56話 反省
お茶会の会場を去り、控え室まで戻ってきたスカフ王子。その背後には護衛のマギニスが付き従っている。
部屋にはスカフ王子とマギニスの二人だけしかいない。
イスに座って腕を組み、目をつぶってうつむき考える体勢を取るスカフ王子。
誰も見ていないが直立不動で待つマギニス。
無音の状態がしばらく続いた後、ぽつりとスカフが口を開いた。
「マギニス……僕は間違ったことをしただろうか?」
「……いや。あの場面耐えていたとして、どうせ挑発は続いただろう。遅かれ早かれ同じ結果になっただけだ」
「……珍しいな。慰めてくれるのか」
「言ってるだろう、私は鬼では無いと。弱っているところに追い打ちをかける趣味は無い。貴様自身が一番事態を自覚しているだろうしな」
マギニスの言うとおりだ。
共和国のトップに対して剣を突きつける。あり得ない行為だ。もちろん共和国は待ち望んでいたと言わんばかりにこの件について責めてくるだろう。王国の立場が悪くなる。
それでも……ソップ大統領のあの非道な行為、見逃せるはずが無かった。
「………………」
落ち込んでいる暇はない。少ししたらポーディニア帝国との次のお茶会が始まる。立ち直らないといけないと……分かってはいるのだが……。
「ここにいましたか、スカフ王子」
そんな時にアラファが控え室にやってきた。
「アラファ……」
「お疲れ様です。遠くからでよく見えなかったんですけど、お茶会で何か問題が起きたんですよね?」
「……見えなかったのか?」
「え? あ、はい」
「それなら良かった」
自分の作ったお菓子を無碍にされたところなんて見るべきじゃない。ホッと息を吐くスカフ。
「良かった……?」
対してアラファはスカフが何に対して安堵しているのかよく分からず困惑する。どういう意味なのかとスカフの顔を見ながら考えていると別のことに気付く。
「スカフ王子、何か元気がありませんか?」
「へ?」
「ほーら、お菓子をあげるから元気を出すんですよー………………じゃなくてですね!」
自分で言い出しておいて、自分で否定するアラファ。
「何がしたいんだい?」
「いや、その、今のスカフ王子の姿がどうにも呪いで子供になっている状態と被って見えて……本当すいません」
この場には呪いを知る3人しかいないが今は仕事中だ。子供扱いしたことを詫びるアラファ。
「……ふふっ、本当君ってやつは」
「え?」
「ちょうどいい。お菓子をくれないかアラファ?」
「それはいいんですけど……」
ちょっといつもの様子に戻ったかしら、と思いながらアラファが取り出したのはいちご大福。
「これはさっきのお茶会にも出した……」
「はい。お茶会では一個ずつだけでしたからまだ食べ足りないんじゃ無いかって」
お茶会でバクバク食うものじゃないと一つしか無かったいちご大福。当然それだけじゃ足りなかったためアラファから受け取ると早速食らいつく。
「うん、おいしいぞ!」
「良かったです。スカフ王子も気に入ったみたいですね」
「当然だろう……って『も』?」
「貴様も気に入ったか。いちご大福、もっちりとした食感、控えめで上品な甘さのあんといちごの酸味が調和した最高のお菓子だ」
「マギニス……いつになく饒舌だな」
そうして束の間の休息は過ぎていった。




