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83話 お菓子な精霊魔法


 アラファはこれまでの経緯を振り返る。




『『『ア・ラ・ファ!! ア・ラ・ファ!! ア・ラ・ファ!!』』』


 廃墟で大勢の貧困層の大人や子供たちにお菓子を配り、その発起人であるアラファに対して熱狂の渦が巻き起こったしばらく後のこと。


『……ん、何かしら。この感覚?』


 アラファは内から何か不思議な力が沸くような感覚に襲われる。


 ――ちょうどこのとき、急速に拡大した支持がソップ大統領を抜き、アラファは精霊から力を与えられて権能者となったのだが、そのことに気付かないまま自身の身体の調子を確かめていると。




「アラファ・ステンス様。ポーディニア帝国のものです、お力を借りたいことがありまして」

「わっ!? ビックリした、いきなり何!?」


 音も無く現れた帝国の連絡員はそのまま続ける。


「現在行われている大陸全土会議についてです。そこでスカフ王子が少々大変なことになっており……」

「……王子が? 聞かせてちょうだい」




 そうしてアラファは神殿に戻る道すがら、今回の事件、スカフ王子が冤罪にかけられつつあることを教えてもらい、辿り着いた『審判の間』で心配の声をかけながら駆け寄ったのであった。




「……なるほど。お菓子配りをしていると帝国の者から連絡を受けてここに来たと」

「私のことはいいんですよ! それよりスカフ王子にかけられた殺人容疑はどうなったんですか!?」


 アラファが先に聞いたのは昨夜の顛末まで。実際会議がどのように推移したのかは聞いていない。


「……それを君が聞いてどうするんだい? 僕が殺人していないことの立証……なんて小難しいこと、アラファには無理だろう? どうしてここに来たんだ?」


 アラファの顔を見て……安心してしまったスカフはその感情を認めたくなくて意地の悪いことを聞く。





「どうして、ってスカフ王子が心配だからに決まってるじゃないですか!」


「っ……」


 真正面から感情をぶつけられたスカフ王子がたじろぐ。




「立証とかそういうのは知らないですけど! でもスカフ王子は良い人――」


『離れていろ、アラファ。これは僕らの問題だ』


「じゃないかもしれないけど、人を殺したりとか――」


『『妄執の魔女』ゼラフを殺す』


「も考える人ですけど……」


 擁護の言葉を並べようとしては過去を思い出して失敗するアラファ。




「何が言いたいんだい?」

「とにかく! スカフ王子っていう人が、身勝手に人を殺す訳ないってことは知ってるんです! だから殺していません!」


 アラファの破れかぶれな主張に。


「ふふっ……あははははっ!!」


 スカフ王子は腹をかかえて爆笑する。




「……あれ? どうして笑って……?」

「いやはや……アラファは本当いつも通りだなって」

「ええと……それ褒めてます?」


 文脈が分からず頭を捻るアラファ。




「ごめんごめん、それでアラファが来てくれたおかげでもう問題も解決したようなものなんだ」

「私が?」

「今、君は自覚していないだけで精霊の力を使えるはず。精霊魔法『水の御鏡』を出してもらえるかな」

「精霊魔法……? 『水の御鏡』……? よく分かんないですけど、それって共和国の水の精霊のことですか? だとしたら私にそんな――」


 こと出来るはずが無い、と否定しようとしてアラファはそうではないことに気付いた。

 『水の御鏡』

 今スカフ王子に初めて聞いた魔法。

 でも、私にはその使い方が分かる。そのための魔力を精霊から借りる方法も分かる。




「『水の御鏡』」




 アラファがそのように唱えると、その背後に水が渦巻き巨大な鏡が浮かぶ。


「………………って、何なのこれ!?」


 自分でやったことなのに、自分で驚くアラファ。

 スカフ王子に言われて、行けそうかもと思ったら本当に上手く行って……。これって魔法よね? 私、魔法使えないはずなのに。それに魔力を借りたのは精霊で……精霊から力を借りる? そんなことどうして出来た?


「説明は後でするよ。それでこの『水の御鏡』の効果は?」

「ええと……それも分かります。『共和国内に置ける真実や人が想像した任意の映像を映すことが出来る』…………ってそんなこと出来て良いの!?」

「任意の映像……やっぱりそういうことか」


 アラファがぱっと頭に思い浮かんだ説明を口にすると、スカフ王子が合点が行ったように頷く。






「な、何故そこの小娘が精霊魔法を……!?」


 鏡を見て狼狽えるソップ大統領。


「先ほどの説明も覚えてないのですか、ソップ大統領は」

「う、うるさい!! その力は私の物だぞ!! 奪うなんてそんなの許されるものか!! 衛兵たちよ、その者を捕らえよ!!」


 ソップ大統領はそのように命令するが……衛兵たちの動きは鈍い。それもそのはず、相手の方が共和国の象徴たる精霊の力を使っているのだから迷って当然だ。




「今の内に終わらせよう。アラファ。昨夜の策謀、その企みの場を暴いてくれ」

「よ、よく分かんないんですけど……『昨夜の策謀、その企みの場を暴け!』」




 アラファがスカフ王子に続いて唱えると鏡の水面が波打ち始め、一際大きな波の後に映されたのはどこかの寝室だった。

 映る人物は二人。

 一人は側近のオトゼ、もう一人はソップ大統領だ。




『どうしたのですか、旦那様。こんな朝早くから呼び出して』

『おまえは王国の王子については知っておるな』

『……あの旦那様に舐め腐った態度を取った者のことですか?』

『ああ。共和国の長たる私を侮辱した罪。罰が必要だとは思わないか?』

『もちろん……と言いたいところですが、仮にも一国の王子を相手には難しいのでは?』

『一国の王子? 何を言う? やつは犯罪者であろう?』

『……なるほどそういうことですか』

『首尾は任せる。やつに対して何でもいい、罪をでっちあげろ』




 二人はそうしてお互い悪い笑みを浮かべて、映像はそこで終わる。




「どうやら真実は明らかになったようですね。今回の事件は自作自演。真の犯人は――ソップ大統領あなたですね」

「こ、これは……な、何かの間違いだ!!!」




 ソップ大統領は否定するがその力は弱く、こうして会議は決着したのだった。


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