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84話 謎


「何をやっておる!? 私を何者だと思っておるんだ!?」

「だ、旦那様。状況が悪いです。とりあえずは抑えないと」


 ソップ大統領、側近のオトゼが衛兵によって拘束された状態で喚く。






 それを後目にアラファとスカフ王子は現状を把握していく。


「はぁ……なるほど。お菓子配りのおかげで支持を受けた私が精霊に選ばれて………………それ本当ですか?」

「実際に精霊魔法を使えただろう?」

「それもそうですけど……なりたかったわけじゃないのに?」

「精霊によって決められたシステムだ、仕方ないね」

「私が共和国大統領になったとしたら、この先どうなるんですか?」

「……まあ考えないといけないことは山積みだね」


 気がかりを口にしながらも雰囲気は落ち着いているスカフ王子。自身の冤罪が晴れてホッとしているようだ。




「お二人ともお疲れ様です」


 そこにソルト帝が話しかけてくる。


「……あ、そういえばスカフ王子の状況を伝えてくれたの、帝国の人だって言ってました! もしかしてソルト帝の指示ですか!」

「ええ、そうですね」

「おかげで助けられました、ありがとうございます!」


 アラファがソルト帝に礼を言う。




「……どうやら全部あなたの手のひらの上だったようだ。いつから見えていたんですか?」


 スカフ王子が尋ねる。


「アラファさんがしているお菓子配りの話を聞いてからですね」

「それでここまで読み切れたんですか」

「特別なことは何もしていませんよ。……一応、支持が集まるのに時間がかかるだろうと、オグネー将軍に時間稼ぎを頼んだりもしましたが、ここまで上手く行ったのは完全に運ですね」

「何にせよ助かったのは事実だ。僕個人、そして王国の全権委任大使として礼を言う」


 頭を下げるスカフ王子。


「よしてください、恩の清算はまた後でと言ったでしょう?」

「だからこうして今から清算の話を――」


 スカフ王子が続けようとした言葉を。




「何を言ってるんですか? まだ事件は終わっていませんよ」

「…………え?」




 ソルト帝は遮っていく。




「その通りだ。まだ今回の策謀には続きがある」


 話に加わってきたのはマギニスだ。


「続き……? それはそうとマギニス、さっきは酷くなかったかい? あんな映像を見せられたんじゃ仕方ないかもしれないけど、僕が犯人じゃないと信じられなかった様子だったよね?」

「……仕方ないだろう。犯人の正体が正体だ。貴様の殺意も否定しきれなくてな」

「犯人の正体……? 何を言ってるんだい?」

「朝からずっと改めて事件について考えていた。それもようやくまとまってきたところだ」


 ソルト帝もマギニスも……一体何の話をしているんだ……?




 ちょうどそのとき。


「私は犯人ではない!! ナップを殺したのは一体誰なんだ!!」


 拘束されてずっと喚いていたソップ大統領の悲壮な叫び声がやけにスカフ王子の脳裏に響いた。


 今回の事件はソップ大統領の自作自演。ナップ夫人を殺したのもソップ大統領自身かその息がかかった者のはずだ。

 つまり彼は犯人を知っているはずなのに……今も、そして会議中もどうして真に迫った感情で犯人は誰だ、と叫ぶことが出来る?

 まるで演技や嘘じゃないかのようで…………もし演技でも嘘でも無かったとしたら。




「事件に残る謎は二つ。一つは現場の状況です。寝室は強盗にあったかのように荒らされていました。ナップ夫人殺害の容疑をスカフ王子に擦り付けるだけなら必要ないはず。

 いえ、必要ないと言ったらそもそもナップ夫人を殺害する必要がありません。強盗容疑の冤罪だけでも十分に王子の信頼を失墜するのには十分です。

 強盗と殺人。二つの痕跡が現場にあったのは……二つの思惑があったからなのでしょう」


「二つの思惑……一つはソップ大統領のはず。実際にさっき『水の御鏡』で企ててる姿が見れたからね。

 ……でも、ああそうか。あのときもナップ夫人を殺害してなんて言っていなかった。つまりソップ大統領は僕に強盗容疑を押しつけようとして――」


「ちょうど別の何者かがナップ夫人を殺害した。それらが交通事故を起こしてスカフ王子に殺人容疑の冤罪がかかったというわけです。

 そこで二つ目の謎ですが……私はナップ夫人の遺体を調べてすぐに違和感を覚えました。

 身体が冷えすぎていると。舞踏会が終わって部屋に戻ってから死体が発見されるまでそこまで時間は無かったはずなのに。

 その後、死後硬直から割り出すに殺害から一日ほどは経っていることが分かりました」


「一日……? そんなはずないだろう。昨日の昼は舞踏会が行われていた。そこにナップ夫人は参加していたんだ、僕だってこの目で見ているぞ」


「つまりその誰かが殺したナップ夫人に成りすまして参加していたのでしょう。魔法なんて便利なものもありますしね」


「魔法で化けて……でもどうして? 一体誰が……?」


 話は理解できる。だけどその犯人の意図が理解できない。






「そこで昨日報告したことが繋がってくる。ナップ夫人が殺意を感じさせるほどに貴様とステンス殿を見ていた件だ」


 マギニスが話を引き継ぐ。


「……ああ、そんな話もあったね。色々あってもう昔のことのように感じれるよ」


「ナップ夫人が殺害されたことでうやむやになっていたが、どう考えても接点の無い貴様がナップ夫人に恨まれる筋合いは無い。

 だから逆算して……あのときのナップ夫人の正体は、貴様やステンス殿の様子を見て殺意を覚えるような人物だったとしたら?」


「僕とアラファの様子……パートナーとして一緒に踊っていたのを見て殺意を覚える人物…………っ!?」


「そうだ。どうやらこの会議にも潜入していたらしい」


「まさか……ナップ夫人を殺したのは……!?」


 スカフ王子が思い当たる人物を浮かべたところで。






「あらやだねえ、そんな熱烈に意識されたら火照っちゃうわ」






 会場『審判の間』にしわがれたその声が響いた。


「ゼラフ……!! 貴様!!」

「久しぶりねえ、スカフちゃん。……でもイライラしててちょっと優しく出来ないかも」


 『妄執の魔女』ゼラフ。

 スカフの仇敵がその姿を現したのだった。


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