晴井vs乳母崎 その03
乳母崎さんの山札は、残り21枚。戦場に俺のカードは《タピルスの歩き巫女》のみ。可能ならばこのターンで……それはちょっと無理だな。
全身シスター服で露出皆無の乳母崎さんのバストサイズを確認するより難しいのでは?
つまり、俺がこのターンで勝ったら乳母崎さんのおっぱいも揉めるってこと!?
揉めねえよ! 調子乗んな!
「カード3枚セット、《タピルスの歩き巫女》で戦場Dを攻撃」
「はい」
「でも、《歩き巫女》ちゃんは0/1で《魔女》は1/1だよ?」
「今セットしたカードでなんとかするんですよ」
そう、このままでは猫魂さんの言う通り、俺の貴重なおっぱいが、魔女との壮絶なキャットファイトの末に一方的に倒されてしまうだろう。
だが、今俺がセットした3枚のカードが状況を変える。ちなみに、これで俺の手札は0。乳母崎さんは7枚。ここで失敗したらとんだワンサイドゲームだよ。
「戦闘前にスペルを表にする。《黄泉返りのダンス》」
2コスト以下のカードを捨て札から場に戻すカード。《棺の女王》のスペル版だ。コストは《歩き巫女》がおっぱい営業で稼いでくれたので無償!
《天冥戦乱》で溢れかえった捨て札から回収するのは……ちくしょう、お前だぁ!
「《精神の外科医》」
「…………見せろ」
「山札をすっごく削るカードだよ」
「手札破壊と併用すれば、ですね」
おっぱいのない我が親友。《精神の外科医》。
手札を捨てたプレイヤーは、その枚数だけ山札を削る。だが乳母崎さんの山札はまだまだ21枚もある。
「2枚目の《黄泉返りのダンス》、対象は《嵐の精霊》!」
「あっ!」
猫魂さんが驚きの声を上げる。
そう、昨日のプレイで猫魂さんを投了に追い込んだ俺の相棒、《嵐の精霊》である!
半透明の少女がシースルーのドレスを着込んで空中でダンス! 背景は雷光と嵐、これでもうちょっと成熟してたら最高なのにね!
「お互いに手札を全て捨て、その後捨てた枚数と同じ枚数のカードを引く。俺は0枚」
「ぐ……こんな、限定構築でも見かけないコモンに……!」
眉間の縦シワを深くする乳母崎さん。《精神の外科医》の事だ。そうでーす。誰も注目しませーん! 俺そっくりだろ? いいんだよ、それが強みなの!
《テンペスト》によって手札の入れ替えを強制。乳母崎さんは7枚。まず捨てて、《精神の外科医》の常在効果により山札が7枚削れる! さらに7枚引いて、乳母崎さんの山札は残り7枚。さあ、底が見えてきたぞ?
《精神の外科医》は、不遇と言うかほとんどのデッキと噛み合わないんだよね。青のドローカードの多くは手札を捨てるので、恩恵よりも被害が大きくなりがちだ。
俺みたいなデッキでなければ、な。
これでイラストが女医だったら……もしくはセクシーなナースの助手がいたら最高だったのにぃ。俺の嫁だと胸を張って言えたのにぃ。
「うっぴー」
「なんですか先輩……きゃあああ!? にゃ、やぁぁ……ん」
突然猫魂さんが乳母崎さんのおっぱいを鷲掴みにした。猫を思わせるいたずらっ子の笑みで揉みしだく猫魂さん。その手に収まりきらないというか、溢れかえって氾濫している乳母崎さんのママミルクっぱい。一瞬で脱力する乳母崎さん。猫魂さんは手を離して俺にサムズアップ。
「いえーい! どーよケーくん?」
「最高だ。俺の予想の上を行った!」
俺たちのやり取りに、乳母崎さんがワナワナと震える。俺と猫魂さんを見比べて、主犯がどちらなのか判断した様子。
「お、お前……!」
「信じて欲しいんだけどそこまでしろとは言ってないんだ」
「殺す……」
ゆらりと立ち上がる乳母崎さん。その目は殺気に満ち満ちて、露出部分は羞恥で赤くなっている。
「待って!」
「ホントに待って、ケーくんはうっぴーのシワがすごいから」
「殺す殺す」
壊れた殺人マシーンみたいになってしまった乳母崎さん。猫魂さんの言うことにも聞く耳持たない。
「またシワが寄ったら笑わせたげてって」
「笑う……?」
想定外の言葉だったのか、動きを止める乳母崎さん、俺はアームロックの恐怖にガタガタ震えながらも頷いた。
「だって、せっかく遊んでるのにそんな顔してたら楽しくないだろ?」
「そもそも、楽しんでいない」
「じゃあ、なんで『アルメ』やってんだよ」
「…………それは」
悩みこむ乳母崎さん。俺は小さく嘆息した。よし、一命を取り留めたぞ。
「座ろう、せっかくだから楽しもうぜ」
「…………」
すごすごと席に戻る乳母崎さん。俺は今の一瞬で判明した三つの出来事を反芻した。非常に重要なことだ。俺は真剣な表情で乳母崎さんにドローを促す。
「7枚引いた。他に何か?」
「ない、ダメージを精算しよう」
まず一つ目、乳母崎さんの悲鳴はびっくりするくらい可愛かった。俺に向ける低く冷たい声とはまるで違う。これがギャップ萌え?
「そちらの《ゲラゲラ笑いの魔女》は攻撃力が1あるけど、どうする? 《精神の外科医》を倒すか?」
「《精神の外科医》は放っておいても《黄泉返りのダンス》の効果で戦闘終了に生贄だ……待て」
二つ目。乳母崎さん、感度がいい。巨乳が感度が悪いと言ったのがどこの誰かは知らないが、一瞬でくたくたになって腰砕けになるとは、乳母崎さんがドチャクソエロい対魔忍感度なのか猫魂さんが超絶テクニシャンかの二者択一である。
そして俺はせっかくだから、前者を選ぶぜ! 乳母崎さんがエロテクの達人だっていうよりも、可能性が高いと思うし。
「うるさいな」
「え、何も言ってないけど」
「顔がうるさい……いやらしい奴め」
「ケーくんマジどえっちー」
「え? これ、戦い方がいやらしいって話だよね??」
三番目、これが一番大事だ。何よりも重要だ。猫魂さんが後ろから抱きついた時に回した腰は、かなり細かった。恐らくそのアンダーは60台中盤。そしてその手に収まらないバレーボール大のバストはJカップあるいはKカップ。
決めた! 俺は100のJに花京院の魂を賭けるぜ!!
「言う通りにするのは癪だが、《精神の外科医》をダメージで破壊する」
「では《テンペスト》は戦闘終了時効果で生贄に捧げ、『奈落』の効果で俺はカードを1枚引くぞ」
引いたのは……2枚目の《棺の女王》。
「エキストラリソースを消費して即セット。カード2枚を別の経路に進めてターン終わります」
「ふぅ………… その顔、《黄泉返りのダンス》か《棺の女王》、それとも2枚目の《テンペスト》でも引いたか?」
口調は平静を取り戻したものの、目元がまだ赤いままの乳母崎さん。
「私が残った2枚を除去できたら私の勝ち。できなかったら山札アウトで先輩の勝ちだ」
「面白くなってきたろ?」
「………………別に」
もう一つ分かった。
乳母崎さんは人の顔色をみるのは得意だけれど、嘘を吐くのはニガテのようだ。
普段は土曜休みでしたが、区切りがいいので明日は投下して明後日休みまーす。