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54話 お菓子な大統領


 午前10時前、天気は快晴なパラク宮殿、中庭。

 花の咲き誇る庭園の中心、川に囲まれた小島に堂々と存在する円卓と屋根だけある建造物。ここでお茶会は行われる。


「立派なガゼボですね」

「ガゼボ?」

「お茶会の会場の建物ですよ」

「あー、あれガゼボって言うのね」


 そんなおしゃれな名前があったとは。公園とかに似たようなのあったわねえ、くらいにしか思ってなかった。


 ガゼボには既にスカフ王子と護衛のマギニス、そして事務官や給仕の人が準備をしている。

 今回のお茶会のお菓子はもう準備して渡している。アラファとノーナは小島から離れた場所で見守っているという状況だった。




「最初の相手は大統領だったわね」

「共和国のトップにして、今回の会議の主催者。大物ですね……」


 アラファとノーナの会話。


 それにしてもノーナ、今朝は落ち込んでいたけど大分立ち直ったみたいね。昨夜何があったか気になるけど……何かマギニスさんに名前で呼ばれてたりもしたし……でもまた落ち込まれても困るし仕事中だ。後にしよう。


 とはいえ緊張感漂うガゼボに対して見守るだけのアラファは気が楽だったりする。特にすることは無いが遊ぶわけにもいかないというもどかしい時間。


「アラファ、ノーナ」


 そこに結界魔法の使い手ロチュがやってきた。


「ロチュさん、どうしたんですか?」

「私も暇だから」

「結界魔法はいいんですか?」

「こういう大っぴらで開けた場所じゃすることもない」


 ロチュも同様に暇を持て余して知り合いのアラファたちに声をかけたということのようだ。




「そういえばロチュさんに聞きたいことがあるんですけど」


 だったらちょうどいいとアラファが口を開く。


「何?」

「今回のお茶会の相手、共和国の大統領について聞きたいんだけど」

「私に?」

「昨夜、ロチュさん共和国の状況について詳しかったし知っているんじゃ無いかって」

「まあいいけど……何を聞きたいの?」


 仕事内容に関する雑談というこの時間にちょうどいい話を始めるアラファたち。




「そもそもだけど共和国の大統領ってどんな立場なの?」

「共和国で一番支持を集めた一番偉い人」

「支持を集めたって……どうやって判断するの? 偉いって何で偉いの?」


 昨日の話し合いで『選挙』のことを知らない様子を見てずっと気になっていたこと。


「アラファがどういう想定してるか知らないけど……そんなの精霊によるものに決まってる」

「精霊?」


 この世界の理を司る精霊。それが大統領にも関わってくるってこと?


「この地では水と雷の精霊が治める地域が隣り合っている。昔から争いが絶えなかった。それを鎮めたいという2体の精霊によって権能者って制度が作られた」

「権能者?」

「精霊はその地域に住む人々の全てを把握している。そこから一番支持を集めている人を判断して、権能者の地位を与えている。

 権能者は精霊の力の一部を代理で使用することが出来る。一部でもその力は絶大。だから人々は従って、今は大統領なんて呼ばれている」

「なるほど……」


 誰が一番支持を集めているか判断するのは精霊。人々の内心まで分かるなら選挙よりもよっぽど楽で公平なように思える。

 それで精霊から力が与えられて、力を持っている人にみんなが従う。


「ってことは今の大統領、ソップ大統領も人々の支持を集めてすごい人ってことなのね?」

「………………」

「って、あれ? 違ったかしら」

「あまり大きな声じゃ言えないけど、歴代でも一番駄目。無能で俗物」

「そんな人がどうして大統領に……?」


「大統領は水の精霊の地の出身だけど、裕福な生まれを活かして人々に金をばら撒いて自分を支持するように言って大統領になった」

「お金!? そんなの賄賂じゃない!? 精霊としてそれはいいの!?」

「良いも何も精霊はシステム。ただただ一番支持されている人に己の力の一部を貸しているだけ。善悪の区別を付けるシステムが無い以上そうなっている」

「杓子定規なのね……」


 公平だと思ったけどそうじゃなかった、不正し放題だった。

 まあそうね、国のトップがまともならあんな貧困な子供たちのこと放置したりしてないわよね……。


「そんな人とお茶会……スカフ王子も大変ねえ……」


 アラファが心配する中、時刻は10時になろうとしていた。




 お茶会開始は10時から。流石に黙って状況を見守る。


 が。


 時間になってもソップ大統領は姿を現さず。






「ああ、すまん。遅くなった」


 遅れること30分。

 謝罪の言葉こそ口にしている物のソップ大統領に悪びれた様子は無かった。


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