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晴井彗vsシスター・マナミ その02


晴井(はれい)さん、好きよ」

「ごふっ、ゲホッゲホッ……うう……うぐぐ、ぐすっ…………そんな言葉が効くと思ったら大間違いです」

「ごめんなさい、わたしが悪かったから泣かないで……」


 泣いてないし。

 女性から始めて……いや、初めてじゃないのか。そうか。あっちもからかい目的だったかもしれないけど。とにかく好きと言われて嬉しいより情けない。泣いてないし。


「とりあえず、俺は正気になりました」

「やり過ぎちゃったかぁ〜。でもね晴井さん、そんなこと言ってられるのは若いうちだけよ。オトナになったら絶対後悔するから、今のうちに五十発くらいしておきましょ〜?」

「多い多い多い」


 完全にただれた生活に耽溺(たんでき)してる回数じゃないか。いいな……桃色の夏休みが待ってる……。


「ドローして、補充(リフィール)。リソースは全部赤。まずはカードをセット、表にする(オープン)。《龍信仰のシャーマン》」


 来やがった。赤の『魔術:』持ち。ただでさえ低コストな赤火力が、さらにお手軽価格にされてしまう。


「もう1枚セット、こっちもすぐにオープンよ〜。《飛びかかる猛犬》が攻撃(カチコミ)よ」


 『襲撃』持ちの狼! 中央経路にいる裏向きのカードと2枚で、《友好的な商人》に……カチコミ? 今カチコミって言いました?


「スペル表にする(オープン)。《紅蓮の鞭》』

「ゲェ〜!? 昔から人気だったのね!?」


 《紅蓮の鞭》は表向きのユニットにしか使えない除去なのだが、同じ戦場だとダメージが増える。白兵戦用火炎魔法って感じかな。こちらも現役で活躍中だ。

 戦場カードで戦場Aを制圧(ドミネート)され、俺のターン。


「ターン貰います。ドロー、補充(リフィール)、リソースは青黄色黄色。

 《精神の外科医》を表にする(オープン)

「見せてもらっても?」「どうぞ」


 手札を捨てた時、山札も削れる常在能力。即座にその危険性に気付いたらしく、シスターの柔和な顔に緊張が走る。

 つーか、初見で《精神の外科医》に警戒できるって、どんな観察眼だよ。やめてよ。プロゲーマーでも見逃してくれるんだぜ?


「もう1枚表にする(オープン)。《高い買い物》」

「わたしではなく自分に?」

「はい。2枚引いて2枚捨てて山札を2枚削ります」

「待って」


 シスターの厳しい静止、俺が捨てた《嵐の精霊(テンペスト)》を見咎める。効果を確認して嘆息。

 戦闘開始時、全てのプレイヤーは手札を全て捨てて、同じ枚数カードを引く。


「これ、今の流行り?」

「いいえ、俺しか使ってないんですよ。自分の手札も捨てるんで」

「でも、晴井さんにはデメリットにならない、と」

「そういう事です。1枚セットして攻撃」


 踊れ俺の《棺の女王》! 捨て札から立ち上がり踊りだす《テンペスト》。俺の手札は6枚、シスターは5枚。捨てて引き直し、さらに山札を削る。


「こんなにいっぱい……すごぉい」


 山札が削れた枚数の話だ。


「終わりです」

「わたしの番、ドローして、補充(リフィール)して〜」


 シスターが小首をかしげる。少女のような仕草。俺より身長あるゴージャス美女なのに似合うってバグじゃね?


「やっぱり、ユニットよね〜?」

「どうでしょう」


 赤の最大の弱点は、場にで出されてしまった大型ユニットの排除が不得手という点である。

 高コストの火力スペルが存在しないという訳では無いのだが、いかんせんコストパフォーマンスが悪過ぎる。


「《火花走り》を使うわね〜」

「2コスト支払い、オープン《地下図書墳墓の主人》」


 迷わず表にする(オープン)。これこそが俺の切り札の一つ。死体の代わりに秘本が死蔵された巨大地下空間、その女主人のお出ましだ!


「え……うそ、すごぉい。こんなにおっきいの〜!?」


 《地下図書墳墓の主人》の攻撃力防御力の話である。


「あぁ……火傷しちゃいそぅ〜」

「《地下図書墳墓の主人》の攻撃力防御力は俺の捨て札のスペルカードの枚数に等しい。現在は15/15」

「でも、(たくま)しいのは今だけでしょう?」


 そう、各ターン終了時に、《地下図書墳墓の主人》は本棚の本を食べてしまう。1枚ずつゲームから取り除かれて、勝手に弱体化してしまうのだ。


「それよりも早く捨て札を肥やせばいいんですよ」

「モノはご立派だけど……ちゃんと入れられる?」


 対処できない大型ユニット相手にどうするか。最も簡単な手段は放置である。倒せないのならば、そのユニットのいない戦場を攻めればいい。

 そう、『デュアル・ディメンション』の勝利条件は戦場の制圧(ドミネート)か、山札を0にすることであるのだから。


 どれだけ図体がデカくても、移動系スキルが無ければ逃げ切れる。現に《地下図書墳墓の主人》は中央経路に居るので、《疾走する狼》が制圧している戦場Aには向かえない。戦場Dも同様だ。


「今のうちにその《精神の外科医》を排除しておくわね〜」

「お、《雷鳴》。それ現行だと使えないんですよね」

「あら、やめておく?」

「そうじゃなくて、代わりにいいカード探さないと」


 赤は(うと)いので色々調べないとだな。赤茶にする訳にもいかないだろうし。

 帰ったらカードリストひっくり返す所からスタートだ。


「うふふ、ありがと〜」

「?」


 俺の戦場は残り《地下図書墳墓の主人》のみ。ここが勝負の天王山。残る問題は、シスターがどこまで危険を理解しているか。


 あと二ターンで(・・・・・・・)俺が勝つ(・・・・)


 

 残る問題ほシスターの非常に鋭い戦闘勘。

 さあ、他の全てをかなぐり捨てて、チキンレースと参りましょうか!



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