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『運命潮力』 その04


「マカラ」

「マサカ、あなたが勝つトハ思いまセンでシタ」


 準決勝第二試合の開始直前に、無表情の無乳メイドに俺は話しかけた。

 研究所で俺はこのメイドに負けている。だが、次はない。あんなファンデッキに二度と負けてたまるものかよ。


「勝てよ、決勝で待ってるぜ」

「善処しマス」

「あ、それと一つ聞きたいんだけど……」


 そんなこんなで、俺はマッハ、ソーマ、そしてアミが待つ観客席へ。

 出場者特権で最前列特等席が設けられている。


布田(ふた)先輩たち、勝てると思う?」

「『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』的には勝ち目は皆無だ」

「お嬢ちゃんそのセリフぅ、準決勝第一試合でも言えたかな〜?」

「ぐぬぬぬぬ……」


 マッハの煽りに敗北者(アミ)は拳を握る。まあ、そうだよね? 『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』だけ見たら勝ち目はない。


「ちなみに俺、マカラのデッキ以外はよく知らないんだけど」

「ククク、なら順番に説明してやろう。光栄に思え」


 ソーマの解説がポーズを取って指をさす。布田はリーダーかと思いきや先鋒だ。

 『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』の値の問題かな?


「布田側のリーダーはシャニ。一つ目の『災厄の扉(ディザスター・ドア)』のあった『地図にない島』で一人暮らしをしていた。『アルメ』歴は一カ月程度、哀れな奴だ」

「『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』は5000。善戦はするだろう」

「何がかわいそうなのぉ?」


 よく焼けた肌の少年、小学校高学年くらいかな。

 俺もマッハと同じ所に引っかかった。人様をさして『哀れ』は聞いていていい気持ちではない。


「下手に『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』が高いせいで、一般常識よりも先に『アルメ』を教わった。奴はゲームがつまらんだろうよ」

「…………へぇ、そう」

 

 地の底から響くような低音。あ、ヤベ。マッハが怒ってる。ここに猫魂さんがいなくてよかった。また警戒モードに入ってしまう。


「マッハ、落ち着け」

「大丈夫〜。わたしは冷静よぉ……………………あのくそボケオカルトオタクがよぉ…………死んでからも迷惑かけやがってけったクソ(ワリ)ぃ…………いい大人がホウレンソウも出来ねぇのかよ、ガキの人生掛かってんだぞダボがぁ…………」


 小声で罵倒すんのやめてもらえませんかね、怖い!


「うひゃん!?」

「どうした晴井」

「うぅ…………なんでもない。その相手は?」


 俺の尻をマッハが鷲掴みし、物凄くいやらしい手付きで揉みしだいていた。気を鎮めるにしても他に方法ないんですか??


 恥ずかしいしくすぐったいし変な気分になってきた……でも抵抗したら怖いからな。何されるか分からないよう。

 これが痴漢に遭った時の女子の気持ちか……痴漢許すまじ。


「対戦相手は『祈祷(きとう)者』。『向こう側』のリーダーらしいが、何も分からん。デッキは青単色の手札破壊」

「てふだはかい?」

「『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』15000の手札破壊を舐めるな。ランダムの場合必ずこちらの一番嫌な手札を選ばれる」


 でも、手札破壊って結局妨害の域を出ないでしょう? 『激昂』デッキか?


「『激昂マッドサイエンティスト』だな」

「気が合いそう……!」


 マッドサイエンティストは《精神の外科医》に代表される『手札を捨てた時』に追加効果を与える連中の総称だ。得てして人気がない。

 理由? 弱い。シンプルだろ?


「デッキは紙束だが、挙動は面倒だ。シャニでは勝てんな。アレはド素人だ」

「ソーマ口悪いな」

「事実だ。次はマカラは……知ってるんだな?」


 俺は頷いた。あのペチャパイには煮え湯を飲まされた。せめておっぱいがあれば許されたものを。


「『バフカウンターロボロマンデッキ』だ」

「だが擬似『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』は7500ある」

「何か違うの?」

「知らんが」


 アミちゃんや、知らないならいちいち『疑似』とか付けないでくださいよ。


「『向こう側』の技術で、集めた『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』を固定化してるのよぉ。

 『アルメ』にしか使えないし、使いすぎると不具合も出るはずよぉ……それに、ある種の装置を使うとジャミングできるわ」

「ひゃい……」


 なんで尻揉みが激しくなるんですかね……?


「対戦相手はシヴァ、黒紫を使う。コントロール奪取を好む変態だ」

「残念ながら『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』の数値は分からない。かなり高い……5000以上のはずだ」


「アミちゃん、見えるんじゃないの?」

「それが、シヴァは見えない。何らかのカラクリがある」

「ふーん……」


 物言いたげなマッハがさらに激しく尻を揉もうとするのを手首を掴んで止めた。

 いい加減にしろと一瞥(いちべつ)すると、すっげーニヤニヤしている。喜んで受け入れたんじゃなくて我が身を犠牲にしたんだよ!


「布田、デッキは黄色単色の『石臼長虫(ミルワーム)』だ」

「『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』は3000。あの場で最低値だ」

「あー、懐かしの『司書キャノン』」


 《石臼長虫(ミルワーム)》は古くから存在するユニットタイプで、山札をちまちま削る能力を持つ。

 弱くはないが時間がかかり過ぎるのが欠点で、競技レベルではあまり見かけない。


 しかし、山札を破壊すると一時的に強くなる《要塞図書館司書》を《魂の砲弾》で投げるデッキは一時的に流行った。一年くらい前かな?

 やっぱり低速なのがなぁ……最近の環境だと速攻(アグロ)強いし。


 ちなみに『外科医テンペスト』と相性がいいので、持ってたら使ってたよ。持ってないけどな。


「対する羅睺(らごう)は、これまでは黒単色のナイトメアデッキだった」

「『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』は8000。しかもそのすべてを対戦相手への妨害に使ってくる。なんだソーマ?」


 肩に手を置くソーマに、アミが小首を傾げて振り返る。


「いや、言うべきことがあるんじゃないのか? 晴井」

「???」


 俺は苦笑した。マッハもニコニコしている。アミは行動を『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』任せにしているとは聞いていたが、完全に何も考えてないんじゃないか?

 猫魂さんでもこういう場ではキチンと決めるぞ。


「ラゴウ? こと乳母崎(うばさき)ラコさんに『アルメ』の面白さを教えて、茶色を混ぜた『ナイトメア・サバイバル』を勧めたのは俺です。ごめんね」


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