『ファントム・メナス』 その06
「ターン貰います。ドロー、補充、リソースは青黄色黄色、エキストラ・リソースは黄色。
セット、攻撃…………《過去からの脅威》がどれほどの力か見せてやるよ」
ソーマの《ミドガルズオルム》は11/11。俺のデッキでこれに対抗できそうなのは、捨札のスペルの数の攻撃力防御力を持つ《地下図書墳墓の主人》くらいのもの。
だが、今回彼女は当てにならない。だってほとんどのカードをゲームから取り除いちゃって、俺の捨札は3枚しかないし。
「《焚書》表にする。本当は捨札利用対策だったんだけどさ」
《焚書》は黄色の0コストスペル。プレイヤー一人の捨札のカードを全てゲームから取り除く。
そして、この時点でソーマは全てを理解した。
《ミドガルズオルム》なんて容易く真っ二つにできる、超大物ユニットが存在する。
そいつは今、ソーマの捨て札から、ゲームから除外領域に移動した。
「詠唱はうろ覚えで勘弁しろよ。
来るがいい、世界を燃やすもの。天を焼き、世を冥きに落とすもの!」
予選でソーマが唱えたオリジナル詠唱の覚えてる部分だけを抜粋だ!
いいよね詠唱、俺もやりたかったんだ!
「汝の名は……《青褪めた騎士アズラーン》!!」
俺の除去領域は25枚。《アズラーン》の戦闘能力は除去領域の枚数+2。
つまり27/27! うわ、《ミドガルズオルム》二匹倒してお釣り来るじゃ〜ん、楽しー!
…………ん? 27???
「あー!!」
「なんだ?」
「ごめん、攻撃やめていい?」
「…………ククク、なぜだ?」
俺は手札から1枚ソーマに見せる。
「俺、今《天冥戦乱》引いてるんだわ」
山札を半分にする《天冥戦乱》。そして俺の手札には《運命解析》で引っ張ってきた《魂の砲弾》がずっとある。
「コストは……そうか、《アズラーン》か」
「《タピルスの歩き巫女》も俺の嫁だからな。ソーマも好きなら絵師さんの漫画貸すぜ?」
「ん? ああ……うん」
ソーマは少し考え込んだ後に、大きく息を吐き出した。
「恐れ入ったぞ晴井。オレ様は『運命潮力』の力で、想像しうる限りの最善手だった」
「いや、俺もご相伴に預かりました」
「あれだけサーチしておいてよく言う」
ソーマは手札を伏せた。
「オレ様の負けだ」
「つーか、《アズラーン》落とした時、強化じゃなくて《焚書》だったらヤバかったんだが?」
「あの時はまだ『アズラーン暴露』に未練があったからな。デッキに《焚書》は入っているが、《罪の暴露》が使えなくなる」
俺は右手を差し出した。ソーマはクククと笑い、その手を握る。
「対戦ありがとうございました。これで一勝一敗だな」
「対戦ありがとうございました。ククク、次はこうは行かんぞ?」
「という訳です猫魂さん」
「マジかよ」
「マジよ〜。お嬢ちゃんはおっぱいに完堕ちよぉ」
「堕ちてない。断じてボクは堕ちてないからな……! 僕が負けたのは《最後の賭け》だ……!」
「オレ様は普通に負けた」
最後だった大稲デイヤと猫魂さんは顔を見合わせ、お互い困った顔をした。
「ケイト、悪かった」
「え? あ、いいのにいいのに! アタシ負けたし!」
「チームではオレの負けだ」
「よし、じゃあ大稲も大会後に夕飯行こうぜ!」
「え?」
俺の提案に困惑する大稲。猫魂さんと仲直りはしたみたいだな。できれば夕飯の時に焚き付けて告白まで持ち込みたい。
「オレ様は行く。ククク、楽しみになって来た」
「待ってソーマ、デイヤ。ボクは?」
「え?」
「え?」
一人残されるアミちゃん。そう考えるとちょっとかわいそう。
「お嬢ちゃん、呼ばれてないのについて来る気〜?」
「いや、そもそもオレは行くとは」
「え? デイヤ行かんの? じゃあアタシはケーくんたちと美味しいもの食べてくる〜」
「いや、行く」
猫魂さん、煽るの上手いな。
「ケーくん、かわいそうだからアミもいいかな?」
「猫魂さんのお願いなら仕方ないなー」
「ぐぬぬ……」
「うぬぬ……」
大稲とアミちゃんの視線が痛い。わはは。いい気分だ。猫魂さんはもうちょっといじめるといいよ。
「雨宮さんは女の子の頭数が増える分には喜ぶし、連れて行けばいいよ…………ただし」
俺は代わりに並ぶ面々を見た。準決勝第二試合。
『布田研究所』vs『蛇組』。
緊張した面持ちの布田先輩、冷たく無表情のマカラ、三人目は知らない人。
仲間に見えないからって、先頭に立って素敵な笑顔をこちらに向けてくる乳母崎さん。恐らく猫魂さんかマッハか…………あるいは、大稲に。
その、うしろに、酷薄な目付きの司馬、こちらも三人目は知らない人。
「猫魂さん」
「おう」
「疲れたでしょ? 控室で休みなよ」
「え? 別に……」
俺の言葉に困った顔の猫魂さん。俺はマッハを見た。いつの間にか胸元までファスナーを上げている。残念。
「大稲さん。猫魂さんが疲れてるから、ちょっと休ませてあげてぇ」
「え?」
「ククク」「??」
理解を示すソーマ。お前、エロ関係は耐性ないけどこういうのは分かるのね?
「猫魂さん。ごめん正直に言うわ」
「え? 戦力外通知? アタシってイタリア? 枢軸国からいらない子?」
「今がチャンスだから大稲と二人きりでイチャイチャして来なさい」
「にゃ!?」「え? おい!?」
二人はトマトのように真っ赤になった。




