序曲第一部
クインテット
「ねーぇー、イケメン君も一緒に行こうよぉー」
周りには兵士の人たちが沢山いてみんな鎧とか着てる中、アタシは上目遣いで、目の前に立つ男を誘う。
高身長でイケメン、よくわからないまま集められたグループで、唯一アタシと同い年くらいの男。
コイツが来ないとあとはオッサンしか残らないし、我慢できなくなった時の相手は、顔のいい男の方がイイし。
それに一人でも多い方が、弾除けになってくれる可能性も上がるし?
なんだけど。
「断る。というか、お前たちも行くな。俺たちじゃ無理だ」
コイツは顔はいいけど、ビビりっぽい。
「大丈夫だってぇ。アタシ一人でも楽勝だよ。この間のイキってたやつも雑魚だったし」
「あれは第三階級だろうし、雑兵に毛が生えた程度の奴だったからどうにかなった。けど、あれより上は無理だ。隊長級は間違いなく出てくるし、下手したらトップ層が出てくる」
「でもぉ、あいつらのボス?殺さないとアタシら出られないって坊主の人が言ってたジャン」
「そうだとしても、仲間を集めるべきだ。俺たちは素人の集まりだし」
「問題ない。喧嘩なら俺がやれる」
ずいっとデカいオッサンが割り込んできた。
「乜さん・・」
「ほーらー、ヤブさんもこう言ってるし?アタシとイケメン君も一緒に闘えば大丈夫だって。ヤバくなったら逃げればいいだけだし?」
「けど・・・」
「自信がないなら来なくていい。敵の前で的になっても、俺は助けない。自分の身は自分で守るのが集団で喧嘩する時の最低条件だ。伊織だけは俺が守るがな」
「きゃー、ヤブさんカッコイイ♡」
チョロい。このオッサンは強かったし、何回か一緒に寝たらすっかり恋人気分でこの様。
アタシを守って、アタシの代わりに敵を倒す戦士だ。
ゴツい顔で男くさい感じだし、アッチも単調でテクニックも何もなかったし多分童貞。
「ですが、隊長級の実力は脅威です。他の法師にもコンタクトを取って、戦力を出してもらえないか聞いてみましょうよ」
「だーかーらー、坊主の人達は何か別の作戦?みたいのを一緒にやるんでしょ?イケメン君がそれ言っても、そっちに人が必要だからって誰も貸してくれなかったジャンよー」
「それでもだ。相手が何人いるかもわからないし、俺たちじゃ隊長級が出てきたら5対1の状況を作っても・・・」
「問題ない、俺は勝てる」
「まぁまぁ!3人とも落ち着いて!」
また別のオッサンが割り込んできた。
「ねーぇー、小野夢さんからもイケメン君説得してよぉ。4人より5人の方がいいっしょ?なんだっけ、ごこー?みたいなやつなんでしょアタシたち」
白髪のオールバックにピアス、派手なアロハシャツというファンキーなジジイで、面白そうだったからアタシの駒にしようと迫ったことあるけど、まさかの孫までいるとかでジジイ過ぎてアタシの魅力が通じなかった。
「うーんそうだねぇ。確かに人数は多い方がいいけど、だからって闘うつもりのない彼を連れ出してもねぇ・・・」
「えー、でもでもぉー。アタシ早く帰りたいよー」
「そりゃ俺だってそうさ!孫の顔もまだまだ見たりないしね!」
「でしょー?あっちのフードの人だって強かったしさ、大丈夫だって。アタシ達サイキョーだから!」
一人だけ会話に入ってこないオッサンは、よくわかんない。あんまり喋らないし、名前を聞いても教えてくれなかったし。何考えてるかわからないし、なんかキモいし。でも五人で一番強かったかも。
とにかくアタシは周りを煽ってこのイケメン男を引き込もうとしてるんだけど、全然乗ってこない。
あーなんかだんだん面倒くさくなってきた・・・。
「そういう問題じゃない。相手の戦力がわかってもいない状態なのに、敵地に突っ込んでも返り討ちに会うだけだって言ってるんだ!」
なんかコイツもだんだんイライラしてるっぽいし。
「うーん、でも俺たちだけじゃなくて、ほら、なんだっけ。二方面同時?作戦ってやつでさ、俺たちが敵さんのボスと戦うために、たくさん引き付けてくれるって言ってるし。逆にここで俺たちが行かないと、あちらさんだって何のために引き付けてるのか、意味なくなっちゃうじゃんよ?逆にここで俺たちが逃げ帰ったら、あっちの犠牲が無駄になって俺たちの立場がなくなっちゃうよ?」
「っ・・・、ですが・・・!」
「もういい。お前がこないなら俺たちだけで行く」
「そーだねー、残念だけどさ、これ以上無駄っぽいし?でもイケメン君、参加しないと帰れないかもよ?帰るための道?みたいのが閉じちゃうかもだし」
「・・・俺はいかない」
「あっそー。じゃぁねバイバーイ」
弾除けが一人減るのは嫌だけど、あれ以上喚かれて他の人たちが辞めるとか言い出したら面倒だし。
早く帰ってナオヤんとこ行かなきゃだしね。全然お店行けなかったし、いっぱい優しくしてあげないと。
ナオヤはアタシがいないとダメだし、アタシもナオヤがいない世界なんてイヤ。
早く帰りたい。
「待て・・・!まだ・・・」
「黙れ。俺たちが行く道がは俺たちが決める。腰抜けはそこでへたってろ」
最後はヤブのおっさんがひと睨みしたらオシマイ。
ま、問題ないっしょ。
全員雑魚だったし、アタシ達は間違いなく強いし。
ごこー?とかいう力で敵なし!これがチート能力ってやつ?
この力でもう何人殺してきたと思ってんのよ。
と、いうわけで!
このクソったれな世界からはさっさとおさらばしましょー!
歩き出したアタシたちの背中に
「クソっ・・・!」
という声が聞こえた。
ヤブのおっさんも言ってたけどビビりすぎっしょ。顔はいいけどそれだけって感じ。
もう興味なくなっちゃった。
アタシ達は坊主の人に言われてた出口から外に出た。
向こうの方に見えてる建物に帰る道がある。アタシは帰る。
「遠っ・・・あそこまで歩くのかぁ・・・」
歩くの面倒だし、このデカいオッサンにでもおぶってもらおうかな。
カルテット