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46話 護衛な休息


「明日の夜まで外に出れないが大丈夫だな?」

「ああ、大人しく寝ておくよ。明日からのお茶会が本番だしね」

「ならいい」


 マギニスは子供状態のスカフ王子に最後の確認をして部屋を出ると、ガチャリ、と内側から鍵を閉める音がした。

 呪いで子供状態となったスカフ王子の姿はトップシークレットだ。誰にも見られるわけには行かない。王国なら厳重な警備が敷かれているが、ここは共和国。敵地であり何が起こってもおかしくない。

 だからこちらも取れる手段を取っておく。


「その部屋に結界をかければいいの?」

「バリエ殿、よろしく頼む」

「ん、分かった」


 現れたのは事前に呼んでおいた結界魔法の使い手で寡黙な女性、ロチュ・バリエ。王国から使節団の一員として同行している。

 マギニスとロチュは結界魔法の使い手ということで頼み事をしたりで、何度かやり取りはしたことはある関係だ。


 ロチュは小さく頷くとスカフ王子が泊まる部屋のドアを人差し指の甲で叩く。すると扉に薄い光の波紋が広がって霧散していく。


「終わった。これで私が解除するまで誰も出入り出来ない」


 部屋に結界を張ることで内外の出入りを断絶する。これで何があっても子供状態のスカフ王子の姿が露見することは無い。


「ああ、また明日の朝に解除を頼む」

「了解」


 ロチュが無表情で頷く姿についマギニスは口を開いた。


「気にならないのか? 何故こんなことをさせられているのか?」

「……別に。私は言われたことをするだけ」


 ロチュはスカフ王子の呪いのことを知らない。今回も夜に結界を張って、朝に解除して欲しい、とだけしか伝えられていない。

 普通なら何のためにそんなことをさせられるか気になるだろうがロチュは本気で気にしていないようだ。


「仕事人だな。私も精進しなければ」

「本当に興味ないだけだから」


 ただただそっけなくロチュは呟いた。






「さて……これからどうするか」


 マギニスは口元に手を当てて考える。

 朝、王国を出発してから、共和国に着いてからもずっと王子の護衛としていつも以上に気を張っていた。しかし王子は就寝して、しかも結界内にいるため絶対に問題が起きることが無い。

 張り詰めていた気が一気に緩むのを自覚する。


 束の間の休息……明日からもまた激動だ、休めるときに休んでおかなければ。

 とはいえここは共和国の地。いつもと違う場所でどのように休めればいいか?


「それじゃ私はキッチンに行くから」


 ロチュが片手を挙げて去って行こうとする。


「キッチン?」

「アラファに呼ばれてる」


 マギニスが聞くとロチュは端的に述べる。


 ステンス殿が? ……そういえばグズモ党に新しいお菓子の材料を頼んでいたはずだ。それで作ったお菓子を結界魔法で保存するのだろう。


 マギニスはお菓子を思い浮かべたところで自然と『食べたい』と思っていた。護衛の合間に軽食をつまんだ程度でお腹は減っている。疲労から糖分も欲していた。


「…………」


 ステンス殿とはほとんどあの馬鹿経由での付き合いとなっている。その本人がいないのに私だけで行っても……いや、彼女は気にせずお菓子を振る舞ってくれるだろう。


「私も同行していいか?」

「……別に断る権限はない」


 二人は連れ立ってキッチンに向かうのだった。




 キッチンにて。


「来た」


 ロチュはそれだけ言いながら中へと入る。


「あ、ロチュさん! ちょうどいいところに来たわ! こっちのものに結界頼めるかしら!」

「分かった」


 アラファ・ステンスに呼ばれて早速頼みをこなすロチュ。


「それと……マギニスさん? ええとスカフ王子は……あ、もうこんな時間か。なら一人で……もしかして何か起きましたか!?」


 アラファは時間も忘れてお菓子を作っていたようだ。王子が子供になっていて来れないことは察したようである。

 それなのに一人でやってきたマギニスにアラファは問題か仕事でも持ち込まれるのか、と警戒をするが。


「いや、ここには休息にやってきた」


 マギニスはそれを否定する。




「休息に……珍しいですね」


 後輩のノーナ・ミガヘも同じようなことを思っていたようで目をぱちつかせる。


「そうだな珍しい自覚はある。良ければ何かお菓子でもいただきたいところだが……取り込み中ならお暇するが」

「いえいえ! そんなこと無いです、ちょうど一段落したところだったので!」


 ノーナはぶんぶんと手を振って歓迎の意を伝える。




「マギニスさんが………………あれ、この状況ってもしかして……」


 アラファも意外そうな表情だったが、すぐに腕を組みながら考え出す。


「……?」

 ステンス殿の様子がおかしい。……いやそれはいつものことだが。

 私とミガヘ殿を見比べて何やら悪い笑みを浮かべているが……何かあの馬鹿を思い出す仕草だな。本当似た者たちだ。


 マギニスに観察されてるとは露知らず、アラファは自身の悪巧みをまとめると行動に移す。




「ロチュさん! 結界魔法終わったかしら」

「もうとっくに」

「ならちょうどいいわ! 夜の町に出たいんだけど一緒に来てくれるかしら!」

「私と?」

「そう、結界魔法で警護して欲しいの!」

「それくらい良いけど……私もお菓子を」

「それならたくさん持って行くから!」

「ならいい」


 アラファはロチュの腕をぐいぐい引っ張ってキッチンの出口まで向かって。


「じゃ、そういうことだから!! ノーナ、あなた一人でマギニスさんをもてなすのよ!!」


 急なことに付いて行けてない様子のノーナをビシッと指さすとロチュと一緒に去って行く。




 後に残されたのは二人。


「え、……ええええっ!?」

「…………?」


 ほんのりと顔を赤くして叫ぶノーナとそんなに急に外に出て行きたくなったのか? と首を捻るマギニスだけだった。


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