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反省戦 その02


 猫魂(ねこだまし)さんが買ってきたのは、先週発売の新しいパックを十パック。封入率を考えるとハイレアが出たら儲けもの。

 『デュアル・ディメンション』は赤青黄色緑紫茶色白黒の八色が存在する。ハイレア以上でも狙った色のカードが出るとは限らない。


 さらに、欲しい色でも使ってるデッキと相性が良いとは限らない。

 つまり当たるも八卦当たらぬも八卦。ニーチェ先生も『運命を肯定しそれを愛せよ』って言ってる。


 いや、理屈はいい。

 パック開けるの楽しいじゃん!!


「あ、猫ちゅぁ〜ん! 可愛いでちゅねぇ、うちの子おなり〜」


 早速ハイテンションかつとろけきった表情の猫魂さん。パックを開けるために筆箱から小型のハサミを出していた。

 猫のカードだけより分けてスリーブに入れる、レアリティとか気にしない。少し分かって来たぞ。猫魂さんという人が。


「《紳士猫(ジェントルにゃん)》?」

「それ。あ、これがサーチ?」


 猫かどうかが第一で、能力は二の次。俺は猫魂さんを尊敬した。そうあるべきだ。俺も、強さなんて二の次で、おっぱいを強調したカードだけでデッキを組むべきだ。それが愛ってものだろう?

 《エスコートする紳士猫(ジェントルにゃん)》は燕尾服を着てダンスに誘う猫フェイスの紳士だ。その表にしたオープン時能力は山札の上から7枚を見て、猫を選んで連れてくるというもの。


 戦闘力も低くなく、強い猫を引っ張ってこれる。まさに猫魂さんに必須の猫だ。


「アンコモンだから4枚まで入る。俺の方にも出てたような……」

「いたいた! 昼に見たもん」


 カードを取り出すと、紫の山の一番上に猫が固められていた。これには俺も苦笑い。いや、欲しいカードがあったらあげるって言ったけどさ。


「2枚ある、どうぞ」

「いいの?」

「報酬はもう貰っていますので……」


 そう、猫魂さんのその笑顔。いや、ごめんなさいそんなキザな事言えないし、そもそも嘘だし。

 今日一日で何度谷間を、乳揺れを、ブラチラを見せてもらっただろう。谷間33回乳揺れ12回ブラチラ8回だ。ありがとうございます。ありがとうございます。


「冗談はともかく、俺も欲しいカードあったら言うよ」

「オッケー、ありがと!」


 俺の下心など知る由もない猫魂さんの笑顔が眩しい。


「コモンの猫ちゃんはあんまり可愛くないでちゅね〜。このブサにゃん顔がなごむ〜」


 《セイレムの猫》はブサイクな猫が立ち話をする人間を指差すイラストだ。猫魂さんは分かってないが、かなりダークな猫である。

 表にした(オープン)時能力は、対象のユニットの種族を魔女に変える。これって有名な魔女狩りが元ネタか? ニャビゲイル・ウィリアムズってことか? ただ種族を変えるだけなので、早い話が猫魂さんみたいな種族デッキを妨害するだけのカードで……いや、待て。


 俺は、次々パックを開く猫魂さんを横目にスマホで検索した。

 《夏至のお祭り》《異端審問官》。何枚持ってたかな……?


「紫のレアげと!」

「猫魂さん持ってるね」

「《エルアライラーの詐術》……お互いの一枚を手札に戻す?」

「いや、どっちも猫魂さんが選べる」


 敵味方のユニットを一体ずつ手札に戻さなければならないが、対戦相手には大型ユニットを、こちらには再利用したいオープン効果ユニットを戻せばいいのだ。

 つまり……低コストオープン効果ユニットと、中型の『化け猫』で固めて……。


「最後のパック!」

「ここまでのレアは?」

「さっきの一枚だけ、ぴえん」


 まあ、封入率は封入率だし。でも十パック開けてレア以上が1枚だけだと爆死だな……。

 猫魂さんがハサミでチョンとパックの端を切り、目をギュッと閉じ……やっぱり薄目で見ながらカードを取り出し……出さない。


「一番奥がキラって見えんだけど幻覚?」

「俺からは裏向きだから見えないかな」


 それよりもプルプル震える猫魂さんと、当然揺れるおっぱいのキラメキに夢中だし。


「…………コモン、コモン、ハイレア、コモン」

「ちょwww」


 ハイレア出たらそれだけで勝利なのでは?? 俺なんて二ボックス剥いてハイレア2枚だったよ???


「紫ユニーク。《虚無守り(ヌルガード)の姫君》」

「猫魂さん殴っていい? いいよね?」

「イエーイ大勝利! ハイタッチハイタッチ!」


 引きの強さに苛立ちを覚えたのも束の間、ハイタッチは乳が揺れ……いや、視線を下げては怪しまれる。絶対揺れてるのに見れないってどんな拷問!?

 つーか、ユニークいいなあ! 羨ましい! しかも紫とか色も合ってるし、ずるくない? 酷いよな?? 可愛くて巨乳で運が良くておっぱい大きいとか人生勝ち組じゃね!!?


「あー、でも猫ちゃんじゃないかぁ」

「待って待って待って」


 スリーブに入れて横に避けようとする猫魂さんを俺は止めた。最新のユニークの情報くらい、俺はちゃんと仕入れている。だからその能力は知っている。

 黒いナイトドレスに身を包んだ隻眼の美女。つーかエロい。谷間からヘソまで見えるドレスだ。


「むっちゃ欲しい」

「要る?」

「いやダメだよ。猫魂さんのデッキに入れよう」

「えーでも5コスじゃん?」


 《虚無守りの姫君》はコスト5。つまり通常の方法では表にするオープンできないカードだ。

 この手のカードはカード自体にコスト低減方法があるか、何もないから別の方法でなんとかしろと放置されるかの二択である。


 《姫君》は前者。


「さっきの冤罪(えんざい)猫とシナジーある」

「《セイレムの猫》にゃん? マジだ……《魔女の使い魔》とか《サバトの黒猫》のためのカードだと思ってたし」

「…………?」


 悪魔か魔女が相手にいると《姫君》のコストは-2する。そうなると3コストで普通に表にするオープンできる。戦闘能力も非常に高く、同じ戦場の敵全体を永続弱体化でき、何よりも『スペル:紫紫紫』だ。

 ほとんどのスペルを無償で使える。これがお姫様のおっぱい財力ってこと? おっぱいブラックカードで支払いは王宮にってか!?


 などと考えつつも俺はスマホで聞き覚えのないカードを検索。《魔女の使い魔》《サバトの黒猫》。

 どちらも味方に魔女がいると強化されるコモンの猫だ。


 おいおいおいおい。これは面白くなって来たんじゃあないか?


「猫魂さん、このカード持ってる?」

「《夏至のお祭り》と《異端審問官》? 家探せばあるかも……」

「これと《姫君》を混ぜて、こういじって……」



明日はお休み致します。

日曜日に再開でーす。



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