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『ファントム・メナス』 その05


 俺はソーマが落ち着くまで待った。

 ソーマは過呼吸気味の息を整え、ゆっくりと深呼吸をした。すまんな、さっきはおっぱいの話題なんて振ったりして。


「ふうー、はあー……」

「少しは落ち着いたか?」

「ク…………情けない姿を見せたな」

「いや、この至近距離であれを見て過呼吸にならない奴は男じゃない」

「ククク…………」


 悪役笑いも張りがない。それでも、気持ちを持ち直したソーマの袖を、隣の席の美少女、アミが引いた。


「ソーマ」

「がふぅ!!?」


 白いワンピースの胸元を引っ張って、背徳的で淫靡(いんび)な深い縦穴を覗かせるアミ。

 おおお! 82でもDあるバストはお椀のようにこんもりと盛り上がる。恐らく片手で包み込めるサイズ(推定)! 低身長白ワンピースという清楚(せいそ)可憐(かれん)の象徴ともいえる存在から、突然の誘惑は破壊力が抜群だ!


 でも俺は盛り上がる以上にソーマが心配になった。失神したり鼻血吹いたりしそう。そうなったらドクターストップで不戦勝なのでは??


「こどもにナニを教えてんですか!?」

「ええ〜?」


 俺が耳を引っ張ると、マッハは悪びれる様子もなくニヤニヤしていた。それでも聖職者か? それとも生殖者とでもいうのか? そんなだからシスター=エロいって思われるんだよ!


「アミ、すまん……ええと、やめよう。な?」


 苦しそうに絞り出すように、ソーマがアミに語りかける。その反応がショックだったのか、アミが憤怒(ふんぬ)の形相でカードを引く。

 

「クソ! どいつもこいつも馬鹿にしやがって!! ドロー!!」

「いや、落ち着け。高校一年生のバスト平均値は81.6のBカップだ。君は身長も低いしアンダーも少ない。この露出狂の痴女とくらべてはいけない」


 アミの年齢は分からないが、まあ十代半ばだとは思う。つまり、普通に平均以上。巨乳とまでは行かないがないわけではない。

 安心して、自信を持って!


「き、気持ち悪っ!?」

「え……」


 しかしながら俺の気遣いは猛烈に拒絶された。あ、そうですよね。よく考えると、考えなくても仕方ないよね。うん。俺、気持ち悪いし……。

 こんな気持ち悪い男がフォローとか考えてごめんなさい。


「アミ、晴井に謝れ。突然気持ち悪いは失礼というものだ」

「あ〜あ泣かした。いーけないんだぁ」


 なんとか落ち着きを取り戻して、俺の肩を持つソーマ。いい奴だな。

 それとマッハは煽らないでください。誰のせいだ? マッハが脱いだのが発端だったのでは?


「いや、マジで泣いてないからそういう事言うのやめてもらえます?」

「ねーねー、そっち楽しそうなんだけどー?」


 猫魂さんが首を突っ込んで来た。楽しそうだ。獲物を見つけた猫の目をしている。これは……危険では?


「楽しいわよぉ、お嬢ちゃんのおっぱいが小学生って話〜」

「ええ〜? 痩せててスレンダーで色んな服似合うし可愛いじゃん」


 悪気のない言い方。いつもの猫魂さん。しかしどこかに不穏な気配がある。気のせいではなく。


「肩も凝らないし下着も安いしシャツもケダマにならないし、すぐサイズアウトもしないから最高でしょ」


 あ、やっぱり援護射撃あるいはとどめ刺しに来てる。だれにでも優しい猫魂さんにも、明確に嫌いな相手がいるのって面白いなあ。


「毛玉って?」

「ティーシャツとか、胸の部分だけ生地が毛玉になりやすいんよ」

「ろ、ロマン毛玉……!」


 なるほどなるほど! おっぱい張りで生地にストレスががかり、他の部分に比べてダメージが入りやすい。

 ひざ抜けジーンズと同じ原理ね。


 だが発生源がおっぱいであるというだけで生まれるロマンがそこにはある。おっぱいがこすれ、おっぱいに引っ張られ続けて生まれた毛玉。

 つまり毛玉にとっておっぱいはママってことね!


 あるいはそれは全人類の憧れ、『おっぱいを支える仕事』をやり遂げた(おとこ)の成れの果てかもしれないぞ……。

 過酷! なんて過酷なんだ『おっぱいを支える仕事』! だが、全てのおっぱいに貧富あっても貴賤なし。巨乳すべからく支えるべし(差別主義者)。


「そろそろ落ち着いたか? さっきのアレ、マッハに倣ってソーマの『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』を奪おうとしてたんだろ?」

「…………アミも追い詰められているようだな、ククク。それはそれは、面白いぞ」


 調子が出て来たようだ。ソーマは息を吐き、ポーズを決める。


「オレ様のターンだ。ドロー! 補充(リフィール)、リゾートは緑黄色黄色、エキストラ・リソースは緑!」


 これでエキストラ・リソースは緑が四点。大型スペルもユニットも使い放題だ。


「《悪い虫》には手札を食わせる。その分働いてもらうぞ。戦場Dに移動。

 カードを1枚セットし、別の1枚で戦場Cへ攻撃。攻略させてもらおうか……『亡靈(ファントム)』!」


「やれるもんならやってみな! コンボデッキで殴り合いに勝てると思うなよ」

「ククク、どの口がほざくか。《ミドガルズオルム》表にする(オープン)! X=5!」

「ですよねー」


 《ミドガルズオルム》は緑のハイレアユニット、コスト欄が『X』になっている。

 基本0/0だが、支払ったコストの二倍の+1/+1バフカウンターが乗ってくる。


 ちなみに通常カードの特殊能力無しの戦闘能力基準は、


 0コスト 2/2

 1コスト 3/3

 2コスト 4/4

 3コスト 5/5

 4コスト 7/7

 5コスト 10/10


 という事になっている。


 《ミドガルズオルム》は元からユニット戦闘で勝利すると+1/+1バフカウンターが乗るスキル『暴食』を持っている。つまり、X=2以上だとお得。


 さらに+1/+1バフカウンターが5個で『蹂躙(じゅうりん)』、10個で『俊足』を得る。なんで『俊足』かって? 山みたいにデカいから、距離感バグるんじゃないかな?


 ソーマが出したのはつまり、10/10で『暴食』『蹂躙』『俊足』。敵を倒せば倒すほどデカくなり、単独で制圧(ドミネート)」でき、しかも経路を挟まず隣の戦場に移動できる厄介者だ。


「《幽霊強襲揚陸艦》から入電、『我沈没ス』」

「+1/+1バフカウンターを載せるぞ。晴井、山札(ディクショナリ)は何枚だ?」

「まあ、そうなるよな」


 《魂の砲弾》での山札(ディクショナリ)破壊が来る。それまでは《ミドガルズオルム》で暴れて俺の制圧(ドミネート)を止める構えだ。

 予選で他ならぬソーマに指摘された通り、俺の『外科医テンペスト』は山札(ディクショナリ)破壊に弱い。


「26枚だ」

「もう一匹食わせれば射程圏に入る」


 当然、『天冥戦乱』は手札かセットしてあるのだろう。


「ターンエンドだ。そしてこれが晴井、お前の最後のターンになる。

 《嵐の精霊(テンペスト)》を使っても、オレ様には『運命潮力(ディスティニー・ドラフター)』がある。さあ、足掻いてみせろ」



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