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晴井彗vs猫魂ケイト その02



 2ターン目、戦場Cに到達した猫魂(ねこだまし)さん。

 『デュアル・ディメンション』では最初のターンはリソース1。次のターンはリソース2。以降は毎ターンリソース3が支給され、これらは持ち越しできない。


 持ち越し可能なリソースは、5ターン目と、それ以降の奇数ターンに獲得できる他、一部のカードの効果で獲得できる。これは今は関係ないので置いておこう。

 つまり、2ターン目も行動の選択肢は少ない。これが重要。バストの次に重要だ。


 各カードにはコストがある。それは表にするのに必要なリソース量である。カードコストは0から5。4と5はつまり通常の方法では表にできない。極めて強力なカードだ。


「《月夜の斥候》にゃんを表にするオープンしますにゃん」

「どうぞ」


 ユニットの能力は『表になったオープン時に能力を使える』タイプと『戦闘開始時に使える』タイプ、そして常時発動タイプに分けられる。

 猫魂さんが今使ったのは、コスト0の黒猫ちゃん。


「猫魂さん、猫好き?」

「むちゃむちゃ好き。目に入れても痛くないぜベイベー」


 そう言って見せてくれたのはスマホの待ち受け。猫を抱っこする猫魂さんの顔面というか両目を完全拒否の猫が押している。目に入れても痛くないの意味が違う気がする。

 俺は笑いながらも、その視線はキャミソール姿の猫魂さんに向いていた。横乳見えてる。最高。この写真マジで欲しい。


 コスト0はいつでも表にできる。能力は控えめだが、弱いカードにも重要な役割がある。

 戦場を制圧(ドミネート)する方法は二つ。そのターン開始時から一体以上自ユニットのいる場所に『戦場カード』を置くか、二体以上の自ユニットのいる戦場に制圧(ドミネート)宣言をすること。ユニットが足りないと制圧できない。つまり勝てない。


 ユニットがいないと、勝てないのである。


「《月夜》にゃんの能力で、この戦場を見るよ」


 勝利条件は三戦場の制圧(ドミネート)だが、実は四つの戦場には一つだけ戦場二つ分になるボーナス戦場(ダブル)が混じっている。

 これは完全にランダムで、ゲーム開始前に戦場カードをよく混ぜてから裏でセットする。当たり前だが、そのダブルをどう見つけてどう制圧するかが勝利の鍵となるのだ。


 猫魂さんは戦場カードを確認し、ちょっと悩んだあと、手札を二枚セットして中央経路に進めた。戦場に入っただけでは制圧(ドミネート)できない。制圧条件はターン開始時に自ユニットがいること。である。

 対戦相手に攻撃や妨害をされずに維持したという事が重要なのである。


「ターン貰います、ドロー。補充(リフィール)。リソースは青青。《人魚の歌姫》表にするオープン。カードセット、0コストの《精神の外科医》を即オープン」

「なにそれー?」


 乗り出してくる猫魂さんにカードを見せる。うひよー! 谷間! 重力で下を向いたおっぱいが、いつもよりも暗く深いおっぱいバレーを作り出す、それが目の前に! しかも髪の毛からいい匂いがする。シャンプー何使ってんのかな!?

 俺はおっぱいの谷間の奥の暗闇に希望の光を見出しながら説明する。


「誰かが手札を捨てた時、山札からも一枚捨て札に行く。こんな風に」

「げぇー、ケーくん手札破壊(ディスカード)系?」


 テーブルにおっぱいを押し付けながら、俺が出したカードを見る猫魂さん。テーブルになりたい。そのつぶれたおっぱいの形を堪能したい。可能ならば支える仕事に就きたいです! 仕事言ったが嘘だ。お金は払う側で構わないぞ。


