シスター・マナミ その01
「晴井、ゴージャスな美人がお前を待ってるアルヨ?」
「御冗談を店長。俺にゴージャス美女の知り合いがいるもんですか」
「そうアルネ、不思議ヨ」
エセ中国人(生まれも育ちも神奈川県金沢市)の店長に言われて様子を見ると、店の前にワゴン車が停められていて、確かにゴージャス美女という他ない人物が立っていた。
腰まである蛇のような光沢の長い黒髪、大きなサングラスとピアス、赤いルージュを引いた肉感的な唇。
血のように赤いチューブトップのワンピース、丈はマキシだが凄まじく際どいスリット。全身を飾るゴールドのアクセサリ。
なにあれ? コスプレ? 露出した両腕にファイアパターンの入墨、しなやかで鍛え上げられた筋肉。
口にはタバコ、俺とは絶対違う世界の人間だ。
ああ、でもチューブトップを内側から破壊せんばかりにみちみちに詰まった胸を見よ! 鍛え抜かれたアスリートのような肉体故に、アンダーは80近い。だからこそメートルを大いに超越したスーパーバスト。
その大きさは小玉メロングレードな猫魂さんと同等かそれ以上。なんてえっちな肉体してやがるんだ……!
「ちょっと話を聞いてきますね〜」
「後部座席シェードかかってるヨ? 誘拐されないアルカ?」
「誘拐されたら通報お願いします」
俺はおっぱいに引き寄せられる蛾のようふらふらとゴージャス美女に近付いた。デカい。見上げる大きさ。180センチはあるぞ?
彼女は俺に気付くと、咥えていたタバコを片手に、紫煙を吹き出した。そして咳払いを一つ。
「こほん。晴井さん、ごめんなさいね〜。九時までだって聞いたから迎えに来たのだけれど、少し早すぎたかしら〜?」
ぽやんとした声が飛び出した。え? ちょっと外見と違いすぎる。脳が破壊されそう。待て、そこじゃない。
「…………シスター・マナミですか?」
「はい。実はこっち……モデルが本職なの〜」
俺は言葉をなくした。元からデカいけどヒールか? いや、それよりも普段は厚手のシスター服に身を包んだ穏やかな雰囲気なのに。マシュマロ系ふわふわぽっちゃりボディで、胸も尻も太ももも太ければ太いほど良いタイプだと思っていたのに。
長身アスリートゴージャス美女が出てきちゃった…………脳が、脳が破壊される……!
「少しお話がありまして、家まで送りますよ〜?」
「ええと……」
俺は少し悩んだ。これから帰りは電車と徒歩だ。送ってもらえるならそれに越したことはない。ないけど。
いや、夏の夜はじっとりと暑い。仕事で疲れた身体をエアコンの効いた車で帰れるのは嬉しい。知らない相手でもないし。
「五分で支度します」
「ゆっくりで良いですよぉ〜」
ゴージャス&ド派手な外見とほんわかした間延びボイスのギャップでクラクラする。
「店長、知人でした」
「なら良かたアルヨ」
そんな訳で帰り支度をさっと済ませ、俺はワゴン車の助手席に乗り込んだ。シスターはタバコを携帯灰皿に押し込み、運転席へ。
イメージ的にはスポーツカーの方が似合いそうな外見だが、普段のシスターなら便利なワゴン車だ。どっちかにしてくれ。
「ベルト締めてね〜」
「はい」
答えながら、俺はシスターの安全を守るシートベルトになりたいと思っていた。凶暴なそのバストを見事にスラッシュ。
チューブトップの上面はおっぱいで平ら。今にもたわわに弾けそう!
「色々聞きたいことがあると思うんだけどぉ〜、まず晴井さんの一番聞きたいだろう事から答えるわねえ」
カーステレオなどはなし、低いエンジン音、シスターの甘いコロンと汗、タバコの匂いが混じって脳が痺れる。そこに甘く囁くように。
仕事の話か、なぜ迎えに来たのかかな。
「108のIカップよ」
「うぉっ!?」
俺は驚きと感嘆の声を上げた。シスターのバストトトカルチョでは108のHと予想していた。まさかのI! えっち以上!
つーかIカップってことはそのバスト、30センチもあるってことでしょ!? わけわからん! けしからんデカさだ! 素晴らしすぎる。
「わたしのお願い聞いてくれたらぁ、この胸を好きにしていいんだけ「何でも言ってください」
俺は食い気味で答えていた。俺自身の意思など関係なく、即答だった。だって仕方ないだろ? この! メートルおっぱいを! 好きにしていいって言われて冷静でいられるか? そんな奴は男じゃないね!
「いや、待って待ってください。なんでそうなるんです!?」
「うう〜ん、話すと長くなるから、時間ある?」
「あります」
まあ、明日も学校だけどなんとかなるなる!
「じゃあ〜、ホテルで一汗流してから、ゆっくりお話するぅ〜?」
「…………からかってます?」
落ち着け。落ち着け。衝撃的な視覚効果。甘く囁く聴覚への攻撃。脳を痺れされる嗅覚への刺激。もはや五感の六割を支配されている。抵抗なんて無意味だ。これで吸った揉んださせてくれたら五感全制覇だぜ! 落ち着けるか!!
「学校とラコちゃんにはヒミツよぉ?」
「か、からかってますね?」
これはもうダメ。口ではなんと言っても身体は正直。後一押しで陥落するので早く押してくださいお願いします。
いや、お願いしたいと同時に乳母崎さんの名前が出た所で押し止められる部分もある。乳母崎さんのおばさんのおっぱいなんて揉んじゃったら、明日どんな顔して会えばいいのか分かんなくなっちゃう!!
「まず、要件をお願いします……」
「うふふ〜、カワイイ」
「ぴっ!?」
信号で停まり、シスターが俺の耳から顎のラインを撫でた。電撃のようなさざ波が走る。
全く性的ではない触り方だと思うんだけど、俺の触覚はその瞬間に屈服していた。もうどうにでもして。
「今週末の『アルメ』の大会……チームメイト集まってないんでしょう〜?」
車が路肩に停まる。シスターがベルトを外した。話が真面目な方向に進むなら……なんでしなだれかかるんですかぁ!?
当たった! 俺の肩におっぱいが! 予想より柔らかいい!! ブラジャーは固いって聞くけど本当に!?
「あ……いま、ノーブラなんだけど」
俺は死んだ。