71話 後輩な舞踏会
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時は少し遡り、同じ舞踏会会場にて。
「ねえ、どういうことなの?」
「そうよ、どうしてアラファさんが王子のパートナーに?」
「ノーナさんは何か知らないの?」
「あはは、ノーナも全く知らなくて……」
困った様子でどうにか追及をかわそうとする後輩のノーナ。
今回の舞踏会には各国の代表のみならず、随伴している人員の全てが招待されている。
ノーナは会場にて同じ王国の使節団員に取り囲まれてアラファについて根掘り葉掘り聞かれていた。
(攻められているというよりは興味本位って感じなんでしょうけど……これはロチュさんに感謝ですね)
使節団に参加している人たちにはアラファのお菓子研究で作られた余りのお菓子をお裾分けという形で配っているため、アラファやノーナに悪感情を持つ人はほとんどいない。
この根回しという名の餌付けは無口なロチュの助言により行われていた。
『二人とも自分の立場を理解してない』
『私たちの立場?』
『スカフ王子。人気の高い王子の直属の外交特務室。何もしないと嫉妬で呪い殺される』
お菓子作りしか考えていないアラファとそういう機微に疎いノーナにとって、世渡りに慣れたロチュの存在はありがたかった。
ただ現在そのロチュはというと、舞踏会に来て最初こそノーナと一緒に行動していたが、アラファが王子のパートナーになったということで真相を問いただそうと押し寄せてきた人たちを見て、巻き込まれないようにノーナを見捨てて離れていた。
(世渡り慣れ過ぎです、ロチュさん……)
とはいえそれも仕方ないことだと思えた。アラファとスカフ王子が囲まれていた人数に比べれば少ないが、ノーナだってかなりの数に囲まれている。結界魔法で押し退けたりしたらパニックにもなったかもしれない。
押しの弱いノーナは上手く人を捌くことも出来ないまま、ろくに身動きも出来ないままダンスの時間も始まって。
(まあ最初に色々ごちそうはいただきましたし、十分参加した意味はあったでしょう)
そのまま舞踏会が終わるまでやり過ごそうと諦めかけた……そのとき。
「ミガ……ノーナ殿。至急頼みたいことがある、一緒に来てもらう」
「マギニスさん……?」
囲みをかきわけてやって来たのは王子の護衛、マギニス。
頼みたいこととは何か、とか考える暇も無くマギニスはノーナの腕を取ると。
「え、ちょっと……!?」
「申し訳ない、急いでいるので」
有無を言わさず、二人で強引に囲みを抜けて行った。
残された王国使節団の人たちはというと。
「いきなり連れ去られたけど……今の王子の護衛の人よね? ならノーナとも知り合いか」
「頼みたいことって、何か問題でも起きたのかしら?」
「そういえば今名前を呼んでなかった?」
二人の去って行った方向を見送るのだった。
ホール内、先ほどから少し離れた場所。
「この辺りまでくれば大丈夫か」
「マギニスさん……問題って何ですか? お菓子関係ですか? 先輩がいなくてノーナだけでどうにかなるか――」
「すまない、それは嘘だ」
仕事モードに入ろうとしたノーナに対して、マギニスはすまなそうに謝る。
「嘘、って……?」
「方便だ。会場を見回っていたらノーナ殿が人に囲まれている姿を見つけた。囲んでいたのも王国の人員だったため問題では無いと思ったが……困っているように見えたのでな。
強引に抜け出させてもらったが……もしかして誤解だったか?」
「いえ、それは困ってましたけど……」
「そうか。……このことで今後彼女たちと角が立つような事態になったら私のせいにして構わない」
マギニスはそう述べると「巡回に戻る。それでは」と踵を返して去って行こうとする。
「…………」
ノーナは呆気に取られていた。
あの路地裏の時と同じで……困っている私の前に颯爽と現れて助けてくれた。
しかもだ。私と使節団の人たちと軋轢が起きないように、わざわざ頼みがあるという嘘を吐いてまでだ。
マギニスさんが嘘や冗談の類を口にするのは滅多に見たことがない。そんな慣れない嘘を私のために吐いてくれた。
「…………」
この人はどこまで私の心をぐちゃぐちゃにすれば気が済むのだろうか。
それなのに用件は済んだとばかりに今そそくさと逃げようとしている。
そんなの許せるはずが無い。
「あのっ!」
マギニスの腕を掴んで呼び止めるノーナ。
「……どうした、まだ何かあるか?」
怪訝そうな表情で振り返ったマギニスに対して。
「お邪魔でなかったらですけど、私もマギニスさんに付いていっていいですか?」




