31話 お菓子な魔法
ある日の夜のこと。
「熱が入ってるわね、ノーナ」
「はい、頑張りますよ!」
アラファとここ最近ますますお菓子作りに精力的になったノーナの二人は夜も構わずにお菓子作りの研究をしていると。
「うーんおいしそうな匂いだ、今日は何を作ってるんだいアラファ…………あ」
「どうしたんですか、スカフ王子…………あ」
外交特務室にやってきた子供状態のスカフ王子にアラファはいつものように応えたが……いつもと違ってこの場には事情を知らない者がいた。
「あれ子供がこんなところに……って、今先輩、スカフ王子って言いましたか? それに子供の方も先輩の名前を気安く呼んで…………ってこの子よく見るとスカフ王子にそっくりだし…………」
「これは……」
「無理そうね……」
芋づる式に理解していくノーナに二人は観念して呪いに関することを全部打ち明けることにした。
「夜になると子供になる……だから『真昼の王子様』ってことなんですか」
「ごめんなさいね、ノーナ。今まで黙っていて」
「事が事ですし仕方ないのは分かります。それにしても精霊祭の裏でそんなことがあったなんて……」
アラファはザフト連邦での出来事をノーナには呪いのことは省いて報告していた。
「僕の呪いやゼラフに関しては国家機密でね。他の人には秘密にしてもらえるかな」
「も、もちろんです、王子様! ……ただちょっと気になることがあるので質問して良いですか?」
「ああ、僕が答えられることなら何でも答えよう」
スカフ王子の許可が出てノーナは話し始める。
「その『妄執の魔女』ゼラフの魔法についてですけど、魔法の種類についてはその呪いと精霊祭での行動から察せられるんですけど、事象の規模がどうにも不可解で。魔力が足りなくなりません? 祝福を授けた精霊が気になるんですが……」
「ほう、着眼点がいいね。確かにアラファの説明では言ってなかったね。ゼラフの魔法と精霊については――」
「ちょ、ちょっと待ってもらえるかしら?」
ノーナと子供状態のスカフが意気揚々と話し出そうとしたところにストップをかけるアラファ。
「どうしましたか、先輩?」
「どうもこうもないわよ。いきなり、その……何? 何か呪文みたいなこと詠唱しだしたけど……ちょっと私にも分かるように噛み砕いてもらえないかしら?」
「そういえば先輩は魔法を使えないからそこらへん疎いんですね。でしたらノーナが説明します!」
「お願いします」
すっかり教わる側へと立場が逆転したアラファに魔法についての講義が始まる。
「そもそも人間は魔力を生まれ持っている、ってことは知ってますよね?」
「それくらいは一応……」
元の世界、日本と違って電力では無く魔力がこの世界の基本エネルギーだ、ということくらいは把握している。
「多くの人は魔力として使うのが精一杯です。それはそれでオーブンだったり冷蔵庫だったり動かせて便利ですが。
しかし精霊からの祝福を受けた者は魔力を使って魔法という事象を起こすことが出来ます」
「祝福……ってどうやって受けるの?」
「祝福を受けるには努力半分、運半分ですね。魔力を鍛えるといいとは言われますけど、結局は精霊の気まぐれですから。
頑張ったのに魔法を使えない人もいれば、ただただラッキーで魔法が使えるようになった人もいるみたいです」
「それと魔法は一人一つまでしか使えないんだ。例えばマギニスは『風』魔法を使えるんだけどもちろん他の魔法は使えない、ってことだね」
スカフ王子が口を挟む。
「一つの魔法……ってことはゼラフも一つしか魔法を使えないの? でもおかしいじゃない? ゼラフの魔法は呪いじゃないの? だったらあの瞬間的に姿を消したのってどういうわけ?」
「呪いは魔法じゃないんだ。周期的に魔法を強制発動させてるわけで、それには精霊が絡んでくるんだけど……。
とにかくゼラフの魔法の本質は呪いの内容……僕の身体の時間を子供の頃まで巻き戻すって方なんだ」
「つまりゼラフの魔法は時を操る『時間』魔法。想像ですが先輩たちの目の前からいきなり姿を現したり消したりしたのも時間停止によるものじゃないですか?」
「『時間』魔法って……何かすごそうね」
アラファはそんな感想しか述べられなかった。




