序曲第三部
ソロ
「はっ・・・!」
功の指から走る紫電が廃墟内を一瞬照らした。
光が10m先の男の胸に刺さると、男は一瞬大きく震える。
胸を貫いた光はそこで消えずに背後へ抜けると、拡散して広範囲に散り、最初に貫かれた男の後ろで構えていた数人へと降り注いだ。
接続電流を浴びた男たちは、ぐっ!がっ!と短い悲鳴を上げて倒れ伏す。
その中で、唯一紫電に耐えた一人が功に突っ込んでくる。
手に曲剣を構え、功の眼前で跳躍するとそれを投げつけた。
放たれた曲剣が空中で前方へ回転しながら迫る。
突然投げつけられた剣に一瞬同様した功だったが、咄嗟に右へ転がってなんとか回避運動を取る。
その着地点へ、跳躍した男が迫る。手にはいつの間にか抜いた大振りの短剣。
振りかぶった短剣の刀身が廃墟の隙間から漏れ出た月光を乱反射して、おかしな色を光らせる。
起き上がり様に目線を上げた功は毒物かと判断し、これを受けぬように自身も腰から短剣を抜く。
男のそれよりも一回り小さい、通常サイズの短剣で剣撃を受け止める。
だが、腕力と武器の重さ、どちらでも劣る功はその一撃に堪えられず、後ろによろめいた。
男もタタッと後ろへステップして衝突時の衝撃を素早く逃がすと、
今の一合でやや開いた距離を詰めるでもなく、すかさず短剣を投げつけた。
功は体勢を崩しながらも、中距離からの投擲を再び短剣で受ける。
しかし放たれた大振りの短剣は功の想定よりも重たい衝撃を手首に与え、思わず自身の短剣を取り落としてしまった。
ニヤリと口角を上げた男は刺突剣を抜き放ち、滑らかな体重移動と共に右足を踏み込む。
そこから発生したエネルギーを刺突剣に乗せて突き出した。
再び体勢を崩し武器を取り落とした功は、再び床を転がってこれをやり過ごそうとする。
その瞬間、功の耳は大きくて質量のある何かが迫ってくる風切り音を捉えた。
咄嗟の判断で、転がろうと横に移動させていたエネルギーを、両足の爪先で強く上方へ押し出して腕を引く。
サイドフリップと呼ばれるアクロバットの動きで宙へ飛ぶと、直後に曲剣が回転しながらその下を通過した。
曲剣をブーメランのような周回軌道で投げつける飛月に肝を冷やしながら、
空中で視線を巡らせた功は刺突を躱されながらも、己が着地する瞬間を狙った次の一撃を構えている男を視認。
本来は両足で着地するところ、着地に向けた重心移動をせず余分にもう半回転。
両手で床を捉えて肘を曲げる。ダンッ!という踏み込みの音に合わせて、曲げた肘を伸ばしながら背筋を伸ばす。
サイドフリップからの逆立ちジャンプで、やや横方向へ飛び上がった功の目線が、男の目線とぶつかる。
想定外の動きの連続で焦りの見える男だが、出始めの攻撃動作をそのままとし、
相手が上下逆さまとなったため、左胸の心臓狙いから、右胸の肺狙いへと切り替えて刺突を放った。
・・・が、しっかりと相手を見据えて放ったはずの一撃は決まらなかった。
「なっ・・・!?」
功は空中で腰を捻りながら膝を曲げて両腕で抱え込み、体の軌道を空中でずらしていた。
右胸目掛けて放たれた刺突は功の右腕に刺さり、丸まったまま回転する勢いで切っ先を逸らされ、そのダメージは狭い範囲を斬りつけるのみに留まった。
功は咄嗟の動きの連続と、右腕を斬られたダメージで受け身も取れず、
相手の足元にべちゃりと落下すると、それでもすかさず左手で男の足首を掴んだ。
「ぐ・・・がっ・・・!」
抱擁電流によって直接電気を体に叩き込まれた男は、瞼を大見く見開いて昏倒した。
ぜぇぜぇと肩で息をする功は、掴んでいた足首を話すとそのまま床に突っ伏した。
「はぁ・・・はぁ・・・しんど・・・っ。こいつ絶対俺より強かったよな・・・」
そのままゴロリと仰向けになり、功は左腕で両目を塞いだ。
「ダンス・・・はぁ・・・やってて・・・はぁ・・・よかった・ぁ・・」
ソロ




