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詩集擬き  作者: 針山
143/355

通心(つうしん)


ああ

私は別に

貴方の事が

好きじゃない

ずっとずっと不思議だった

どうして貴方と一緒にいるのか

こうして二人で並んで歩いて

会話もないまま進んで

煌びやかなお城に入るだけ

ふとした時に気が付くの

貴方のどこが好きだったか

優しいところ

真面目なところ

寡黙なところ

無関心なところ

どれもそれらしい理由で

でもきっと

どれも正しい理由じゃない

貴方が私の身体に触れる時も

考えるのは貴方のこと

どこが好きなんだろうと

思うこと

今日も別れて家に一人

今度はいつ好きになったのだろうと

無音と影が同居する空間で

着の身着のまま

ベッドで考える

好きになったのはいつだろう

出会ったのはいつだったか

思い出せもしない

遠くになったあの頃の自分

昨日のように感じながら

決して心を思い出せない時間

だからそう

窓から差す月明かりの中で

暗闇に灯った四角い端末を持ち上げる

さようなら

別れましょう

履歴を消して

痕跡を消して

貴方と私の

全てを消して

永久の再会を叶わせない

たった一言を告げるため

光った端末を持ち上げた

ただ一つ

彼からの拙い何気ない一言が

光った端末

残されているのに気が付いて

無音の着信

新しい

履歴と痕跡

それを見て

見つけて

私はそっと

 で笑う

染み渡り

染み込んで

そういえば一度も言っていなかった

私が一度も口にしていなかった

彼からたまに

耳元で囁かれる言葉を思い出しながら

彼に私を送ってみる

またね

好きよ


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