晴井彗 その08
ものすごくいい夢を見た。
昨日の余韻冷めやらぬままにドチャクソエロい夢を見ていたら、いつの間にかその相手と『アルメ』で遊んでいた。気が付くと相手は乳母崎さんに変わっていて、俺たちは笑いながら遊んだ。
乳母崎さんはいつも通り罵倒を繰り返しながら、それでも嫌そうではなかった。本当に、ものすごくいい夢だった。
俺は用意された朝飯を食い、昼メシ代を財布に突っ込んだ。今日は乳母崎さんが昼メシを持ってくるなと言っていた。
これは期待していいのかな? いいんだよな? スマホを確認するとRAILが来ている。
【さきうば:おはようございます。弁当など初めて作った。死にたくなければ味の期待はするな。】
【ハレ:おはよう! やったー! すげー楽しみ!】
【(跳ね回る犬のスタンプ)】
女の子に送れるスタンプの手持ちが少ない。アニメのマスコット系はかろうじて使える。後で可愛いやつでも購入するかなー。猫かクマか。
【さきうば:期待するなと言った。目が腐っているのか】
【(プンプン怒るクマのスタンプ)】
やべー、かわいいー。
そういえば会ったばかりのおっぱいの大きい後輩女子と、おはようとおやすみのRAILして、しかもお弁当作ってもらえるとか。俺は前世でどんな徳を積んだのだろう。
もうひとりからもRAILが来ている。【マッハさんが写真を添付しました】こえぇ……。
ちなみにシスター・マナミは本名らしく、真波だからハンドルネームがマッハだと昨晩RAILを交換した時に教えてくれた。
【マッハ:おはようハレさん(ハート)朝の自撮りを送るから使ってね(ハートハートハート)】
【(ピースサインで目とトップを隠した半裸の自撮り)】
禁欲とは……?
俺は写真をパソコンに転送してから、スマホから念入りに消した。何らかのタイミングで乳母崎さんや猫魂さんに見られたら腹を切るしかなくなるだろう。
【ハレ:おはようございます。迷惑なんでやめてください】
嘘です。ごちそうさまです。秘蔵のフォルダに入れて、バックアップも取って保存します。お願いできるなら毎朝でもお願いしたいです!!
だが昨日みたいに調子に乗られると厄介なので、冷たくしておく必要があった。苦渋の決断である。
えっちな自撮り……ネットに転がっているやつじゃなくて、俺だけに送ってくれたやつ……シスターは女神かな??
しかし、今はそのセクシーショットを隅々まで堪能していい状況ではない。俺は気を鎮めると、学校に向かうことにした。徒歩十五分、電車で三駅、そこからバスで十分が、俺の登校ルートである。
…………シスター・マナミ。田草真波。十代でグラビアアイドル、今現在は中規模の事務所でキャンペーンガールとかモデルをやっている。ネット上のプロフィールだと二十九歳でバスト98のHカップ。
こういうのって、少ない方にサバ読むこともあるんだ。でも年齢は逆算すると三十一なのでそこはお口にチャックをしておく。
俺は昨晩、シスターのデッキについて調べ、そのついでにシスター自身についても調べさせてもらった。
彼女のデッキには、不審な点があった。いやちょっと違うな。非常に珍しいカードが含まれていた。
それを指摘すると、シスターはこう答えていた。
「『運命潮力』があるなら確実なんだけどぉ……ないのにこれ使って失敗したらおマヌケでしょ〜?」
《音速の女神マッハ》。大会優勝者限定の極めて特殊なプロモーションカードだ。 限定プロモーションの箔押し、通常とは違うイラスト。そのイラストは真赤なバイクに乗った、黒いライダースーツに赤いビキニの爆乳美女。両肩から炎の翼が生えている。
グラビアアイドル時代の、シスターそのもの。
調べてみて分かったのだが、シスターは十二年前にグラビアアイドルとして『アルメ』のキャンペーンに参加しながら、同時に一般参加者としても大会に出場。
得意の赤単でトーナメントを優勝して、世界に一枚しかないキャンペーンガールイラストカード。つまり自分のカードと賞金五百万円を掻っ攫っている。
それから三年間は様々な大会で上位あるいは優勝していたのだが、突然引退。
その後は今現在に至るまで公式大会に出場記録なし。
約九年間の沈黙を経て、なぜこのタイミングで? そりゃ……昔から『向こう側』とか『運命潮力』とか、『そういうもの』と関係していると見るのが自然だ。
そして一昨日布田があーだこーだ言っていた、『災厄の扉』がどうこうという問題とも。
…………しかし、俺が一番気になることは、それらと乳母崎さんがどう関係しているのかだ。
乳母崎さんが関係するからシスターは動いている。それは間違いないだろう。




