超音速の女神を弾丸は貫けるのか その 01
ボクは、州蔵アミは驚いていた。全く理解できなかった。
目の前にいる大きい女、身長も胸も大きくて、女スパイみたいな格好の長い髪の女。マッハの『運命潮力』は、350だ。
たったの350なのに、ほとんど凡人と変わらないのに、なんだこの挙動は、運命を引き寄せたかのような引き!?
「《音速の女神マッハ》の能力を起動するわ。読んでたわよねぇ?」
「ああ」
手札を1枚ランダムに捨てることで、コストを支払わずに表向きにセットできる。
恐ろしい能力だ。あまりにも強く見える。しかし、その捨てる手札が《音速の女神マッハ》の可能性もある。
マッハの手札は現在6枚。《音速の女神マッハ》を引く確率は約17%。
ボクの『運命潮力』は12000だ。確実に引ける!!
「惜しい、その隣よぉ」
マッハの手札からボクが引いたのは《駆け抜けるラプトル》。赤0コストの『俊足』持ち。
《音速の女神マッハ》と並んでしまったら最悪の事態だったろう。だが、本当はもっと引きたいカードがあったのに……!
「《音速の女神マッハ》をコスト無しで表向きにセット、『俊足』効果で戦場Aに移動するわぁ。1枚セットしてターン終わり」
「…………いいだろう。ボクのターンだ。ドロー、補充なし、リソース白。セットして東経路へ」
「エンド前に[《火花走り》」
「《祈り》だ」
0コスト火力がボクのセットしたカードを焼き払う。しかし、それは無色リソースとカードをドローするスペル《祈り》。テンポを乱されただけ。
「わたしの番ね。ドローしてぇ、補充。リソースは赤赤。まずは戦場Aに《火口》」
戦場カードだ。効果は戦闘前にその戦場の全員に2ダメージを与えるというもの。
戦場カードに色はない。つまり、色対策カードでは防げない。
「《マッハ》を戦場Bに移動。あれえ? このまま逃げ切れちゃう〜? 2枚セットで中央経路へ」
「侮るな、そちらはもう手札がなくなる。速攻以外に勝ち目が無いのは理解しているだろう」
そうだ。最初さえ耐えきれば勝てない相手ではない。
ボクはカードを1枚セット。まだ二ターン目だ。焦る必要はない。どうするべきかは『運命潮力』が知っている。『運命潮力』の導くままに動けば間違いはない。
「ドロー、補充、リソース赤赤赤よぉ。もしかしてぇ、『運命潮力』で勝ってるから負けないとか思ってるぅ?」
マッハの言葉に、ボクの脳裏に羅睺の顔が過ぎる。ボクに勝利した時の、哀れむような表情が。
「当たり前だ」
「ふふ……使い方も分かってないのにぃ?」
最初にもそんな事を言っていたが……ボクはマッハを睨み付けた。『運命潮力』は流れる川のようなもの。利用なんてできるものではない。
個人の意志で運命を動かそうなど、傲慢というものだ。
「戦場Bに移動させたカードを表にする。《白岩山羊》。《音速の女神マッハ》と2枚で戦場Bを制圧」
やはり『運命潮力』はボクの味方だ。
戦場Bが二点戦場だった場合、この時点でゲームが終わっていた。まだまだここからということだ。
「裏のカードを戦場Cに移動してターンエンドよ」
「…………追加のセットは無しか。エンド前に《盾の天使》表にする」
スペルなどの対象になると防御力が上がる天使だ。火力で排除するのは不可能に近い。
その分攻撃力が低いのが難点だ。《音速の女神マッハ》はおろか《白岩山羊》すら倒せない。
「ドロー、補充、リソースは白白白。1枚セットし、《盾の天使》で戦場Bを攻撃。《突撃司令》を表にする」
《音速の女神マッハ》は『庇護』スキルを持つため、対象にするならコストが追加される。
しかし《突撃司令》の対象は戦場。防衛ユニット全体にダメージを与える。《音速の女神マッハ》を倒すには至らないが、足りない分は《盾の天使》の攻撃力が補填する。
「あら〜、それだと《音速の女神マッハ》も倒れちゃうわねぇ。それは困るわ。《地獄火》よ」
「《地獄火》?」
防御力への修正を無視する大型除去だ。これでは《盾の天使》も耐えられない。一回戦で《捧げられたウォーデン》を焼いた、マッハの対大型火力だろう。
しかし、マッハの場のカードが《音速の女神マッハ》だけになった。これから巻き返す!
「1枚セットでエンド」
「わたしの番ねぇ、ドロー、補充、リソースは赤赤赤でぇ……どうしようかなぁ〜」
考え込むマッハに、ボクは少からず安堵した。考える。それはつまり、やはり『運命潮力』においてはボクの比ではないということ。
考えるなんて必要ない。全て『運命潮力』の導きに任せれば間違いは無い。
「セットして即表にするした《龍信仰のシャーマン》西経路へ」
『魔術:』スキルを有するユニットだ。だが、手札が少なければ火力を警戒する必要も減る。
「《爆風波》」
「無駄打ち立ったな。《無慾の天使》を表にする」
《無慾の天使》は制圧に使用できない防御力偏重のユニットだ。貴重な火力をを無駄打ちしたな? そろそろ限界も近いのだろう。
「《音速の女神マッハ》を戦場Cに移動してターンエンドよ」
「やれやれ、だいぶ暴れてくれたな……そろそろそのお転婆には御退場願おうか」