39話 スート共和国
共和国編開始!
スート共和国に向かってハルカネン王国を出発した馬車一団。
幾台もの馬車が連なって移動する姿は壮観で、沿道の人々がわざわざ見に来るほどである。
その馬車団の中程、一番装飾が豪華な馬車の室内には。
「はぁ……暇だね……」
スカフ王子が一人、ため息を吐いて窓の外を眺めていた。
王国内を運行している間はまだ良かった。外の風景にも変化があったから。
しかし王国の関所を通過してからは一変、スート共和国内に入ってから風景は濃い緑が続く変わり映えのしないものとなってしまう。
国境のこの辺りは深い森となっていて野盗が現れやすいポイントとなっている。マギニスはそれらに警戒するために騎士団と一緒に別の馬車に詰めていた。
アラファたちは今回正式に使節団の一員となったため、おまけとして付いてきたザフト連邦のときとは違って別の馬車に乗っている。
そういうわけでスカフは広々とした貴賓用の馬車で一人だった。
「まだあと数時間かかる……退屈だね……」
独り言を呟いても返ってくる言葉が無い。
そんな虚無の時間を耐えていると少し変化があった。森を抜けたのだ。警戒していた野盗が現れなかったことにホッとして広がる風景を眺める。
「のどかだけど寂しい場所だね……」
ところどころに家や人が見えてきて本格的にスート共和国内に入ってきたことを実感する。
ただこの辺りに広がるのはほとんど田んぼであった。
共和国ならではの風景だね。王国内にあるのはほとんど畑。水に不自由しないからこそ田んぼというのは成立する。
それも全て精霊の力のおかげだ。
この辺りを治めているのは水の精霊……ではなく雷の精霊だ。
雷の精霊。その名前の通り自然に恩恵をあまりもたらさない。今でこそ田んぼが広がっているが、それも人々が努力した結果で元々はかなりの荒れ地だっただろう。
安定しているハルカネン王国の光の精霊。豊穣をもたらすザフト連邦の地の精霊。
それらと比べて雷の精霊の特徴は人々に魔力をもたらす。
この地に生まれる人間は精霊の恵みによって大きな魔力を持って生まれやすい。魔力が大きいことの利は大きく、戦えば魔法の出力は高く長く使えて、戦闘以外でもより多くのことが出来る。
人材として優秀になること間違い無しだ。
そのことがこの国を歪ませている遠因の一つなのだろう。
しばらくして馬車団が田園地帯を抜ける。すると打って変わって建物や人の往来の多い栄えているエリアとなった。
この辺りを治めているのは水の精霊だ。
そう、共和国には二つの精霊が存在している。
現在の状態になるまで色々あったらしいが。
寂れて田んぼが広がるばかりだがときおり良い人材の生まれる雷の精霊が治める地域。
そして水こそ提供するがその代わりと言わんばかりに作物も人材も吸い上げて栄えている水の精霊が治める地域。
そんな明暗きっぱり分かれた地がスート共和国だ。
当然その地に住む人々の考えも様々であり。
「まさに思惑渦巻く大陸全土会議の会場にぴったりだね……」
見えてきた一際大きな建物。
パラク宮殿。
共和国の中心にして心臓部。ここで四泊五日、僕らは過ごすことになる。




