晴井彗vs猫魂ケイト その03
「《高い買い物》」
「ほいほい」
「《掘り出し物市》」
「なにそれー?」
《人魚の歌姫》がたわわなるおっぱいで俺のスペルコストを無償化してくれる。いわゆるおっぱい減税だ。巨乳は保護されねばならない。減税対象になるのも納得だ。
2枚引いて2枚捨て、引いた《掘り出し物市》を1コストで使用。自分の山札を上から7枚見て、好きな1枚を手札に加える代わりに残りを捨て札に送る。
「来た……《幽霊強襲揚陸艦》」
「どれどれ……げこげこ!?」
猫魂さんが嫌そうな顔をした。
《幽霊強襲揚陸艦》は青の4コストユニットだ。コストはバカ高いが非常に高い戦闘能力を有している。そして、捨て札のカードを取り除くことでコストを低減できる。
「キモーい……やだ、半ナマじゃん……骨にしてよー」
「あ、ごめん。グロニガテなのね」
《幽霊強襲揚陸艦》はエグい感じのゾンビがたくさん乗っているのだ。
「カードをセットして、《精神の外科医》が戦場Bを攻撃。それに合わせて《幽霊強襲揚陸艦》をオープン」
「うっそ、よく見たら『強襲』持ちの4コスじゃん……デッカ。こんなの無理ゲ」
猫魂さん、イラストしか見てなかった事が判明。はっはっは、可愛いなあ!
ちなみに『強襲』は『味方の攻撃時に位置を無視して攻撃に参加できる』特殊能力だ。つまり、出したターンでも戦場まで直行するぞ。
「なおこの船、捨て札を4枚除去するとコストが1減る上にゾンビ駒が一体出ます」
「捨て札除去? 嫌な予感すんだけど……何枚あったっけ?」
「じゅうななまい」
「なんでそんなにあるし!?」
俺のデッキはいわゆる『墓地利用』だ。青は手札補充が得意だが、低コストのスペルは代わりに手札か山札を要求してくる。
それをバンバン使って、捨て札利用が得意な黄色で必要なカードを回収する戦法である。
ちなみに大会ではあまり見かけない。もっと有効な欲しいカードを探す手段がアレコレあるからである。
でも仕方ないだろ? 俺は金持ちじゃないから高いカードは買えないんだ。持ってるカードと安いカードで戦えるデッキを作るしかないんだよ。
なお《人魚の歌姫》は普通に強いので使用率高いけど、《精神の外科医》はどこで使っても能力確認されまーす。
誰も使って無いってことだな! たーのしー!
「…………」
「何かする? 何もしないなら《眠り猫》のダメージ精算するけど」
「ぐむー……!」
唇を噛んで唸る猫魂さん。しばらく手札と場を交互に見る。
紫というか、猫デッキならば場の猫を手札に戻し、代わりに手札から強力な猫が出てくる、通称『化け猫』カードもあり得る。
猫魂さんの手元にあるリソースは2。『化け猫』コストは表にするコストとほぼ同じか少ない位。攻撃特化カードならば《幽霊強襲揚陸艦》と相討ちにされるかもしれない。
しかし、こちらにはゾンビトークンが4体いる。トークンはカードではない戦闘用ユニットで、破壊されても捨て札にならないし、制圧枚数に加算されないという欠点があるものの、それ以外は便利な戦力である。
「うし、ここは諦める。《眠り猫》にゃんごめんね〜!」
「オッケー、一枚セットして中央に前進。あと《人魚の歌姫》の戦場Dに《関所》をセットして制圧。ターン終わります」
猫魂さんの目の色が変わる。俺のリソースは0、妨害はない。キリリとした表情と引き締まった口元、勢いをつけてカードを引く。見たか? 見たよね? 俺は百万回保存した。
俺の動体視力はその瞬間をスーパースローカメラのように見逃さない。ドローの勢いで胸がぱよよんと揺れた。揺れたのだ! 乳揺れドロー強い!
「2枚セット、右経路へ。《長くつ下》ちゃんを左経路に移動」
大型ユニットの脅威はあっても、制圧点ではまだ猫魂さんが有利だ。戦闘力に劣る《人魚の歌姫》を《長くつ下の猫》で狙いつつ、誰もいない戦場Aに新しいカードでプレッシャーをかけてきた。
判断が早く、的確だ。巨乳で可愛くておっぱいが大きい上にガッツがあるとか最強過ぎない? 最高ですね。
「ターン貰います。ドロー、補充、リソースは青青黄色。まず《人魚の歌姫》を経路に下げて《精神の外科医》で戦場Bに《カタコンベ》」
これで2対2。
「《衝動》で《掘り出し物市》」
山札を上から4枚見て、好きな1枚を選ぶスペルと、7枚見て一枚選ぶスペルを即プレイ。《人魚の歌姫》愛してる。本当はこの素晴らしいおっぱいを並べたいが、『魔術:』能力は重複しないので惜しみながら捨て札へ。
「ケーくん、山札半分くらいになってない?」
「つまり欲しいカードが出やすいってこと。《棺の女王》を表にする」
黄色の1コストカード《棺の女王》。ガイコツの群れの中心でセクシーに踊る巨乳だ。揺れて弾むおっぱいに導かれるように、捨て札の2コスト以下のユニットを呼び出せる。
ちなみに呼び出されたユニットは夜明けと共に灰になる。散文的に言うとこの戦闘でしか使えない。
「呼び出すのは《嵐の精霊》。このユニットが戦闘に参加した際、全てのプレイヤーは手札を全部捨てて、捨てた枚数引きます」
「あっ、えっ!?」
猫魂さんが固まった。金魚みたいに口をパクパクさせて手札と《テンペスト》を見比べる。しかしいくら見比べても効果は変わらない。
猫魂さんは勝ちを諦めていなかった。恐らく勝利の筋道が見えていた。それだけの手札が揃っていたのだろう。
しかし、それが《テンペスト》によって吹き飛んだのだ。
恐る恐るカードを引く猫魂さん。ガクリとテーブルに突っ伏した。代わりの手札では対処のしようがなかったのだろう。
「負けたー」
「対戦ありがとうございました」
「ありがとー……うわ、強いー」
天を仰いだ猫魂さんだったが、すぐに微笑んで尊敬の眼差しを向けてきた。おいバカやめろ。やめないで、可愛すぎる罪で惚れちゃうでしょー!?