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59話 お菓子なかわいい物好き


「どうやらお茶会は順調みたいね」


 お茶会が行われているガゼボを遠巻きに見守るアラファ。詳細な状況は分からないが、荒れていない様子が分かるだけで十分だ。


「オグネー将軍はケーキを……いえ『キイチュウ』を気に入ったかしら」


 アラファはお茶会の準備に当たって、オグネー将軍のプロフィールやエピソードに一通り目を通していた。

 戦場での活躍を始めとした将軍の勇ましさを補強するものばかりだったのを見て、アラファはちょっとした違和感を覚えた。


 アラファの脳内では言語化出来なかったが帝国によって印象操作や誘導は入っておりその辺りの作為を感じ取ったのだろう。


『こういう強くて硬派そうな人ほど、真反対なかわいいものが好きってのはよくあるはず!!』


 結局、アラファは勘という形でオグネー将軍が本当はかわいいものが好きだと判断した。それでケーキに砂糖菓子で作ったマスコットを乗せることにしたのだった。


 転生前の日本の記憶から引っ張ってきた、国民的作品のマスコットキャラ、黄色いネズミの『キイチュウ』。この世界に知る者はいないキャラのかわいさを思い知るといいわ……!




 実際アラファの目論見は上手く行き、オグネー将軍は『キイチュウ』を食べることが出来ないくらい気に入った。

 そうしてお茶会が終わりにさしかかろうとしたそのとき。




「アラファ・ステンス外交特務室長、ロチュ・バリエ事務官。お茶会にて先方がお呼びだ、着いてこい」


 ガゼボの方からやってきた王国の騎士団の一人が伝言を届ける。


「気に入られ過ぎちゃったかしら……」


 先方、つまりオグネー将軍から名指しで呼び出されたアラファ。面識も無く何かやらかした覚えも無いので、自分の作ったケーキが理由だろう。


「アラファは分かるけど……どうして私まで?」


 一緒に呼び出されたロチュがボソっと疑問を呟く。確かに気になるが呼ばれているのに待たせるわけにも行かない。

 アラファとロチュはその騎士団員に着いていってお茶会の会場へと足を踏み入れる。




「アラファ・ステンスです。今回のお茶会のお茶菓子を担当しました」

「ロチュ・バリエ。結界魔法の使い手」

「ポーディニア帝国の将軍、オグネーだ。急に呼び出してすまないな」


 挨拶をかわしあう三人。


「それで将軍、二人にどのような用件でしょうか? ……まさか何かやらかしたとか?」


 スカフ王子が質問する。王子も何故私が呼ばれたのか知らないようだけど……いや、その『アラファ……君ってやつはまた……!?』みたいな目線をこちらに向けるの止めてもらえませんか? 今回は何もしてませんって。


「それはだな……」


 オグネー将軍は言葉を濁す。そして護衛の人と何かやりとりを行う。




「………………」


 アラファの脳裏でお茶会が始まったときの違和感が再来する。

 やっぱりオグネー将軍に護衛なんておかしい。そもそも護衛なんていらないほどの強さだという話だし、他者に頼ることも少ない自立心の強い性格だったはず。

 だというのにこのお茶会という国と国の会談の場で、まるで護衛に判断を仰ぐように話しかけている。

 オグネー将軍が仕えるのはただ一人。帝国の皇帝だけだというのにどうして――――。


「まさか……」


 アラファの脳裏で点と点が繋がろうとしたそのとき。




「5分だ。秘密の会話をさせてもらう」


 オグネー将軍は右手を開いて挙げて、周囲に聞こえるように宣言する。

 そして。




「ロチュだったか。その魔法借りるぞ。

 模倣コピー魔法――絶縁結界、展開」




 オグネー将軍がその身に宿す模倣コピー魔法を発動。ロチュの結界魔法を模倣コピーしてお茶会会場のガゼボ、その中でもテーブル付近だけが立方体状の結界によって内と外に区切られる。


「な、何が起きて……!?」

「どういうつもりですか?」

「…………」


 おろおろとするアラファ、質問を投げるスカフ王子、警戒を露わにする護衛のマギニス。


「すまない。どうしても多くの人には知られたくなかったのでな」

「…………」

 オグネー将軍とその護衛。


 この五人だけが結界の内にあった。

 結界の外は真っ白で何も見えず、音も聞こえない。完全に断絶していた。




「助けを呼ばれないようにして……何かをするつもりですか?」


 突然魔法を使われて、このように密室に閉じ込められたのだ。しかも一緒に内にいるのは最高の武力を持った達人。どうしても裏の可能性まで警戒するスカフに対して。




「オグネーの言葉通りだ。余がこの場に来ていることを多くに知られたくなかった」


 将軍の護衛が初めて聞こえるような声で喋った。




「なっ!?」

「これは……!」

「やっぱり……」


 スカフたちが驚く中、オグネー将軍の護衛はその顔を隠していた兜を外すと30過ぎのくたびれたおじさんの顔が出てくる。


「余は…………いや、ここではいいですか。私はポーディニア帝国の皇帝……ってことに一応なっていまして。社畜だった私がどうしてこんなことになっているんでしょうか。……って嘆いている場合じゃ無いですね。

 名刺でもあれば良かったんですけど無いので自己紹介だけで失礼します。

 名前はシオタタケルといいます。皆さんからはソルト帝って呼ばれてますけどね」

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