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真夏の雪は融けるが定め その01


「賞金賞金二万円〜! 猫魂(ねこだまし)さん何買うよ? 俺は夏休み遊ぶ資金かな〜」


 無事に予選をした俺たち。昼休みの間に体育館は片付けられ、ど真ん中に二つ並んだ長机と、その周辺の観客席にセットされ直していた。

 本戦のトーナメント表をみる限り、我ら『チーム猫を讃えよ』と大稲(だいな)デイヤの『チーム・ダイナミック』が当たるのは準決勝。つまり一回戦を勝ち抜けば目標達成だ。


 俺と猫魂さんの目的は、大稲に強さを見せること。『向こう側』関係は当事者ではない。

 布田(ふた)の『布田研究所』はトーナメント表の反対側なので、当たるとしても決勝戦だ。


 マカラへのリベンジは今日はできそうにないな。つーか、ソーマの『アズラーン暴露』をどうにかしないといけないのか……。

 一回戦は二試合同時進行。俺たちは第一試合。大稲たちは第二試合。対戦相手のデッキを見て、サイドボードの時間がある。


「ケーくんさぁ、緊張しないの……? みてる人たくさんいるんだけど……」

「三百人くらい? やべー、むっちゃドキドキするー」


 借りてきた猫みたいに毛を逆立てて、周囲に細かく目線を投げる猫魂さん、猫耳カチューシャも伏せっぱなしだ。


「わたしもわたしも〜、胸がドキドキしてるの、触ってみるにゃん?」

「そういうのは人目のない所でお願いします」

「じゃぁ、試合後にトイレに行きましょぉ……」


 試合後は次の試合のために対戦相手の偵察だよ。隙あらば下ネタぶっ込んで来るのやめてもらえませんかね? 隣にいるのが恥ずかしいから。 


「マッハさんは、普段とそっちのどっちがホントなの? マジでマジで」

「あらあら〜? いつもは思っても口にしないだけにゃんよぉ」

「普段から考えてるのね……知りとうなかった……」


 肩を落とす猫魂さん。緊張はほぐれたかな? 対戦相手のチームが反対側に立つ。『雪組』。無駄に雅だな。

 ちなみに『花組』『月組』もある、雪月花かぁ…格好いい。うちは『猫を讃えよ』だもんな……。


「今気付いたんだけど、猫耳カチューシャもう一個ないの? 俺だけ付けてないと逆におかしくない?」

「あるよ、ほい」

「あるのか……」


 三毛猫耳カチューシャを装着。猫ちゃんだぜ文句あっか!?


 ちなみに相手チームは雪とはまるで無関係。リーダーは赤いレザー系なボディコンお姉さん。キツい顔立ちでウェーブの金髪。

 …………95のF。いや待て、あの人知ってるぞ。


 残り二人はデカくて筋肉質のスキンヘッドと、表情のない小太りのおじさん。

 スキンヘッドは黒革のベストでコワモテなんだけど……ヒール込みのマッハの方がデカいんだよな。


 そして、やけに無表情なおじさんの方が百倍怖い。


「あらら〜? 袖搦(そでがらみ)さんじゃないのお。ここ最近ご無沙汰じゃなぁい、寂しかったのよぉ」

「なんだアンタ……!」


 シナを作っておじさんに声をかけるマッハをボディコンおねーさんが激しく睨む。


「なになに、知り合い? あ、YUKIさんどうも。猫魂さんマッハ、あちら雨宮さんの所のYUKIさん」

「え、あれ……晴井(はれい)くん?」


 険悪になる前に俺は頭を下げた。毒気を抜かれるボディコンおねーさんことYUKIさん。

 普段はもうちょっと落ち着いた服装なんだけど、今日はやけに派手だな……本人の趣味は実はこっち?


「ああ〜、『実力派女子大生プロ』の?」

「それ、『実力派JDプロ』の」

「それやめて……」


 雨宮さんのプロチームのホームページで付けられていたキャッチコピーに顔を覆うYUKIさん。文句はチームの方に言ってくれ。


「おうテメーら。ワシを無視すんなや!」

「ああ、よろしくね。ええと……かないさん?」


 名札には金居とある。スキンヘッドは歯をむき出しにして俺を威嚇(いかく)


「『金居(ノコ)』だ! あんまり舐めてんじゃねぇぞ!

 ノコギリで斬られた傷がどうなるか教えてやろうか? 断面がズタズタになって縫うこともできずひでえ跡が残るんじゃい!」


「あれでしょ? 穴に埋めるやつ」

「ちなみにイザヤは逆さ吊りで真っ二つにされたっぽい。エグ〜」

「うるせえうるせえ! 訳わからん!」


 俺と猫魂さんの答えに怒鳴り散らす金居。なんだ、拷問とか残虐処刑の話じゃないのね?

 でも怒鳴るのはやめてほしいな、怖いし。


「マッハ」

「何かしら〜」

「猫魂さんが怖がるから怒んないでね」

「ちぇ〜」


 金居は身体はデカいがキャンキャン吠えるチワワみたいだ。マッハに比べると威圧感があまりに少ない。


「ちなみに猫魂さん」

「なにかな?」

「YUKIさんは引きの良さとプレイングの妙で一目置かれるプロゲーマーで、デッキは恐らく最新型の『カルマノリス』だから」


「おおっとケーの字、するってぇとなにかい? 目玉が飛び出るほど強いってことかい?」

「そうですね」

「ふぇぇん」


 その分俺とマッハで勝つしかない。それにしても、金居は見たことないけど、あっちのおじさんは見覚えあるんだよな……。


「なんじゃいこのヒョロガリ、ワシに勝てるつもりかよ」

「カードは筋肉でやらないからね」

「抜かしやがる」


 何にせよ、俺の相手はこの金居だ。

 さあ、楽しもうぜ。カードゲームは楽しまなきゃな!



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