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神曲  作者: もてぃまー
15/16

不明①

どこかの部屋


「して、首尾は」

朗々とした声で必要最低限の質問をする男。


「4人」

質問に応える女も低い声で必要最低限だけを返す。


「おや、らしくないですね。貴女が取りこぼすとは」

神経質そうな男が唇の片端(かたはし)をやや上げ、皮肉交じりの笑顔で口を挟む。


「いなかった。別動隊にも」

再び最小限だけを返す女。


「・・・」

室内では5名の男女がテーブルを囲んでいるが、2名は口を閉ざしたまま目線だけを動かしている。


静寂を守る室内で動き続けるのは、各自のティーカップより立ち昇る湯気と揺れる蝋燭(ろうそく)(あか)りのみ。


降り番(おりばん)が出ないということは、乗り番(のりばん)も出ないということです。老人達の狙いがわからない。そのような状況であれば最後の一人を(すみ)やかに消して奏者を入れ替えるのが得策であり、いつものやり方なのに」

誰も口を開かない中、神経質そうな男が一人で会話を続ける。


「逃げた可能性は」

「ない。広げてもどこにもいなかった」

「いえそうではなく。舞台に上がらず会場から逃げた可能性を示唆しています」

「知らない」

多弁な男と寡黙な女の会話はひどくアンバランスであり、情報量の差に(いら)つきそうな二人は

しかしいつものことであるように会話が成立している。


「構わん。駒が補充されないなら余計な手間が減る」

再び最初に口を開いた男が言葉を発する。

「おっしゃる通りかと。私も未だ2名のエキストラを捕捉(ほそく)出来ていません」

「白の王は」

「・・・まだよ」

ここでようやく4人目となる女が口を開く。


「首尾は」

再び同じ(げん)(つむ)ぐ男。

「2割ってところ。上位が3名。まだかかるよ」

「よい。続けよ」

「了解」


最小限の情報を交換し、5分と掛からずに会議は終了した。

各々が部屋を後にする中、その場に不釣り合いな

10代に差し掛かったばかりの少年だけが、腰を下ろしその背を見送る。

その横には、いつの間にか待機していた男女が片膝をついて(こうべ)を垂れている。

少年はそちらに目もくれずに口を開く。

「1人残った。捕捉せよ」

御意(ぎょい)に」

ザッと短い音が室内に反響し、蝋燭の灯だけが動く空間へと戻る。

ティーカップはもう湯気を立てていない。


パサリと、手にしていた羊皮紙を机に投げ捨てた少年は

「・・・」

独り言を言うでもなく、一度上を見上げる。


机に広がった羊皮紙には、今回の会場の様子が記載されている。

奏者4名、観客5011名。

死者5015名。


次の一呼吸の間で、室内はがらんどうになった。灯も、人も。

どこにもない部屋

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