57話 お菓子な帝国
13時から始まる2回目のお茶会。今度の相手は大陸南の大国、ポーディニア帝国。
アラファは控え室でスカフ王子のことを知らずに慰めた後、次のお茶会のお菓子準備も終えて、会場のガゼボを遠巻きに見守っていた。
そうしてまたも訪れる手持ち無沙汰な時間。
「ノーナ、聞きたいことがあるんだけど」
「ポーディニア帝国のことですか?」
「なんで分かったの!?」
「アラファ先輩の思考回路は単純ですから」
先ほどロチュに大統領について聞いてたのと一緒で、次のお茶会相手のことについて聞くのだろうと予想していた後輩のノーナ。
「単純……」
「父から何となくで聞いた話ですけど、大陸の南、ポーディニア地方では10数年前まで多くの国が乱立して覇権を争っていたそうです」
少し落ち込むアラファに構わずノーナは話し始める。
ノーナの父は騎士団の関係者だ。周辺諸国の情勢について夕飯の席で愚痴混じりに述べていた記憶を掘り返す。
「国が乱立……西のザフト連邦に村がたくさんあったみたいな話かしら?」
「国って言ってましたしそれよりは大きい規模かもしれません」
「へえ。でも今は帝国ってデカい国があるとしか聞かないけど」
「ですから10年ほど前に周辺諸国を統一して帝国とし、自らを皇帝とした人物が現れたようです」
「皇帝ねえ……強引で野心があって独裁者なのかしら?」
「そのイメージ偏ってませんか……? まあでも実際どうかは分からないんですよね、皇帝は滅多に人前に姿を現さないみたいですから」
「影の支配者ってタイプなのね」
「やっぱ偏ってません?」
「でもその皇帝が今回のお茶会に来るわけじゃ無いのよね?」
「共和国は開催地だったからトップも来れましたが、普通そう簡単に一国のトップが動けませんからね」
「王国だって王様じゃ無くてスカフ王子が来ているものね」
「ですから帝国の軍事のトップ、オグネー将軍が来ていて」
「そこはもうお茶会のゲストだから知っているわよ。筋肉がすごくて鍛えてる女性、強すぎて戦場の悪魔だなんて恐れられてるのよね」
「周辺諸国の統一するときにもすごい活躍したみたいですね。……そんなすごい女性相手にあのお菓子のチョイスで合ってるんですか?」
「私の勘よ。きっと気に入るはずだわ」
アラファは自信を持っていた。
そうして開始時刻13時前となった。
アラファも黙って見守る中、先ほどの共和国大統領と違ってちゃんと時間前に現れた帝国の一団。
「お初にお目にかかる。将軍のオグネーだ」
「ご挨拶ありがとうございます、王子のスカフです」
お互いのトップ同士が和やかに挨拶しながら握手をする。
さっきは相手が遅刻したり、始まったと思ったら何か騒然としたり散々だったけど、ちゃんと始まりそうで良かったわ。
遠巻きに眺めるアラファはホッとする。
そしてスカフ王子とオグネー将軍が席について、それぞれマギニスと帝国の方の護衛もその後ろに立つ。
「………………?」
その光景に少し違和感を覚えるアラファ。
ノーナにも言ったけど、どんなお菓子を振る舞ったらいいかを考えるためにオグネー将軍の人柄については事前に調べている。
自立心の高い女性、一人でも戦場を蹂躙するほどのすごい強さを持った人…………そんな人に護衛なんて必要かしら?
護衛は男性みたいだけど西洋の兜を被っていて顔は分からない。
男でもオグネー将軍よりも強い人だなんてそういないはずだし……事務官や秘書は別にいるし……どういうことかしら……?




