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35話 護衛な訓練


 王城の訓練室の一角では木刀を使った模擬戦が行われていた。




「うおおおおっ!!」


 若くお調子者な男、プロム・エアルが大きな声を上げながら振りかぶった木刀を打ち降ろさんと迫るが。


「甘い」


 対峙するマギニスは下段から弾き、そのまま相手の喉元に切っ先を突きつけた。




「こ、降参です……」

「ペナルティだ」

「ひぃぃぃぃっ!! きつぅぅい!!」


 マギニスに負けたプロムはその場で腕立て伏せを100回こなしてそのまま大の字に倒れた。




 マギニスはスカフ王子の護衛が必要ない時間にときおりこうして訓練室に出向いていた。

 自身の鍛錬をすることが主だが、たまにこうして騎士団の人と交流したり稽古を付けたりしている。

 今は騎士団の団員プロム、新米の頃から何かと目にかけていた彼と模擬戦を終えたところだった。




「マギニス教官、流石強いですね……」


 倒れたままマギニスに話しかけるプロム。別にマギニスは教官の資格も仕事もしていないが、入りたての頃に色々教えてもらったことから教官と呼んでいる。


「相変わらず隙が大きい。基礎が染みついていない証拠だ」

「うへぇ手厳しい……」

「ただ上達しているところがあったのも確かだ」

「本当ですか!?」


 滅多に無いマギニスの褒め言葉にプロムは飛び起きる。


「世辞は言わん」

「……嬉しいですね。俺、頑張らないといけないと思うことがあってちょっとがむしゃらにやってたんですけど、ちゃんと伸びてたんだ」

「良い心がけだ。差し支えなければ何があって心変わりしたか聞いても良いか?」

「あ、えっと……」


 マギニスの言葉にもじもじしだすプロム。


「言いにくいことだったか?」

「いや、その……ただちょっと不純かもしれないので……」

「構わん」


「じゃあ……俺この前彼女が出来たんですよ」


「………………」


「二つ年上の幼馴染みで実の姉みたいな関係性だったんですけど。それで仲こそ良かったもののあっちからも弟としか見られて無くて。こんな関係も悪くないって事でずるずるこの年までやって来たんですけどやっぱりちゃんと付き合うのも諦められなくて。それでもうこれまでの関係が玉砕することも覚悟で告白したら……返事しないまま逃げられて。でも拒絶された感じじゃなかったから顔を合わせる度に何回も告白したら『そんなに言うなら仕方ない』って。まあちょっとお情けみたいな感じですけど、OKを貰えて以来超嬉しくて。彼女がいるこの国を守るんだって思うと力が沸いてきて訓練頑張っている感じで――――」




「…………」


 長々と惚気だしたプロムの言葉を右から左に流しながらマギニスは自分のことを考える。


 彼女、か。とりあえず今の自分には不要……というより維持が出来ないだろう。手間がかかるのはあの馬鹿一人で手一杯だ。


 ただあの馬鹿はそう言ってられないはずだ。王家に連なる者として子を作る義務がある。

 普通ならばパートナーを伴って社交界デビューしてないといけない年だがのらりくらりとかわしている。しかしそれもいつまで続くものか。


 そのルックスや立ち振る舞いからファンこそ多いが、そのどれもと一線を引いて接している。おそらく一番関係の深い異性があのじゃじゃ馬お菓子馬鹿になるくらいだ。


 ……ただまあ仕方ないことではあるのだろうが。






「――いやあ本当マギニス教官も彼女作った方がいいですよ! いい人とかいないんですか?」

「なるほどな」


 ずっと喋り続けていた様子のプロムの言葉に耳を傾けるマギニス。




「お、やっぱりいる感じですか!?」


「ああよく分かった。貴様がまだ長々と喋れるほどの余裕があることがな」


「……え?」

「ちょうど時間もある。存分にしごいてやろう。まずはスクワット100回からだ」

「ひぃぃぃぃぃっ!!」


 別にプロムの言うことなど気にしていない。彼女などいなくても構わん。


 とマギニスは内心考えていながらも、どこか少々のいらつきを込めて追加の訓練を言い渡すのであった。


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