No・4
奇妙な乗客たち 1
基本的に、たいていの人が同じ時間の同じ電車の同じ車両に乗る。自分もそうしている。行先が同じなら、たいてい乗る場所も、乗る時間も乗っている人の顔ぶれもほとんど変わらない。
おそらく、自分が人のことをぼんやり覚えているように、周りも自分のことをぼんやりと覚えているのだろう。しかし、なかにはぼんやりでは済まされない乗客もいるのである。
毎日、同じ電車に乗るおじいさん。一人でゆっくり歩いてくる。
ところがそのおじいさん、スペースがなく座れないと電車を降りるのだ。時間はいいのか!遅刻しないのか!そこまで立ちたくないのか!聞きたいことは山のようにあるが、私にできることはしれっとした顔のまま過ごすことだけである……。
奇妙な乗客たち 2
電車の中では、何もしていない人が少ないくらい、音楽を聴くもの、本を読むもの、携帯、ゲームをしているものといろいろな人がいるが、朝の多くで座れる場合は寝ていることが多い。
そんななかに熊がいる。いやもちろん本物ではないが、よく似ている。その熊さんが気になるのはなぜか。寝てる。ずーっと寝ているのだ。私が乗る前から寝ていて、私が降りてからも寝ているのだ。全部の駅に止める電車で、10駅近く寝て移動するのは私くらいなものだと思っていたのに強敵現れる。いや戦う予定は無いのだが…。
今日も私は無表情に寝顔を見ている。この熊はどうやって起きるのだろうか。
当たり前ではない親切
電車というものは、赤いものに限らず、日本全国、また世界各国にあるものだが、日本の国以外で電車に乗るとより日本の電車の良さと恐ろしさを痛感する。
時刻通りに、来ない。まず、時刻表がないことも多い。朝の風景でぞろぞろ乗車口に合わせて、人が移動している光景は奇妙でさえもある。まぁ、こんなものは慣れで、自分も横の人が動くと、同じように動く。 それはさておき、赤い電車は事故に強い。というか復旧が早い。一本や二本待っても次がすぐに来る。二桁分遅れに珍しさを感じるほどだ。それでも全くないわけではない。とくに春は多い。
電車に揺られていて、アナウンスが流れた。
「線路のポイント点検で遅れてます。」ではなく、「これから遅れる可能性があります」のアナウンスが流れた…。どんだけ親切なんだ、日本の電車は!
ほこりにするべきか、やっぱり怖いと思うべきか。ぼんやりした顔で今日も揺られている。