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晴井vs乳母崎 その02



「カードセット、即表にするオープン。《タピルスの歩き巫女》」


 《タピルスの歩き巫女》は黄色の『魔術:』持ちだ。

 『魔術:』スキルはどんな時でも有効だ。特に俺みたいにデッキの半数近くがスペルカードならばなおさらである。


 《タピルスの歩き巫女》は巫女装束を着たふわふわ羊人間……? 獏人間?? である。当然巨乳、そして歩き巫女ということは巡礼する旅芸人兼娼婦ということであり、イラストは半脱ぎ上目遣いお誘いポーズなのだ。最高!


「……いやらしい」

「ホント、マジえっち」


 嫌悪と軽蔑(けいべつ)に満ちた声の乳母崎(うばさき)さんと、《タピルスの歩き巫女》の超弩級セクシーイラストを穴が空くほど見つめる猫魂(ねこだまし)さん。

 『続きはFunBoxで!』とか書かれていそうなイラストなので、全く否定できない。フレーバーテキストにも『タピルスの歩き巫女は夢見の力を用いて、どのような要求にも応じることができる』とある。どんなプレイも思うがままという事だ。続きはFunBoxで! あるいはTwitterで作者に要望してくれ!


「いえ先輩、そうではなくてですね」

「……うっぴー的には、これはまだまだ序の口だと? うそオトナ……」


 ちなみにイラストレーターはエロ漫画家なので、火の玉ストレートにドチャクソエロい。俺が十八歳以上だったらフォローしてFunBoxに課金するのにな〜。残念だな〜。


「『加護』スキル持ちは除去しにくいからいやらしいって意味だよ猫魂さん」

「あ、なる」

「『ほど』まで言ってください」

「乳母崎さんやらしい〜」

「黙れ猥褻(わいせつ)物、生ゴミ臭い言葉を吐くな」


 《タピルスの歩き巫女》は戦闘能力が皆無。《人魚の歌姫》や《ゲラゲラ笑いの魔女》よりも無い代わりに『加護』というスキルを有している。

 効果は『このカードがオープン効果かスペルの対象になる場合、それらはコスト+1する』。


 『魔術:』持ちは除去出来る時に除去するべきである。乳母崎さん的には嫌なカードだ。俺としてはイラストはエロいし強いので最高オブ最高。そのまま東経路に進め、もう一枚セット。こちらは西経路へ。


「ターン終わり」

「私のターン、ドロー。カード一枚セット、その裏向き……またスペル?」

「どう思う?」


 にこやかに答える俺、乳母崎さんは鼻で笑う。ここでこの裏向きを除去しようとして、またスキルだと二枚目の無駄打ちだ。

 それならば『加護』があってでも《タピルスの歩き巫女》を除去したい所だろう。


 乳母崎さんが俺の目を正面から見る。綺麗な目だ。形のいいアーモンド型のツリ目、長いまつ毛、それしか見えない点が想像力を刺激して大変にセクシーだ。


「ユニットだ」


 リソースを支払い、乳母崎さんがユニットを表にするオープン。《飛びかかるインプ》。

 裏向きのカードを確認するユニット。スペルなら戻され、ユニットなら強制表にするオープン。リソースが無いと破壊される。


「ご明察」

「ふふっ」


 ぐわぁ、俺のセクシーダンサー《棺の女王》が破壊された。鼻で笑う乳母崎さん。やってくれる。もう一枚セットして、東経

路へ進めてエンド。


「ターン貰います……ドロー、リソース青黄色黄色。とりあえずスペルだな。はい、《天冥戦乱》を表にする(オープン)

「なにそれ」


 猫魂さんが覗き込んでくる。ワイシャツのボタンが止まってなければ谷間もブラも見放題なんだがな……悲しいな。


「ユニークのスペル。全てのプレイヤーは山札の数を数えて半分を破棄する。半端切り捨て。ターン終わり」

「は?」「…………半分?」


 戦場は乳母崎さんに支配されつつあるが、戦場カードを持っていないのか未だに制圧(ドミネート)はされていない。制圧は1ターンに一箇所。つまり2点分(ダブル)の戦場を運よく取られたとしても、まだ2ターンある。

 出遅れた俺がユニット戦で追いつくことは可能か? 不可能ではない。しかし多大な幸運が求められるのと、俺は自分の幸運とやらを少しも信じていない。


 故に、俺は3コストの大型スペルでこのターンを終わりにした。


「オレの山札は残り21枚」

「…………まさかそのデッキ、『山札(ディクショナリ)破壊』か」

「勝ち筋の一つはね」


 そう、俺のデッキは自分の山札も破壊して利用する山札破壊デッキだ。

 そして、ここまでの俺の手札ではどうにもならない。盤面は完全に乳母崎さん優位だ。だからこのターンを使い捨ててでも、俺は山札を削る必要があった。


「ドロー。私の山札は24枚。削り切る前に勝たせてもらう。《ゲラゲラ笑いの魔女》のいる戦場Dに《奈落》をセット、制圧(ドミネート)する」


 《奈落》! 


「《飛びかかるインプ》を戦場Dに移動させ、《強欲なナイトメア》表にするオープン!」

「ナイトメア! 生贄デッキか!」


 ナイトメアと呼ばれる悪魔シリーズは、中型から大型のユニット群だ。その特徴は自分のユニットを一体生贄。つまり自分から破棄することで発動する強力なオープン効果。

 《強欲なナイトメア》は俺の手札を2枚破壊し、その上乳母崎さんには2枚ドロー。ユニットを一体消費するが、凄まじいカードアドバンテージだ。


 さらに戦場《奈落》は、その戦場で生贄を捧げるとカードを引ける。以降は手札面でも完全不利だ。

 乳母崎さんは残ったリソースでカードをセットし中経路へ。


 ここが勝負の5ターン目。

 これ以降は奇数ターン毎にエキストラリソースが1点入る。エキストラリソースはターンが変わっても引き継がれるリソースで、4コスト以上の大型ユニットはそれを使うか指定された削減法を使う必要がある。もちろん、使わず貯めてもいいし大量の低コストカードで一気に消費しても良い。


「ターン貰います。ドロー、リソースは青黄色黄色。エキストラリソースは黄色を選択」


 このターンはリソースが4ある。つまり、まあ、うまくやれば逆転も出来るかもねって事だ。

 運ではなく、実力(デッキ)で。



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