45話 一日目夜
大陸全土会議、一日目の夜となった。
大陸の各国はそれぞれ共和国入りを完了している。
一日目は特に大きな動きは無く表面上は平穏だった。だが会議本番となる四日目に向けて水面下で動いているだろう。
スカフ王子とマギニスも協力者との会談や共和国の現状の視察などを終えて、パラク宮殿の東棟、スカフ王子に当てられた一室に帰ってきていた。
「はあ、疲れたね」
「そうだな。今日はゆっくり休め」
夜になるギリギリまで動いていたため、部屋に辿り着いて少しした時点で王子は呪いで子供状態となっている。
その状態でベッドに寝転ぶスカフに対してマギニスは労いの言葉をかける。
「どうしたんだい、マギニス。いつもなら一つや二つ、小言を言うところだろう?」
「何、今日の貴様は頑張っていた。特にミスも無かった。それだけだ」
実際ずっとスカフは集中して仕事をこなしていた。マギニスがいつもこうなら手間もかからないのにと思うほどに。
「……おかしい。あの鬼のマギニスが優しい、だなんて」
背筋がぞわぞわしてくるスカフ王子。
「全く、人の親切を疑うとは。……ならちょうどいい、一つだけ思いだしたことがある。ステンス殿を舞踏会のパートナーに誘ったときのことだ」
「げっ、藪蛇だった……」
スカフ王子が顔をしかめるが、既にマギニスは詰めモードに入っている。
「貴様はザフト連邦でステンス殿が呪いのことを知っているだけの部外者だとそれ以上関わることを拒絶した。なのに今回呪いのことを知っているからと協力を申し出た。筋が通ってないぞ」
「それは……分かっている」
マギニスの手痛い指摘にスカフはバツが悪そうにしている。自覚はあるのだろう。
「どうするつもりだ?」
「アラファが望むなら打ち明けるつもりだ。
十数年前、この地――共和国で僕がゼラフに呪いをかけられたときのことを。
マギニス、君にも関係することだけどいいかい?」
「貴様がいいなら、私は構わない。ステンス殿は関わりすぎている。情報は共有して置いた方がいい」
マギニスが頷いてこの件は終了…………のはずだったが、マギニスには少しだけ気になったことがあった。
「ところでどうしてステンス殿にあのような誘い方をした?」
「……? どういう意味だい?」
「別におちゃらけて『君が一番僕のパートナーにふさわしいと思ったんだ』と軽薄さを押し出して誘ったり。
単純に外交特務室に入り浸って仲は良好なんだから『パートナーのいない僕をどうにか助けてくれ』と同情を誘ったり。
いくらでも方法はあったはずだ。そのどれを取ってもステンス殿なら勘違いせずに呪いのことを知っている自分が選ばれたのだと理解するだろう。
別にクソ真面目に事情を知ってるからと頼む必要は無かったはずだ」
マギニスの疑問に対してスカフは。
「確かに……その通りだね」
呆気に取られた表情を取りながらあっさりと肯定した。
「認めてどうする……思い付かなかったのか?」
「そうだね……いやはやどうしてこんな簡単なことを思い付かなかったのかというと…………」
スカフは自分の内面を探索する。
どうしてアラファに対してストレートにパートナーになってくれと言えずに、呪いのことを知っているからちょうどいいと曲げたのか。
それは。
アラファのことをパートナーに誘うことが気恥ずかし――――。
「…………いやいや、そんなことない。ただのポカミスだね」
「……?」
スカフが頭を振ってその自問自答を忘れる様子を、マギニスは怪訝そうに眺めるのだった。