「そっちもやるけど、今は手札補充(ドロー)系。《高い買い物》」


 俺が使ったのはスペルカード。特殊な効果を得るカードだ。《高い買い物》はカードを2枚引いて2枚捨てる。《高い買い物》自身も含めて、手札の総量は減る。しかし、要らないカードを減らして山札(デッキ)を圧縮するのは有効な手段だ。

 もちろんスペルカードにもリソースが必要になる。《高い買い物》のコストは青のみ。


 スペルカードも戦場にセットできる。この場合セット時に任意リソースを消費するので複数色でも色拘束が少ないのと、相手のターンでも使用できるのが魅力だ。

 他にもスペルカードは、『魔術:』スキルを持つユニットがいる場合コスト削減ができる。そう、俺のたわわなおっぱい……もとい《人魚の歌姫》の能力だ。


「2枚引いて、2枚捨てて、山札を2枚削る。《精神の外科医》を中央経路に進めて終わり」

「んー?」


 猫魂さんが首を傾げる。俺がなんで自分に不利な動きをするのか分からない顔。


「まいっか」


 ユニットを進める猫魂さん。


「じゃあ、《長くつ下の猫》ちゃんをオープンして《月夜》ちゃんと二人で制圧しちゃうよ! いえーい、ダブルダブル!」


 《長くつ下の猫》は特殊能力が無い代わりに戦闘能力の高い1コストの猫。これは猫デッキ。あまり大会とかでは見かけない、いわゆる好きなカードで(ファン)楽しむ派(デッキ)だ。

 しかし……異様に展開が早い。ボーナス戦場(ダブル)だった戦場Cが制圧され、もう一枚の猫が戦場Bへ、猫魂さんが戦場カードを持っていた場合、対処できなければ俺の負け。


 戦場Bにて表にする(オープン)されたのは《眠り猫》攻撃力は無いが頑丈な防御型の0コストだ。

 俺の《精神外科医》も攻撃力が無い。次のターンが勝負の分かれ目となる。


「うへへ、いい感じでターン終わり」


 リソースを二つ残して終了する猫魂さん。セットしていないスペルは相手のターンには使えない。つまり、スペルではない何らかの手段があるのだ。


「ターン貰います」


 俺は考え込んだ。フリをして勝利を確信してニマニマ笑う猫魂さんを堪能した。優越感で輝く瞳、緩む口元、可愛いが過ぎる。

 猫魂さんは紫単色、であるなら使うスペルは除去か打ち消し(カウンター)。『アルメ』において『確定除去』カードは少ない。ダメージか、相手の攻撃力参照か、コストを参照する。つまり、大型で高コストのユニットは除去されにくいのだ。


 そういうカードの除去は裏向きの内に行うのが常道である。裏向きのカードを対象にされた場合、コストが払えなければ除去できる。

 俺は戦場を確認するフリをしながら店内の照明で照り返す猫魂さんの胸を凝視(ぎょうし)する。この時間が永遠に続かないかな?


「ドロー、リソースは青青黄色」

「あ、二色デッキなんだ」

「実はね」


 ストローを咥えて余裕綽々コーラを吸う猫魂さん。リソースはターン開始時に補充される。補充色はゲーム前に決定した固定色である。

 つまり、俺のデッキでは青の高コストカードは使えないし黄色のカードも安いものしか使えない。ただし、色が多い分戦略の幅も広がるのだ。それよりも重要なのが、色んな色のおっぱいカードが扱えるってコトだけど。


 ただ、残念ながら《精神の外科医》は背中の曲がったおっさんで、腕の代わりにマニピュレーターを蜘蛛みたいに生やしている。

 俺は、勝たねばならない。勝って強さを見せつけて尊敬されて、この特等席でおっぱいを見る時間を一秒でも増やさなければならなかった。


 ニーチェ先生も言っているだろう?

 『おっぱいの無い人生は誤謬(ごびゅう)である』ってさ。


 つまり? 俺の今までの人生は誤謬だったってことだ。う、うるさい!


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