41話 お菓子な共和制
「はるばるスート共和国までようこそやで」
「長旅お疲れさまー」
スート共和国最大野党、グズモ党の党首のゲンツと秘書のサミー。
「歓迎感謝するよ」
パラク宮殿の中央本殿、その中にあるグズモ党の応接部屋にスカフ王子、マギニス、アラファの三人は招かれていた。
「わ、私も座って良いんですかね?」
スカフ王子と並んで座らされたアラファがコソコソと聞く。いつも気安く接しているため勘違いしそうになるが、スカフは王子でアラファは菓子作りメイドくらいの立場でしかない。同列に扱われることに居心地が悪くなるが。
「相手方が良いと言っているんだ、気にするな」
「せやで、せやで。ワイらの間柄なんや。堅苦しいのは無しで行こうや」
スカフ王子と聞こえていたようでゲンツも気にするなと言ってくる。
「マギニスも疲れたら座ってええんやで」
「遠慮しておきます。私の職分は護衛ですので」
スカフとアラファの後ろでマギニスは立ったまま断った。
「お茶入れたよー。お菓子はそっちが用意してるんだよねー」
カップをそれぞれ配った後にサミーはゲンツの隣に座る。
「ああ。アラファ頼む」
「お口に合うと良いんですけど……」
アラファはおずおずと持ってきた箱を開けて中のシュークリームをゲンツ、サミー、スカフ王子に配る。マギニスは『仕事中なので』と断った。
「こ、これは……ウマい!!」
「おいしー☆」
早速頬張ったゲンツとサミーが絶賛する。
「おいしいな。いつもと同じシュークリームかと思ったら……クリームが違うね」
「はい。イチゴを練り込んだホイップクリームも入れました」
ザフト連邦産のイチゴはシュークリームの中にあってもきちんと味を主張している。色々ゴテゴテした味だが若いなら十分に堪能出来るだろうというアラファの読みは当たっていた。
「なるほど。本当ザフト連邦の精霊祭を丸く収めただけの腕はあるなあ」
シュークリームを食べながらゲンツがしみじみと言う。
「え、知ってるんですか?」
「それなら僕が報告した。言っただろう、懇意にしているって」
「スカフとは昔から知り合いやし、目指すところも似てるからなあ」
昔からの知り合い……確かに気の置けない関係だとは思ったけど。でも目指すところって……?
「僕の目的は『世界平和』そして彼らの目的は『格差の是正』なんだ」
スカフ王子の表向きの目的とグズモ党の目的。
「水の精霊の民も雷の精霊の民も同じ共和国に生まれた人間のはずやろ。それなのに一方が謳歌して、一方が搾取され続ける現状はおかしすぎる! 絶対にあのソップ大統領……狸ジジイを破ってワイが選ばれるんや……!!」
ゲンツが語る熱い思い。
ソップ大統領……って人は知らないけど、大統領って言われる辺り共和国のトップなのだろう。
ハルカネン王国はその名前の通り王様が治めているけど、スート共和国はその名前の通り共和制で……共和制って何だっけ?
よく分かんないけど大統領がいるって事はアメリカとかと同じってことかしら。そういえばそもそも野党の党首だって紹介だったし。
「ええと……選挙で勝つってことですか? 頑張ってくださいね」
ふわっとした知識で話の相槌を打つアラファだったが――。
「……はあ?」
「選挙……って何だそれは?」
ゲンツとスカフ王子が首をかしげてアラファの方を見る。
え、あれ? 私そんなにおかしなこと言ったかしら? 大統領になりたいって話なら選挙で………………いや、ちょっと違うような。
スカフ王子の反応はそもそも選挙という存在について聞いているように思える。だとしたら……もしかしてこの異世界には選挙が存在しない?
だとしたらどうやって大統領を決めるの? 選ばれてって何に?
「ねえ、政治の話ばかりつまんなーい」
そのとき机に上半身を投げ出しながらサミーが話の流れをぶった切った。
「いやおまえ秘書やっておきながらよくそんなこと言えるな」
「つまんないものはつまんないもん。アラちゃんもそう思わない?」
「ア、アラちゃん……って私ですか?」
アラファを縮めてアラちゃんなのだろう。初対面なのに距離感の詰め方が早い人だ。
「じゃあ何の話するんや?」
「それは年頃の女の子らしく、さっき食べたシュークリームヤバウマかったとか、あとは色恋の話とか。ねえアラちゃんも興味あるでしょー?」
「ありますけど……でも誰の話をするんですか?」
一応公的な場なのに奔放な言動の娘だなあ、とアラファが思っていると。
「それはもちろん、スカフちゃんに決まってるでしょ! ねえ、舞踏会のパートナー誰にするか決めたの?」
「っ、それは……!?」
さらに爆弾をぶっ込んできた。




