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53話 お茶会準備


 スカフ王子と護衛のマギニスは朝食を食べ終えて、その足でキッチンに向かう。

 本日のお茶会の相手に振る舞うお菓子についての最終確認をするためで、キッチンにはアラファとその後輩ノーナが――。


「ノーナは……どうしてノーナはあんなことをしてしまったんでしょう……」

「何があったのか知らないけど、ほら元気出してってノーナ」


 何やら慰められていた。




「おはよう、アラファ。それでこれはどういう状況かい?」

「あ、スカフ王子とマギニスさん。おはようございます」


 挨拶をかわしあう二人。


「マギニスさん……?」


 頭を抱えて俯いていたノーナがその名前に反応して顔を上げるとマギニスとちょうど視線が合う。


「ミガ……ノーナ殿。おはようございます」


 マギニスが小さく頭を下げると。


「マギニスさん……その……………………おはようございます」


 ノーナが顔を赤くしながら恥ずかしそうに、しかしどこか気まずそうに挨拶を返す。




「…………」


 その様子を分析するスカフ王子。


 ノーナ嬢の様子、嬉しさ半分、後悔半分といった感じかな。マギニスもしれっと名前呼びになっているし、説明だけじゃよく分からなかったけど進展があったことは確かなようだね。

 距離が近づいたのに後悔していることから見るに何やらヘンテコなことがあったようだ。色々根掘り葉掘り聞いてみたいところだけど、時間に余裕があるわけでも無い。役目を優先して…………いやその前に。




「アラファ」

「何ですか、王子?」


 今度はアラファの様子を分析する。


 昨夜、貧困層の子供たちを救う難しさに直面して落ち込んでいるといった話だったけど……どうやら落ち込んだ様子も空元気を出している様子も無い。いたって平常な状態だ。


「ロチュ嬢に話を聞いた。昨夜、プーナ神国の聖女と会ったようだね?」

「聖女……ってカプラ神官のことですか?」

「ああ……というかそれも知らなかったのか。プーナ神国の代表者だ、失礼を働いたりしてないだろうね?」

「あーそれは……そもそもそんなに相手にされてなかったですし」

「……問題に直面して落ち込んでいるかと思ったけどやけに落ち着いているね?」

「それなら大丈夫です! 色々考えてやることは決めましたから!」


 ふんす、とこぶしを握ってみせるアラファ。

 やることは決まった……? 共和国の現状に深く根差した貧富の差の問題。そう簡単に対応策や解決策が思い付くような問題じゃ無いと思うが……。

 まあいい、僕には関係ない話だ。




「それなら本題だ。あと少しで一回目のお茶会が始まるけどお菓子の準備は出来ているかな?」


 話題を変えて本題に入るスカフ。


「それならばっちりです。最初のゲストにはこのいちご大福をお出しする予定です!」

「ほうこれは……今まで見たこと無いタイプのお菓子だね」


 いちご大福を初めて見るスカフ。


 白く柔らかそうな生地の中に、黒い何かが包まれている。いちご、というと赤い果物だ、どちらの生地にも練り込まれた様子は無い。つまりあの黒い層の中にいちごが入っている……? ちょうど大きさ的にも一個入りそうで……だとするといちご、黒、白の三重のハーモニーが生み出されるわけで……。


「これはおいしそうだね」

「今食べますか?」

「いや、お茶会でゲストと一緒に味わうとするよ」


 気にはなるが今食べるとすぐにもう一個食べることになる。どうにか我慢するスカフ。




「お茶会……ですか。ついに始まるんですね」

「アラファでも緊張するのかい?」

「緊張……よりワクワクの方が勝るかもしれません。ここ最近ずっと準備していた私のお菓子が偉い人たちに通用するか……」


「そうか。まあ自信が無いよりあった方が良いからね」

「スカフ王子も対談頑張ってくださいね」

「まあ上手くやるよ。最初のゲスト――共和国の頂点、ソップ大統領は曲者だろうけどね」


 スカフは軽く返す……がその握りこぶしには少し力が入っていた。


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