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51話 お菓子な宗教


「お菓子が……無益な物って……」


 カプラ神官の言うシエモス神の教えに衝撃を隠せないアラファ。


「過ぎたる欲は争いを生みます。ですからそれはしまってください」


 そんなアラファの様子などお構いなしに毅然としているカプラ神官。




「……そんなことあるはずないでしょ」


 いちご大福をしまうように言われたアラファだが、到底従う気にはなれず突っかかる。


「何がですか?」

「日々の楽しみや生きる希望にもなるお菓子が無益なはずがないわよ!」

「……なるほど異教徒ですね」


 嘆息を吐くカプラ神官をアラファは無視して、廃墟の中庭の中央辺りまで駆けて行き。


「みんな、お菓子があるの! 食べたい人は誰でも来てちょうだい!」


 持っているお菓子を全部出して、廃墟中の子供たちに大声で呼びかける。


 子供たちは先ほどカプラ神官からシエモス神の教えを聞いた。お菓子が無益だとも教わっている。

 しかし誰もが空腹だったのも事実だった。

 ここにいる子どもたちは行く当てがなく、犯罪や酷い条件の仕事で日々どうにか食いつなぐのに必死で貧乏でいつも空腹だった。

 最初こそ戸惑っていたが目先の欲には逆らえずに。


「なーなーお姉ちゃん、本当にいいのか!」

「これもらうね!」

「ありがとうございます!」


 お菓子に子供たちが群がり始める。




 目を輝かせてお菓子を食べ始める子供たちを見てアラファは満足だった。

 さっきまでの生気の薄かった雰囲気から一転、こんなにも活気に溢れている。やっぱりお菓子は無益なんかじゃ無いわよ!!


「やはりこうなってしまいましたか……。それにしても、どうしてこんなにたくさんのお菓子を持っているのですか?」


 そんなアラファのところにカプラ神官がやってくる。


「私がお菓子職人だからよ!」

「なるほどそうでしたか。自分の誇りを無益だと断言されたら反発も仕方ありませんね」

「ふふーん、見なさい! これで分かったでしょう、お菓子が無益なんかじゃないってこと!!」


 勝ち誇るように言うアラファに対して。




「ええ、分かりました。――やはりシエモス神の教えは正しかったと」


 しかしカプラ神官は態度を崩さない。




 負け惜しみだと思ったアラファはさらにお菓子の素晴らしさを説こうとして。


「えーこれだけ?」

「もうないの?」

「それよこせよ!」


 先ほどまでの和気藹々とした雰囲気から一転、子供たちから文句や争いの声が聞こえてくる。

 こんなことになると思っていなかったからカバンに入れていたお菓子もそんなに無かった。もう手持ちのお菓子は一つも無い。


「子供たちが飢えていたことは私も承知していました。だからといって簡単に与えればいいというわけではありません。中途半端な施しは飢えを再認識させたり争いを生む結果しか出しません。あなたはこの事態を予測していましたか?」

「それは……」

「問題を根本的に解決する方法、それは欲を捨て去ることでした。

 ……ですがあなたが悪いとは言いません。私が真にシエモス神の教えを子供たちに布教出来ていれば済んだ話。まだまだ精進が必要ですね」


 カプラ神官は敵愾心を向けてきたアラファに対して何も言わず、己の力不足を嘆きながらその場を去って行った。


「………………」


 アラファはそれを黙ったまま見送る。


「ねえねえお姉ちゃん。もうお菓子無いみたいだけど、次はいつ持ってこれる?」

「本当は隠し持ってるんじゃないの?」

「私、ケーキ食べてみたい!」


 口々に要求してくる子供たちに対しても、何も答えられなかった。


1日目終了、次回から2日目です。


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