不明①
どこかの部屋
「して、首尾は」
朗々とした声で必要最低限の質問をする男。
「4人」
質問に応える女も低い声で必要最低限だけを返す。
「おや、らしくないですね。貴女が取りこぼすとは」
神経質そうな男が唇の片端をやや上げ、皮肉交じりの笑顔で口を挟む。
「いなかった。別動隊にも」
再び最小限だけを返す女。
「・・・」
室内では5名の男女がテーブルを囲んでいるが、2名は口を閉ざしたまま目線だけを動かしている。
静寂を守る室内で動き続けるのは、各自のティーカップより立ち昇る湯気と揺れる蝋燭の灯りのみ。
「降り番が出ないということは、乗り番も出ないということです。老人達の狙いがわからない。そのような状況であれば最後の一人を速やかに消して奏者を入れ替えるのが得策であり、いつものやり方なのに」
誰も口を開かない中、神経質そうな男が一人で会話を続ける。
「逃げた可能性は」
「ない。広げてもどこにもいなかった」
「いえそうではなく。舞台に上がらず会場から逃げた可能性を示唆しています」
「知らない」
多弁な男と寡黙な女の会話はひどくアンバランスであり、情報量の差に苛つきそうな二人は
しかしいつものことであるように会話が成立している。
「構わん。駒が補充されないなら余計な手間が減る」
再び最初に口を開いた男が言葉を発する。
「おっしゃる通りかと。私も未だ2名のエキストラを捕捉出来ていません」
「白の王は」
「・・・まだよ」
ここでようやく4人目となる女が口を開く。
「首尾は」
再び同じ言を紡ぐ男。
「2割ってところ。上位が3名。まだかかるよ」
「よい。続けよ」
「了解」
最小限の情報を交換し、5分と掛からずに会議は終了した。
各々が部屋を後にする中、その場に不釣り合いな
10代に差し掛かったばかりの少年だけが、腰を下ろしその背を見送る。
その横には、いつの間にか待機していた男女が片膝をついて頭を垂れている。
少年はそちらに目もくれずに口を開く。
「1人残った。捕捉せよ」
「御意に」
ザッと短い音が室内に反響し、蝋燭の灯だけが動く空間へと戻る。
ティーカップはもう湯気を立てていない。
パサリと、手にしていた羊皮紙を机に投げ捨てた少年は
「・・・」
独り言を言うでもなく、一度上を見上げる。
机に広がった羊皮紙には、今回の会場の様子が記載されている。
奏者4名、観客5011名。
死者5015名。
次の一呼吸の間で、室内はがらんどうになった。灯も、人も。
どこにもない部屋




