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64話 お菓子なレッスン


 大陸全土会議二日目、お茶会を全部終えて夕方。


「とりあえず無事に終わったわね」

「役目を果たせて良かったです」


 食堂にてアラファとノーナは夕食を食べながらお互いを労った。


 今回の会議で外交特務室の二人に課せられたのはお茶会でのお菓子の提供だ。色々と荒れたりもしたお茶会だったがお菓子の提供自体はどれも上手く行って仕事はこなせたと言えるだろう。




「後は気楽に過ごせますね。明日の舞踏会では色々豪華な料理も出るらしいですし、明後日の本会議の日は役目も無いですから観光でもしていいですし」


 ノーナは完全に解放されたといった様子だったが。


「舞踏会ねえ。そういえば私、スカフ王子のパートナーになったのよ」


 アラファには新たに受けた役目があった。


「……えっ!? アラファ先輩出るんですか!?」


 いきなり投下された情報に驚くノーナ。




 予定が変更になってスカフ王子が出席することは周知されていたが、そのパートナーが誰になるかは一部しか知らなかった情報だった。

 アラファがたった今暴露したが、公言することでも無いが秘密するものでも無い。そもそも舞踏会が始まれば分かることだ。




「そうなのよ、急に決まったことで言ってなかったわね。私、大勢の前で踊るのよ」

「いや、それもですけど……スカフ王子のパートナーですよ!? 結構大きな意味を持ちませんか!?」

「そんな期待してるようなものは無いってば。ノーナは分かってるでしょ。真昼の王子様が舞踏会に出ないと行けなくなったから、事情を知っていて都合の良い私が選ばれただけよ」


 ノーナもスカフ王子にかかっている呪いのことは知っているのでアラファはそのように言うが。


「その条件で言えばノーナだって一緒じゃ無いですか。事情を知っている女性って点では」

「……言われてみればそうね」

「それでもアラファ先輩が選ばれたってことは意味があるんですよ!」


 ノーナは結構野次馬気質だ。意味を持たせていこうとするが。


「そうかしらねえ? マギニスさんと良い感じのノーナをパートナーに選ぶのは忍びないって思っただけじゃないかしら?」

「っ、それは……」


 アラファからカウンターをもらってたじろぐ。


「もしくはただ単に鈍くさそうなノーナより私の方がダンスを踊れると判断したか」

「……言いますね。そこまで言って下手なダンスをみせたら嘲笑いますからね!」

「ふふん、まあ見ときなさいって」


 何だかんだで仲の良い二人は売り言葉に買い言葉でじゃれ合うのだった。






「さてと。この部屋ね」


 夕食を終えて、アラファは呼び出されていたスカフ王子の部屋を訪れる。


「来たか、アラファ」

「…………」


 迎えたのはスカフ王子。部屋の隅には護衛のマギニスが立ったまま控えている。




「早速だが明日の舞踏会のダンスについて叩き込むぞ」

「ええ、お願いします」


 呼び出された用件はそれだった。

 スカフ王子のパートナーとして舞踏会に出ることになったアラファは、上手く踊れなければ結局スカフ王子に恥をかかせることになる。

 正直知識は体育の授業でちょっと踊ったくらいで、この世界に来てからもとんと縁が無いことだけど……ノーナにも嘲笑われないように頑張らないと。




 夕方6時前にスタートしたダンスのレッスン。スカフ王子はおふざけ一切無く進めて、アラファも必死になって付いていく。

 一時間後。


「ふぅ……。どうにか形にはなりそうだね」


 ずっと動きっぱなしで流石に少し息の切れているスカフ王子。


「はぁ……はぁ……。いや、本当……エスコート込みでギリギリです……」


 肩で息をするアラファ。




「男性が女性をエスコートするのがダンスの基本だからね。気にしないでいいよ」

「でも大変じゃ無いですか?」

「まあ舞踏会に参加こそしたことは無かったけど嗜みとして時折レッスンは受けていたからね」


 涼しい顔をして言ってのけるスカフ。本当にハイスペックな人だ。


 そんなスカフ王子にただ一つ、玉に傷があるとしたら。




「っ、時間だ。少し離れていてくれ」


 時刻は夜7時。スカフ王子に刻まれた呪印が輝き出す。うっ、とかくっ、だとか苦悶の声を上げる中、強制的に魔力を消費させられて時間遡行魔法が発動。

 スカフは子供の姿となる。




「……初めて見ました」


 スカフ王子が呪いで子供になった状態こそ見たことはあるが、なる過程は見たことが無かったアラファ。


「はぁ……ふぅ……。ああ、すまないね。見苦しいところを見せた」


 どうにか取り繕うとしているスカフだが、先ほどまでのダンスレッスン以上の疲労で用意していた水筒から水を飲んで落ち着こうとしている。




「こんなに大変なことだったんですね。大丈夫ですか?」

「……何にしろこの状態じゃレッスンも無理だ。明日は頼むよ、アラファ」


 アラファの心配を意図的に無視して、スカフ王子は追い出そうとする。

 子供状態となり体格も背格好も変わった今のスカフとでは練習にならない。だからその前にどうにかレッスンを詰め込むしかなかった。そのためアラファに子供になる過程を見られるのは避けられなかった。


 あまり見せたくなかったんだけどね、スカフは内心で思う。




「……ええ、明日は役割を果たします。ですから――王子も役割を果たしてください」


 だがそんな一歩引いたスカフ王子に対して、アラファは一歩踏み込んだ。




「役割?」

「舞踏会も『私たちの問題』なんですから。情報の共有が必要です」

「……そうだね。ちょうどいい、僕もすぐには眠れそうにないと思っていたところだ」


 スカフ王子は部屋に設えられたソファに座り、アラファを手招きしながら宣言する。




「話そうか、僕がこの呪いを受けた時の話を」


次回、過去回。


大陸全土会議編も各国代表やら紹介を終えてそろそろ中盤突入です。

最近ちょくちょくブクマも増えていてありがたいです。このジャンルごった煮、作者の趣味100%な作品を読んでくださり感謝です。

これからも継続して読んでもらえれば幸いです。

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