36話 お菓子な前日
時は過ぎて大陸全土会議のため共和国に出発する前日となった。
「これで準備は終わりですね、先輩」
「そうねえ、あとは出たとこ勝負ってとこかしら」
ノーナとアラファは外交特務室で荷物の最終チェックを終えた。
「先輩って緊張とかしてないんですか?」
「全然。いつも通りお菓子を作るだけじゃない」
「各国のお偉いさんが来るのにいつも通りって……本当先輩って図太いですよね」
「誰が太いですって?」
「言ってません、言ってません!」
怒ったフリをすると慌ててノーナは手を横に振る。
まあ冗談だけど……でも実際最近ちょっと……ほんのちょーっとだけ太ってるのよねえ。原因は……お菓子の食べ過ぎよねえ。別に誰かに見られる機会とかあるわけじゃないからいいんだけど……それでも運動とかしようかしら。
「まあ恐れてばかりでも仕方ないですか。色々楽しみなイベントもありますし」
「楽しみ?」
「はい。まずそもそもノーナはスート共和国に行くの初めてなんです。当然ですけど王国とはまた違った雰囲気の国らしくどんな風景を見れるか楽しみで」
「なるほどね。私も初めてだから楽しみよ、どんなおいしい物があるかしら」
「真っ先に気にするのがおいしい物って……それだから先輩はふと……」
「ノーナ、何か言ったかしら?」
「いいえ、何も」
「今度は本来の意味で言おうとしたわよね、ああん?」
アラファがメンチを切るとさっとノーナが顔を逸らす。
この後輩、私が気にしていることをあっさりと……!
「お、おいしい物が気になるんでしたら舞踏会とかも楽しみじゃないですか、先輩」
ノーナは精一杯に話を逸らす。
「ああ、それね。私も気になってるけど……」
会議期間中二日目の夜に催される舞踏会。会議の参加者たちが集まって、異性のパートナーと共にダンスを踊るってことらしい。
とはいえ踊るのは上流階級の人だけの話で、私たちみたいな下々の人は会場の隅っこでごちそうにありつくだけのイベントだ。
「歯切れ悪いですけど何かあるんですか?」
「夜だからスカフ王子は参加出来ないのに私たちだけ参加するのも申し訳ないなあって」
「あっ……そっか。王子は呪いが……」
本人から呪いがあるから不参加だと話題が出たときに聞いている。
「本当酷い呪いよねえ」
「大変ですよね、何としても解除するために動いているスカフ王子の気持ちも分かります」
「そうよ、そうよ。本当……どうしてゼラフはこんな呪いを王子にかけたのかしら……?」
夜は子供になる。王子を苦しめるためだけの呪い。狂っているとはいえ、スカフ王子のことを愛しているゼラフがどうして…………。
「……?」
「どうしたのノーナ?」
「え、いや、その……ゼラフがどうして王子にこんな呪いをかけたのかって分かりやすくないですか?」
「そうなの!?」
驚きのあまりノーナの肩を掴むアラファ。
「べ、別に話に聞いたゼラフの思考を推測しただけで合ってるかは分からないですけど……」
「それでもいいから教えて!」
「……その、ゼラフはスカフ王子に執着してますよね。だからたぶんゼラフはスカフ王子を他の女に取られないためにあの呪いをかけたんです」
「他の女に?」
「王子がもし女性と付き合ったとします。このとき相手の女性に呪いを打ち明けるか、打ち明けないかの選択肢があります。このとき打ち明けなかったらどうなりますか」
「どうって。子供になった姿を見せるわけにはいかないから……夜は彼女と会うことが出来ない」
「彼女から見てどうですか、絶対に夜に会ってくれない彼氏。しかも理由は教えてくれない」
「浮気ね」
「はい、程なく二人は破局するでしょう」
「なるほどね。だったら呪いを打ち明ければいいじゃない。カップルならこれくらいの秘密は共有出来るでしょう」
「それにも問題があります。だって王子は夜の間子供になるんですよ」
「そうね」
「だから、その子供になって……」
「なって?」
「子供だから…………子供を作れないんですよ」
顔を赤くして恥ずかしそうに言うノーナ。
「あー……」
彼氏いない歴=年齢のアラファにはさっと思い付かなかった考え。色々思うところはあるが。
「もう察しが悪いですね、先輩!」
「そういうノーナは察しよすぎでしょ。ムッツリじゃん」
「ム、ムッツリですか!?」
さっき太ったと言われた仕返しに煽っておく。
「………………」
別に付き合っても行為をしないって関係もあるんじゃ…………あーでもこの世界だと違うのかな。結構古い価値観だし、付き合ったら普通は結婚するものだし、子供を作るもの的な考えはありそう。
ていうか夜に子供になって大変なら、昼の内にすれば………………うん、私は嫌ね。
こんなこと言ったらノーナにムッツリだって言い返されちゃう。黙っとこう。
「と、とにかく呪いのせいで王子は女性と付き合うのが難しいって訳です!!」
やけっぱちになりながら話を締めるノーナ。
「分かった、分かったから」
「もう先輩は酷いです。説明しろって言ったのはそっちなのに……」
「ごめんなさいって、からかいすぎたわね」
そうやってノーナをなだめることに尽くすアラファだった。
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