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43話 お菓子なやりとり


 舞踏会におけるスカフ王子のパートナーがアラファに決まった。

 その様子を見守っていた三人のそれぞれの反応は。


「そう誘うのか」


 マギニスは特に感情も見せずポツリと一言。


「おうおうスカフにもようやく春が……おっちゃん嬉しいで」


 ゲンツはほろりと流れていない涙を拭う仕草を見せて。


「むう……何か思った感じじゃなーい」


 サミーは思惑が外れてふくれっ面だった。






「な、何かすごい注目されてるわね。あはは……」


 アラファは今さらながらに少し恥ずかしくなってきて、スカフと握っていた手を外してパタパタと上下させて顔をあおぐ。

 そのまま誤魔化すように早口で続ける。


「協力するのはいいんですけど、私何も準備していませんよ。舞踏会に出るドレスも無いし、ダンスも知らないし……あっ、ちょっと最近太……ふくよかなんですけど、えーこれで人前に出るのは……」


「ドレスなら心配ない。アラファの分を王国から持ち込んでいる」

「え? ……もしかして私が断らない前提で動いてました?」


「最悪珍しいお菓子でも交換条件にして参加してもらうつもりだった」

「そこまで私チョロくないですからね!?」


「ダンスは僕も人前で踊ったことはないけど、一通り基礎は叩き込まれている。エスコートするよ」

「それは安心ですが……」


「そして太っているのは……アラファの自業自得だ。僕の関与するところじゃない」

「酷い! 太ってるんじゃありません、ふくよかなだけです!! それにスカフ王子のせいで人前に出ないといけないんですから関係あります!!」

「はははっ!」


 スカフ王子とアラファの軽口の応酬。


 色々酷いことも言われているがアラファは安心していた。私と王子はこれくらいの距離感がちょうどいいわよ。さっきまでの雰囲気は……うん、重すぎるし。




「あ、すいません。お話中なのに身内でやりあってて」


 ちょっと盛り上がりすぎたか、とアラファはゲンツとサミー両名に謝る。


「いいよー。どうせ緩い場だし。それにしても……スカフちゃんとアラちゃんはそんな感じなのね。これはこれで面白そうかも☆」

「……?」


 サミーが面白がっているがアラファは何のことか分からなかった。




「僕ばっかり話題に上がって不公平だな。ゲンツ、君も党首だ。舞踏会に参加するんだろう。パートナーは決まってるのか?」


 スカフ王子がゲンツに聞く。


「あーそれが難航してな。意外かもしれんけど、こう見えてもワイは女友達こそ多いけど、決まった相手はおらんくてな」

「いや、その軽薄そうな見た目通りだね」


「何おう。……まあでも声かけていけば誰か一緒に出てくれるやろ、とバンバン誘っていってな」

「そんな態度だから断られるんじゃないか」


「ちゃんとその瞬間は誠実を装っとるわ! それに仮にもワイはグズモ党の党首やぞ。打算的でも近づいてくるやつがいてもおかしくない立場や!」

「自分でそこまで理解しているのが賢いのやら、悲しいのやら」


「でも……それこそ数十人には誘いをかけたのに誰も首を縦に振らんくてな」

「よくそこまで人脈があったものだ。しかし……」




「中にはよく分からんけどワイに怯えて逃げ出す者とか『パートナーになったら酷いことになるって言われてるので……!』とかよく分からんこと言って断ってくる者もおってな。

 流石にそこまで自分に魅力が無かったのかと落ち込んでいるところに、サミーが声をかけてくれてな」

「誰もいないならあーしがパートナーになってあげるって言ったの☆」


「そういうわけでサミーと一緒に出るつもりや。……いやー本当にサミーには感謝してもしきれへんで。惚れてまうかと思ったわ」

「もうーゲンツったら、しょうがなくなんだからね」


 目をつぶって腕を組みうんうんと頷くゲンツ。

 言葉とは裏腹に恍惚とした笑みを浮かべるサミー。




「…………」

「…………」


 アラファとスカフ王子は顔を見合わせて。


「ええと、王子。サミーさんってゲンツさんの秘書なんですよね?」

「そうだね」


 コソコソと会話を始める。


「ということはゲンツさんの交友関係も」

「把握していておかしくないね」


「じゃあその女友達一人一人に声をかけることも」

「可能だろうね。党首の秘書という立場を使えば『パートナーに誘われても断れ』って脅すのも簡単だろう」


「…………ええと」

「愛の形は千差万別ってこと……なんじゃないかな?」


 スカフ王子が当たり障り無くまとめたけど……まあ当人たちの問題よね(現実逃避)。






「っと話が脱線しまくったな。一応真面目な話もしとこうか」

「そうだね。協力体制の確認をしておこうか」


 その後、ゲンツとスカフ王子が先ほどまでとは打って変わった会話を繰り広げる。

 サミーはときおり口を挟んでいたが、アラファは一気に付いていけなくなったのでぼーっと聞き流して時が過ぎるのを待つ。




「――と、こんなところかな」

「ああ。後はお互い頑張ろうな」


 スカフ王子とゲンツが立ち上がって握手したのでアラファも慌てて立ち上がる。


「さて名残惜しいけどそろそろお暇しようかな」

「まあ会議期間中にまだまだ会えるやろ。いやあしかしワイが王国に行ったのは何回かあるけど、スカフが共和国に来たのは子供の頃以来やな」

「っ……」

「あの頃は『真昼の王子様』なんてスカした名前も無くて本当可愛い子供だったよな」

「……ああ、そうだな」

「いや頷くんかい!? そこは『おまえも子供だったはずだろ!』ってツッコむところやぞ」


 ゲンツとスカフの会話が乱れる。


 アラファはちょうどスカフ王子の表情を見ていたが、子供の頃に共和国に来たことがあるという話題が出ると同時に微妙に表情が歪んだのを見て取った。

 珍しい様子だったけど……子供の頃、そしてその頃は『真昼の王子様』じゃなかったってことは…………もしかして……。




「なんか調子狂うな……」

「あっそういえば言うの忘れてたけど、頼まれていた食材、王国が泊まる東棟に既に運び込んでおいたはずだよー。あれってたぶんアラちゃんが希望した物だよね?」

「本当ですか!?」


 サミーの言葉にアラファが目を輝かせる。


「うん。……でもそんな珍しい物じゃないよー」

「いや王国では中々手に入らないもので……あー早速試したいわね」


 アラファが頼んでいた物。

 それはもちろん新しいお菓子を作るための材料である。


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