っ白のシャツに
少しきついジーンズを穿いて
ドアに手をかけ
振り返る
背中を向けた誰かの寝息は
止まっていた




