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40話 お菓子な到着


「きれいねえ……」


 長時間の移動を終えて馬車から降りたアラファはスート共和国の心臓、自分がこれからの会議期間を過ごすパラク宮殿を見上げる。

 ところどころに装飾が施された巨大な建物、敷地内には川が引き込まれておりその周囲の庭園も手入れがされている。

 王国の王城が質実剛健なのに対して、こっちの宮殿は華美流麗といった印象だ。


 到着したことで馬車から荷物を下ろし始める。宮殿の東、キッチンや寝室、応接室など十分に揃った一棟の建物を王国が使用していいらしい。

 ここで寝泊まりしたり、お茶会を開いて各国の会議参加者と交渉したりして四泊五日を過ごす。当然荷物もかなりの量になり運んでいる人たちをアラファも手伝おうとして。




「アラファ。着いて早速だが人と会う、付いてきてくれ」


 スカフ王子が目の前に現れた。


「人と会う……お茶会ってことですか? でもそんなすぐ準備なんて……」

「いや、今回は向こうから招かれる形だ。準備はいらない……が手ぶらでは格好が付かないだろう? 何か手土産にちょうど良いお菓子を見繕ってくれないか?」

「なるほど……お相手は?」

「僕らと同じくらいの若い男女二人だ」

「だったら……これがいいかしら」


 アラファは荷物を漁って箱を取り出す。中身は既に出来上がったお菓子が結界魔法で時を止めて保存されている物だ。


「よし、では行こうか」

「…………」


 スカフ王子が先導するとその背後に護衛のマギニスも付き従う。


「あ、先輩。早速ですか、頑張ってくださいね!」


 荷物を運んでいるノーナが気付いて見送る。結構多い量の荷物を持っているが……おそらく周囲にバレない範囲で『怪力』の魔法を使っているのだろう。


「行ってくるわ」


 アラファもスカフ王子とマギニスの後を付いていった。






 三人が向かう先はパラク宮殿の中央本殿。王国が借りている東棟よりも一際大きく、一番デカい建物だ。


「ステンス殿。今回の会議のスケジュールは覚えているか?」


 その道中、珍しくマギニスから会話が始まる。


「流石に私もそれくらいは覚えてますよ。今が既に一日目の昼過ぎ。今日は特に大きな予定も無く、長時間の移動で疲れた身体の休養。二日目は各国の代表者たちとお茶会で夜には舞踏会。三日目も引き続きお茶会で、四日目に本会議が開かれる。そして五日目で帰国……って感じですよね?」


 仕事に関わることなので事前に叩き込んでいる。

 それにしても何でこんなことを聞くのかしら……?




「ああ、その予定……のはずだった」

「だった?」

「昨日急遽通達されたことで全体への周知は後ほど行う予定だったが、先方の都合で舞踏会が二日目夜から延期され三日目の昼へと変更となった」

「はあ、変更に。それは急なことですね……」


 こんな大規模なイベントで前日に予定変更するとはよっぽどのことだけど、だとしても舞踏会って私はただ料理を食べるだけだし特に影響は無いような……。




「マギニス、その話今するつもりかい?」


 珍しくスカフ王子は焦った様子だ。


「早ければ早いほうが良い」

「それはそうだけど……物事には順序があってだね」

「だから今順序を踏んだところだ。ほら」


 マギニスがスカフに話を促している――のだがアラファの興味はそのときちょうど目に入った物に奪われていた。




「何、あの像!? すごいデカいわね!」


 中央本殿でも一際大きな部屋に出たところで、そこには二体の巨大な精霊像が飾られていた。


 一体が雄々しく荒々しい精霊。もう一体が柔和で美しい精霊。


 5mほどの像が向かい合って建てられており、その二体の間に球体が存在するといった様子だ。




 共和国には雷と水の二体の精霊がいるとは聞いている。こっちのかっこいいのが雷の精霊で、きれいなのが水の精霊ね。

 どちらも敵意は無さそうな表情で相手を見ているし争っている感じではない。

 ザフト連邦でも祭りの広場に巨大な精霊像があったのと同じようなものだろう。でもその間にある球体は何かしら……?




「ほうほう、この精霊像に目を付けるとはお目が高い」


 アラファが精霊像を見上げていると声がかけられる。そちらの方を見るとノリの軽そうな男が片手を挙げていた。


「何しろこの像はただの像では無くてな……昔々、この地では…………」


 話を続ける男にアラファがどう返事すれば良いか迷っていると。




「ゲンツ。迎えに来てくれたのはいいが……その胡散臭い老人仕草はなんだ」

「何や、面白くなかったか? ……いや、うん面白くなかったな」


 スカフ王子が勝手知ったる様子で名前を呼ぶ。どうやら知り合いのようだ。


「あーしもいるよー。やっほー、スカフちゃーん」


 ゲンツと呼ばれた男の背後からひょっこりとまたノリの軽そうな女性が顔を出す。 




「ええと……若い男女、それに迎えってことは……」


 アラファはスカフにこそこそ聞く。


「ああ。僕らを呼んだ相手。共和国最大野党グズモ党の党首ゲンツとその秘書サミー。共和国内では僕ら王国と懇意にしている勢力だな」


 スカフはそのように紹介した。


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