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34話 お菓子な結界


 大陸全土会議に付いていく事が決まったその日からアラファはその準備を始めていた。


「時間のかかる作業は先にやっておいて……途中段階から色々アレンジが必要な場合もあるだろうし……いやでもすぐに食べられるものも何個か用意した方がいいかしら……でも増えすぎると荷物が……」


「先輩、生地の発酵終わりました!」


「ありがとう! ではロチュさん」


「……ん」


 外交特務室には現在三人いた。アラファ、ノーナ、そして外部から手伝いに来ているロチュ・バリエである。

 アラファたちと同年代で無口で小柄な彼女は『結界』魔法の使い手であり、ザフト連邦のときは作ったアップルパイの時間を止めて作業を手伝っていた。

 今回も先に作った物を保存して共和国に持ち込むために手伝ってもらっている。




「そろそろ休憩にしましょう」


 しばらく作業したところでアラファがおやつ用のお菓子を取り出して三人でテーブルを囲む。


「今日のおやつはレモンシャーベットよ」

「さっぱりしてますねえ」

「……美味」


 ロチュは言葉は少ないし表情も僅かに目を見開いたくらいだ。とはいえ喜んでいるのは分かる。




「ロチュさんって普段は何をしてるんですか?」

「……事務官。でもときどき『結界』のために使い回される。今みたいに」

「『結界』魔法便利ですもんねー」

「へえ、そうなの?」

「……例えば」


 アラファの疑問に対して、ロチュはおもむろに手に持っていたスプーンを振りかぶってアラファに向かって投げつけた。


「わっ!? ……って」

「……こんな風に」


 アラファの目前の空中で見えない何かにぶつかったように弾かれてスプーンは宙を舞い、そして床に落ちる前にロチュがキャッチする。


「透明な壁……これが結界ってことなのね」


 アラファが真っ直ぐ手を伸ばしてそれに触れる。こんな風に展開してバリアーとして守ることが出来ると。


「分かりやすかったですけど……いきなり物を投げないでください」

「……ごめん」


 ノーナにたしなめられる。




「他にはどんなのがあるの?」

「……、……、……」

「……! ………!」


「あれ?」


 アラファは質問するがロチュとノーナはそれに答えない。……いや、よく見ると二人とも口は動いているのにアラファの耳に音が届かない。まるでテレビを消音で見てるような変な感覚。


「……解除」

「え? ……あ、今使ってたんですか?」


 疑問に思ったところを見届けてからロチュは結界を解除する。


「今のって……もしかして結界の力? 二人の話何も聞こえなかったんだけど」

「遮音結界ですかね。外と中の音の行き来を制限するんですよね。秘密の話をするときとかに使われて」

「そう。だから今回の大陸全土会議、私も呼ばれた」


 ロチュがいきなりぶっ込んでくる。




「え、そうなの!? ロチュさんも一緒に!?」

「聞いてないですよ!?」

「言ってなかったし」


 二人を驚かせたことに成功してVサインをするロチュ。

 言葉も表情もあまり動かないが、感情に乏しいわけではない。むしろ驚かせたりするのは好きな性格だ。




「もう最近ずっと手伝ってもらってたから言ってくれれば良かったのに……」

「一緒に行くんですね。一人でも知り合いが増えて心強いです」

「私も嬉しい」


 ノーナがロチュの手を取って喜びを表現した。






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